2013年06月30日

『真夏の方程式』

監督:西谷弘
原作:東野圭吾「真夏の方程式」(文藝春秋刊)
脚本:福田靖
出演:福山雅治、吉高由里子、北村一輝、杏、山ア光、塩見三省、白竜、風吹ジュン、前田吟、ほか
2013年

大好きな「ガリレオ」シリーズの映画化、2008年の『容疑者Xの献身』からもう5年経つのか。前作のときはやや辛口の感想(記事はこちら)を書いたが、まるでそれを製作側の誰かが読んだのではないかと思うほど、今作はあのとき感じた不満点が解消され、非常によい出来の作品に仕上がっていて、とても楽しめた。

帝都大学物理学准教授の湯川学(福山雅治)は、美しい南の島、玻璃ヶ浦の開発計画の説明会にアドバイザーとして招聘され島を訪れる。滞在するの緑岩荘。川畑夫妻(前田吟、風吹ジュン)が経営する小さな旅館で、一人娘の成美(杏)は開発反対派の急先鋒でもある。湯川は旅館で、夏休みを過ごしにやって来た川畑の甥、恭平少年と知り合う。子供嫌いの湯川であるが、なぜか恭平には拒絶反応が起こらず、相手をしてやることになる。湯川到着の翌日、堤防下で男の変死体が発見される。緑岩荘に泊まっていた元警視庁の刑事・塚原であった。県警は事故として処理をしようとするが、不審な点の多い死亡に、他殺を疑った警視庁が動き出し、捜査一課の岸谷美砂(吉高由里子)は湯川に捜査協力を依頼する。川畑家の家族に何か秘密があるらしいと気づいた湯川は、いつになく積極的に捜査に関わってゆく。

まず美しい海が舞台の今作、映像が実に綺麗だ。珊瑚礁を色とりどりの魚が舞う海中を、成美がウェットスーツで泳ぐ姿は、杏の足の長さが生きて、うっとりするほど美しいシーンだ。カメラワークも島というロケーションに合わせて、落ち着いた撮り方をしているなと感じていたら、監督のインタビューに、基本的に全編カメラはフィックスという説明があり、なるほどと納得した。

今作はことのほか俳優が頑張った印象がある。福山は前作から経験を重ね格段にうまくなっているように感じる。撮影時期は先日最終回を迎えたTVドラマより早かったため、吉高はこの映画が初ガリレオだったそうだが、ドラマのギャーギャーうるさい(?)イメージとはがらっと変わって、凛としていて、デキる刑事の雰囲気を漂わせている。メイクもTVドラマとは異なり女っぽく見え、妖艶とさえ言える。杏は日焼けして健康的な躍動感があり、感情の迸りを見せるシーンではその迫力に惹きこまれる。そして、一番注目したのは前田吟である。お人好しのいつもニコニコしている下町のお父さんといったはまり役のイメージが強いが、今作では秘密を心の奥に隠した父親としての苦悩をにじませた表情が見事だった。悪役など、もっと幅広い役をやってもらいたい俳優さんだ。彼らの演技を引き出す脚本も見事だったと思う。環境問題、子供の理科離れなど、今日的な問題もからませつつ、謎の解明とともに、人間模様や美しい景色を見せてくれる。そう言うと、満艦飾に聞こえるが、抑えるべきところは抑えて、見応えのある作品に仕上がっていた。

(2013.6.29 ユナイテッド・シネマとしまえん にて)

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2013年06月29日

『言の葉の庭』(アニメ)

原作・脚本・監督:新海誠
作画監督・キャラクターデザイン:土屋堅一
美術監督:滝口比呂志
キャスト(声優):入野自由、花澤香菜、平野文、前田剛、寺崎裕香、ほか
2013年

がらにもなくアニメ映画を観てきた。予告映像を見て、その美しさに感動したからである。上映は、新海監督の短編アニメ『だれかのまなざし』との併映だったが、『言の葉の庭』を見終わってしまうと、どんなストーリーだったかもまったく記憶に残っていない。

『言の葉の庭』は評判通り、これがアニメかと思うほど水の描写が美しく、緑濃い庭(新宿御苑をモデルにしているそうだ)の風景は素晴らしい。緩急のある雨脚、池の水面に広がる水紋、光の濃淡が繊細なタッチで描かれる。そもそも木々の緑が好きな私にとって、この映像美は大変魅力的であった。

靴職人を目指したい高校生のタカオは、雨の日は決まって午前中学校をさぼり、公園にやってきては、園内の四阿にひとり座って靴デザインのスケッチをしている。ある日、タカオはその四阿で大人の女性に出会う。何かしら心に重い物を秘めた様子の彼女は、タカオの邪魔をするでもなく、缶ビールを飲みながら公園の景色に目をやっている。折しも梅雨の季節、タカオは彼女にしばしば出会い、やがて打ち解けて話をするようになり、誰にも話したことのない靴職人への憧れも語る。彼女がもっと歩きたいと思うような靴を作りたいというい願望がタカオに芽生えるが、やがて梅雨は明けようとしていた。

ストーリーは、思春期の高校生の、大人の女性に対する淡い思いを通して、心の成長を描いたものだが、特に目新しいものではない。映像の美しさがすべてであった。ただ、アニメを見慣れていない私には、リアリティーのある自然美と比して、人物の作画にどうしても馴染めなかった。3Dの背景の中に2Dの人物が配置されているような違和感があるのだ。あくまでも漫画風の大きな目、八頭身以上のスタイル、アニメ独特の身体の動き、それらが邪魔をしてストーリーの中に入り込めない。ストーリーなしで、公園の景色だけをいつまでも見ていたい気分にさせられる。ここを乗り越えるかどうかで、アニメ好きかどうかの違いが出てくるのだろうが、私には無理のようだ。

(2013.6.28 池袋HUMAXシネマズにて)

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2013年06月17日

『二流小説家―シリアリスト―』

監督:猪崎宣昭
原作:デイヴィッド・ゴードン「二流小説家」(ハヤカワ文庫)
脚本:尾西兼一、伊藤洋子、三島有紀子、猪崎宣昭、
出演:上川隆也、片瀬那奈、平山あや、小池里奈、黒谷友香、賀来千香子、でんでん、高橋惠子、長嶋一茂、戸田恵子、中村嘉葎雄、佐々木すみ江、本田博太郎、伊武雅刀、武田真治、ほか
2013年

原作は海外ミステリとして大評判になった作品だというので、ストーリーが面白いかなと思い観に行ってみた。海外小説を日本映画として映像化する場合、どこまで日本的な要素に置き換えるかが一番のポイントとなるのだろうが、これはまったく日本映画としか思えない作品に仕上げられていた。そして道具立てがあまりにも日本そのものなので、たとえばテレビのミステリードラマと、さほど違いを感じない陳腐さもやはりそこには見えた。原作はまったく読んでおらず、ストーリーも知らなかったが、結末は容易に見当がつくものだった。

しがない中年小説家の赤羽一兵(上川隆也)は、エロ雑誌に小説を書くことで生計を立てている。その彼のもとに突然死刑囚の呉井大悟(武田真治)から手紙が届く。呉井は自称・写真家で、4人のモデル女性を猟奇的な殺し方をしたとして死刑判決の出ている男だ。迷った末に拘置所に面会に行った一兵に、呉井はある依頼をする。自分のためだけに官能小説を書いてくれれば、自分のこれまでのことをいっさい告白するので、一兵はその告白本を出版すればよいというのだ。呉井の弁護士・前田礼子(高橋惠子)に相談に行くと、彼女は呉井が死んでからなら出版は自由だが、それまでは彼の喋ったことはいっさい公にしてはいけないと言う。さらには、殺人事件の被害者家族の会が、被害者のことを再び世間に晒すような真似はしてほしくないと強く抗議をしてくる。だが、自分の書いたものが日の目を見るかも知れないという欲望に屈した一兵は、呉井のために小説を書き始める。

キャストは悪くないと思うのだが、ちっとも面白く感じられないのは、脚本のせいか映像のせいか。全体的にべたーっとした印象で、メリハリがあまりない。一兵のサエない小説家ぶりも、呉井のフォトグラファーとしての面も、もっと強調しないとストーリーが活きてこないような気がする。スパイスを効かせるつもりの、一兵の姪・亜衣(小池里奈)や、被害者家族のひとり長谷川千夏(片瀬那奈)の存在が、むしろ煩わしい。意外に多い登場人物がうまく噛み合っていない。見終わったあと、で、結局あの人は何だったの?という消化不良が多かった。こちらの理解力不足かも知れないが、犯人以外に誰がどう事件にかかわっていたのか、どうもよくわからない。二度見ればもうちょっと整理されるかも知れないが、二度見たいと思うほどの作品とは言えない。良かったのは、拘置所での一兵と呉井のやりとり。どこまで本音かわからない呉井の気まぐれぶりにとまどう一兵、この二人のシーンはもっとも重要だと思われるし、上川も武田も十分魅力を発揮していたと思う。

(2013.6.16 ユナイテッド・シネマとしまえん にて)

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2013年06月16日

舞台『断色−danjiki−』

作/青木豪
演出/いのうえひでのり
出演/堤真一、麻生久美子、田中哲司

ヴィレッヂ・プロデュース2013

danjiki.jpgたまたま2週連続で舞台鑑賞。数年に一度しか舞台を見ない者としては異例のことであるが、出演者の顔ぶれを知って、ほぼ麻生久美子目当てであるが、これは見なくちゃとチケットを取った。演劇鑑賞経験のきわめて少ない私は、青山円形劇場も初めてだ。公演内容によって、どこの座席まで客を入れるかは異なるそうだが、今回の舞台は円形の舞台の周囲360度ぐるっと座席があるレイアウトだった。座席は数列しかないので、どこの席からでもよく舞台が見える。私は前から2列目で、目の高さがちょうど舞台のレベルだったろうか。

出演者は3人の名前しかクレジットされていなかったが、本当にたった3人の芝居。堪能できた。狭い空間だし、残響が抑えられているので、台詞は非常に明瞭に聞き取れる。演者は主にカーテンからランウェイを通って舞台に登場するが、捌けるときは客席内の通路を使ったり、円形を効果的に利用している。また周囲の壁には背景や、シーンによって様々な画像が映し出され、とても新鮮に思えた。

時は近い未来。無農薬農法で作物を作っている小杉保(堤真一)のもとに、クローン保険の営業マン・刈谷(田中哲司)がやってくる。小杉の母・朝子(麻生久美子)はクローン保険をかけており、乳ガンにかかったときに、クローンの乳房を移植したのだが、その後腎臓ガンを患い、先日亡くなったのだ。被保険者が亡くなった場合、保険で作られたクローンは、保険会社が“処分”するか“解放”して社会生活を送らせるかになる。遺された家族として小杉はこの二者択一に頭を悩ませることになる。

前半はよいテンポでコミカルなシーンが続く。中盤からシリアスな側面が色濃くなり、登場人物それぞれの本性があらわになって行き、夢と現実が錯綜し、近い未来の日本の姿が示唆されるようになる。3人しかいないために、台詞の量たるや凄まじいものがある。麻生は涼しい顔で、様々なトーンの台詞を使い分け、かなりの下ネタを畳みかけるシーンでもよどみがない。無表情から一転してこぼれるような笑顔を見せたり、可愛さ満開である。衣装もこれまたとても素敵だ。クローンである夕子の衣装は、カントリーテイストを取り入れたシルエットだが、素材が柔らかい生地を使っており、身体の動きに合わせて綺麗に揺れる。両袖のデザインが異なっていたり、別生地をスカートに挟み込んであったり、色合いもお洒落。最も注目したのは麻生が履いていたベージュ色の靴。足にぴったり合った柔らかい革製のように見えるヒールなしの靴。私の席の角度のせいで、靴の裏がよく見えたのだが、底が普通のタウンシューズなどと異なる素材のようだ。きっとジャズダンス用のシューズなのではないかと思う。

堤真一は演劇畑出身だとは知っていたが、テレビで見る彼とはずいぶん違って、溌剌として若く見える。身のこなしも軽い。田中哲司はさすがにカメレオン俳優と異名を取るだけのことはある。おそらく一番台詞も多く、2度ばかり噛んでいたが、声がよく通り、身体の大きさを活かした迫力満点の演技だ。

暗転のときに舞台装置を替えに来るスタッフは、全員防毒マスクをつけ、揃いの作業ウェアを着ている。これも目を惹き、装置転換の間のダレを払拭してくれる。

ストーリーも面白く、本当に手の届きそうな距離で3人を見られる舞台に大満足だった。

(2013.6.15 青山円形劇場にて)

公式サイト
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2013年06月15日

『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』

監督:橋本一
原作:東直己 ススキノ探偵シリーズ「探偵はひとりぼっち」(ハヤカワ文庫)
脚本:古沢良太、須藤泰司
出演:大泉洋、松田龍平、尾野真千子、ゴリ、渡部篤郎、田口トモロヲ、篠井英介、波岡一喜、近藤公園、筒井真理子、矢島謙一、松重豊、マギー、池内万作、安藤玉恵、佐藤かよ、麻美ゆま、桝田徳寿、冨田佳輔、徳井優、片桐竜次、ほか
2013年

2011年の前作『探偵はBARにいる』がそこそこ面白かったので、こちらも観てみようと思った。印象は驚くほど前作と変わらない。変わらないことを期待する観客層を狙っているのだろう。そして、観たあとの感想も、そっくり前回のをコピーしてもよいくらいだ。

札幌のススキノをホームグラウンドとする探偵「俺」(大泉洋)と懇意の、オカマのマサコちゃん(ゴリ)が殺された。しばらくたっても警察の捜査はいっこうに進展せず、探偵は相棒の高田(松田龍平)を呼びつけ、独自に事件を洗い始める。ところが、マサコちゃんの仲間だったはずのススキノの人間たちは一様に事件に関しては口を閉ざし、探偵に協力しようとしない。どうやら政界の大物、脱原発を旗印にカリスマ性を発揮する橡脇孝一郎(渡部篤郎)がからんでいるらしい。一方、マサコちゃんが大ファンだったというヴァイオリニスト河島弓子が探偵の前にあらわれる。自分の大切なファンを殺した犯人を突き止めたいというのだ。血気盛んな弓子を押さえるために、探偵は弓子に自分の依頼人になれと言う。様々な思惑が錯綜するなか、探偵は3種類の敵から襲われることになる。

映画の中では高田について何の紹介めいた描写もなかったので、どうだったっけと公式サイトを見たら、高田は北大農学部の助手であり、空手の師範代という設定だった。もう前作のことはほとんど忘れているので、これは何らかの形で紹介して欲しかったと思う。探偵を取り巻く人間模様の魅力は健在だ。情報をもたらしてくれる新聞記者の松尾(田口トモロヲ)、老舗ヤクザの幹部・相田(松重豊)、花岡組系暴れん坊ヤクザの佐山(波岡一喜)が前作からのオヤクソクで登場して楽しい。とりわけ佐山の暴虐振りを身体を張って演技する波岡は見物だ。そして怪しげなウェイトレス役の安藤玉恵が可愛くて最高!

ストーリー自体はさほど目新しくなく、結末もやや拍子抜けだ。今回のポイントとなる河島弓子にしろ、橡脇孝一郎にしろ、描き方が物足りなくて、ストーリーにしっかり絡んでいるように見えない。結局見どころは、探偵のコミカルかつ熱い人柄と、クールで喧嘩にめっぽう強い高田のアクションと、ススキノの町ということになろうか。

エンディングテーマに鈴木慶一の「スカンピン」が流れ、この映画にはぴったりの曲だが、思わず『転々』を思い出した。

(2013.6.14 池袋シネマサンシャインにて)

映画公式サイト
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2013年06月11日

『さよなら渓谷』完成披露試写会(映画鑑賞2回目)

登壇者:大森立嗣監督、真木よう子、大西信満、鈴木杏、鶴田真由、井浦新、大森南朋
司会:伊藤さとり

先日試写会で観てきたばかりだが、なんと完成披露試写会のほうも当選したので、舞台挨拶を見逃す手はないと行って来た。一昨日行った大森南朋の舞台が休演日とあって、それなら南朋さん、この映画の舞台挨拶にも来てくれるかなと期待していたら、本当に登壇してくれてテンションが上がる。初日舞台挨拶なみの豪華なキャストが揃って、とても楽しいイベントとなった。メモはあまり熱心に取らなかったので、コメントは大意のみ。

まずはひとりずつ完成披露を迎えた気持を述べる挨拶。
真木:昨日からドキドキしていて、こんな大勢の人に見てもらうことが幸せですが、少し怖くもあります。

鈴木:あー、なんてすごく凄く素敵な映画なんだろうと、心が震える思いでした。皆さんがどうお感じになるか楽しみです。

井浦:いつかは必ず参加させてもらいたかった大森組です。僕は一日だけの撮影でしたが、その一日のうちに、とても得たものがったと確信の持てる演出を監督からしていただきました。大西くんがこの作品を映画化したいと早くから考えていたとのことですが、ここまで漕ぎつけて、大西くん、おめでとうございます!

鶴田:台本をいただいた時に、なんて難しい本だろうと思いましたが、役者冥利につきる本でもありました。主演のお二人はすごく良い演技で、見終わったあと疲れてしまうほど。すごく勉強になりました。私も撮影は一日だけでしたが、もう少し沢山かかわりたかったと思います。

南朋:兄貴の映画で、ガッツリやるのは初めてで、複雑な気分でしたが。兄弟でこんなことを言うのはナンですが、“やるな!”という感じです。

監督:ここにいる俳優たちを見てほしい。皆主役ができる人たちです。僕は映画を撮るとき、俳優を撮りたいといつも思っています。

監督:(原作に惹かれた理由を聞かれて)社会の外側にいる人にどうしても惹かれるということがあります。

真木:(主演としてセンターに立っての感想を聞かれて)いつもあまり緊張しないんですけど、今日は緊張して裏で喋りまくっていました。役柄を見たとき、相当覚悟が要るだろうなと思いました。大森監督とご一緒したかったという気持もあります。映画を撮り終えたというより、去年の夏、自分が生きていたという事実、自分の過去のことを話すような気分です。

大西:(以前からこの原作を映画化したいと思っていたそうだがと聞かれて)一読者として吉田先生の本が好きです。大森監督と本の感想などを言い合って、『さよなら渓谷』はいつか映画に出来たらいいよねと話していました。

真木:(大西との共演について聞かれて)大西さんはとにかく真面目。私生活もお芝居も真面目です。100%でぶつからないと負けると思いました。すごく心地よくお芝居ができました。

大西:(真木との共演について)真木さんはカメラの前に立ったとき、そこに役の人がいて、嘘がなくて。真木さんと同じことを僕も真木さんについて言いたいと思います。

鈴木:(役柄について)橋渡しのような役割の役で、物語を説明してゆく役目なんですが、リアリティーを持ってというのは難しいなと思いました。

MC:(鈴木に向かって)監督が大森立嗣監督で、お相手の役が大森南朋さんだったわけですが?

南朋:大森がありすぎるよね(笑)

鈴木:贅沢な気持でしたね。兄弟感はありながら緊張感もあるし、珍しい光景なんだろうなと思いました。

南朋:3本目は3本目なんです、兄の映画に出るのは。最初は距離があるつもりだったけれど、だんだんそうじゃなくなって。

監督:兄弟のつもりはない、ってインタビューでいっぱい言っちゃったよ!

鶴田:南朋さんは、現場で「南朋さあ」と言われると困ると言っていましたよ。

井浦:(真木とのあるシーンについて)やるしかないって思いました、あのシーンは。真木さんが何も一言も言わないんですが、「来い!」っていう目なので、こっちも思いっきり行くしかないと。カメラやスタッフがいる最前列に監督がいて「来いっ!」という仕草をするんですよ。

南朋:新井くん(新井浩文のことか?)は、あれ大っ嫌いと言ってました(笑)

最後に締めくくりとして真木が一言。
真木:私たちが生きた去年の夏を撮ったドキュメンタリーのような作品です。楽しんでいただければと思います。

* * * * *
2回目の鑑賞でも、緊張感の持続する見応えのある作品という印象は変わらなかった。先日の試写会では、同行者(日本映画をほとんど見ない人)がこの作品にたいへん否定的な意見を述べたのに対し、この完成披露の同行者(幅広く映画を見ているシネフリーク)は、非常に肯定的な意見を述べていた。感想が両極端に分かれる作品かも知れない。じっとりした夏の話なのに、背筋に薄ら寒いものが走るようなサスペンス感がこの作品の真骨頂だろう。

(2013.6.10 よみうりホールにて)
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2013年06月09日

舞台「不道徳教室」

作・演出:岩松了
出演:大森南朋、二階堂ふみ、趣里、大西礼芳、黒川芽以、岩松了
2013年

舞台を観るのは、やはり岩松了作2009年の「マレーヒルの幻影」以来だ。大森南朋と二階堂ふみが出演ということで、100%俳優さん見たさに行ってきた。東京公演の初日である。シアタートラムは初めて行く劇場なので、座席番号を見てもよくわからなかったが、何と取れたチケットは最前列の席だった。舞台と客席最前列の間の細い通路を、大森や黒川が歩く演出があったので、大森との距離が数十センチという一瞬があり、ファンとしては緊張してしまった!

とあるリラクゼーションルーム。マッサージ嬢リカコ(黒川芽依)と客。客は女子高の現代国語の教師・山城(大森南朋)。リカコと噛み合わない会話をしてゆくにつれて、山城は、生徒のあかね(二階堂ふみ)のことを思い出してゆく。山城はあかねに心を惹かれ、ストーカーまがいの行為をしていた。あかねと、久子(趣里)、弥生(大西礼芳)とは親友同士で、秘密の基地を作ったりしている。やがてあかねは山城と道ならぬ関係に陥るが、二人のことは学校の知るところとなり、山城の将来に暗雲がたちこめ、さらに、理事長の娘・久子が山城に恋心を抱いていることから、親友三人の関係も微妙なものになってゆく。川端康成の『みずうみ』からインスピレーションを得た作品と聞き、なるほどと思う。

時間軸が錯綜したり、本筋に関係あるのかないのかよくわからないエピソードがあちこちに挟まったり、岩松流の不可思議さはあるものの、比較的明快で面白い舞台だった。躍動感をみせる3人の若い高校生役の女の子たちと、大森南朋の大人だけれども不安定な役柄、そしていわばナレーションをしているかのような背景となる存在の黒川芽依、この登場人物たちのバランスがよかった。とりわけ二階堂ふみは、堂々たる存在感があっぱれとしか言いようがない。声がよく通り、伸ばした指先にまで魂が宿っているかのような力強い身のこなし、視線の強さ、輝いていると言って間違いないと思えた。大森南朋は、映画やテレビとほとんど変わらないのに、つまり舞台用に声を張り上げたり、身振りを大げさにしているわけではないのに、とても舞台にしっくり合っているように感じた。

舞台装置が素敵だ。リラクゼーションルーム、通学路、教室内、緑に囲まれた秘密の基地、花屋の店先、スナック、マジックのように場面転換がスムーズだ。リラクゼーションルームだけが照明が明るく、それ以外は暗い。現在と過去の違いだろうか。

女子高生の制服がとても可愛かった。どこかの記事に書かれていたが、このデザインは二階堂の意見が取り入れられているそうだ。ストーカーの話にセーラー服はあまり露骨すぎるし、ブレザーは平凡すぎるしということで、ジャンパースカートになったとのこと。ウエストがボタン留めになっているのがアクセントとなって、こんな制服だったら、そういう高校は人気が出るだろうと思われる。こちらに写真があるが、本物はもっとずっと可愛い。白いブレザーは季節が異なる設定のときのものだ。


(2013.6.9 シアタートラムにて)
以下ネタバレあり
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2013年06月08日

『華麗なるギャツビー』(2D)試写会

原作:F・スコット・フィッツジェラルド
監督:バズ・ラーマン
脚本:クレイグ・ピアース、バズ・ラーマン
出演:レオナルド・ディカプリオ、トビー・マグワイア、キャリー・マリガン、アイラ・フィッシャー、エリザベス・デビッキ、ジョエル・エドガートン、ほか
原題:THE GREAT GATSBY
2013年アメリカ

フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』(1925)は、これまでにすでに4回映画化され、そのうちのロバート・レッドフォード主演作(1974)を観たことがあるように思う。まったく細部の記憶はないが、評判にもかかわらず何となく退屈な映画だったように思う。原作自体も、アメリカ文学を代表する小説だというのに、どうもピンと来なくて途中で投げ出してしまったかも知れない。それが今回はレオナルド・ディカプリオ主演で5回目の映画化。有名デザイナーが協力した衣装の素晴らしさも手伝って、かなり高評価だという話を聞き、行ってみようかと考えた。

ストーリーは有名なので書く必要もないだろうが、1920年代のニューヨークが舞台。富裕層のバカ騒ぎと、一人の謎の男の個人的野望を描いたものだ。試写会は2Dだったが、3D用にどのような撮り方をしているのかも興味があった。冒頭はなかなか入り込めない。なんだか雑然としており、どこを中心に観ればよいか迷っている中を台詞が流れて行き、どんな冒頭だったかほとんど覚えていないほどだ。

ギャツビーの住む宮殿のような豪邸の、湾を挟んだ対岸には、彼が焦がれている昔の恋人デイジーが裕福な夫と暮らす館がある。こちらからあちらへの距離感が、3D映像にした場合に生きてくるのかなと感じる。ギャツビー家で夜な夜な開かれるパーティーの場面になって、ようやく映画に入り込めた気がした。このパーティーの様子が圧巻である。衣装やメイクは1920年代をゴージャスに再現しているが、音楽が非常に現代的だ。リズムを刻む低音がズンズン響く。全体のノリは、譬えは悪いかも知れないが、日本のバブル時代のジュリアナ東京(行ったことはないが)のようだ。またギャツビーがど派手な黄色い高級車を走らせるときのエンジン音がけたたましく、これが印象に残る。女性の衣装は華やかかつ官能的で素敵だが、見るべきはむしろ男性の衣装かも知れない。ブルックス・ブラザースが提供したタキシードやスーツは素晴らしく、これをもっと良く見ておけばよかたと思う。映画公式サイトからダウンロードできる壁紙の中で、椅子に腰掛けてグラスを持っているディカプリオのスーツが本当に格好いい。袖口の折り返しが特徴的だ。この壁紙ではトビー・マグワイア、ジョエル・エドガートンの衣装も同時に見られて興味深い。

ディカプリオのジェイ・ギャツビーは、何で金儲けをしているかわからないミステリアスな部分と、デイジーに寄せる少年のような憧れを宿した部分のコントラストがよかった。とくに後者では、その笑顔がまるで二十歳の若者のように無防備で清々しい。デイジー役のキャリー・マリガンは、この人ってこんなに可愛かったっけと、いつまでも見つめていたくなるような可愛らしさ。ショートヘアやヘアアクセサリーが実によく似合う。ストーリーの語り手であるキャラウェイを演じるトビー・マグワイアも適役だと思った。印象的だったのは、ジョーダン・ベイカーを演じるエリザベス・デビッキ。初めて見る人だが、大きな瞳とすらりとした背の高さで周囲を圧倒する存在感がある。彼女の衣装は他の女性たちと趣が異なり、確固とした自己主張を感じさせるものだ。

ディテールに凝るあまり、ストーリーがやや印象が薄くもある。ギャツビーがデイジーのどこにそれほど惹かれたのか、彼がどうやって極貧からのし上がってきたか、金儲けのために裏でどんなことをしているのか、そのあたりがぼかされているので、彼の得体の知れなさもさほど迫って来ない気がした。この映画を3Dで観る必然性はまったく感じない。

(2013.6.7 ヤクルトホールにて)

映画公式サイト
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2013年06月01日

『さよなら渓谷』試写会(トークイベントつき)

監督:大森立嗣
原作:吉田修一『さよなら渓谷』(新潮文庫刊)
脚本:高田亮、大森立嗣
出演:真木よう子、大西信満、鈴木杏、井浦新、新井浩文、鶴田真由、大森南朋、木下ほうか、三浦誠己、薬袋いづみ、池内万作、木野花、ほか
2013年

登壇者:大森立嗣監督、大西信満、高橋樹里プロデューサー

sayonarakeikoku.jpg大森監督の舞台挨拶があると、試写招待状に書かれていたので、上映前に挨拶程度があるのかなと思っていたら、イベントは上映後で、しかも椅子を運び込んでの、ちゃんとしたトークショーで、思いがけず楽しい試写会となった。大西信満の登壇はサプライズで、事前に告知はなかった。「真木よう子さんもいらっしゃれると良かったのですが、残念ながら今日は別のお仕事で」と製作サイドの方が言っていらしたが、テレビの報道で、昨日は真木よう子は『グランド・マスター』ジャパン・プレミアへのゲストだったようだ。

この映画の完成披露試写会はこれからであり、昨日の試写は一般の客が入る最速の女性限定試写会だった。トークが上映後ということで、話題はストーリーと深くかかわっているので、ネタバレになる部分が多く、あまり内容を書けないが、大森監督は「この映画が一般のお客さんに触れるのは初めてで、緊張しています。『ぼっちゃん』もちっちゃい映画ですが、この作品も負けず劣らずちっちゃい映画」と規模の小ささを表現していた。監督が原作に惹かれたポイントについては「その質問はいっぱいされるんだけれど、俊介とかなこは、あの事件がなければ社会の中で生きていけたのにということがあるが、社会の枠外だからこそ愛のかけらに触れることができたんだろうなと最近思っています」と言う。この原作は映画界でものすごく争奪戦があって、やりたいとは思っていたけれども、自分が撮れるとは全然思っていなかったと監督は説明していた。観客からの質問に答えてくれるなど、なかなか面白いトーク内容だった。映画鑑賞後に客席を出ると、監督と大西さんが出口でお客さんに挨拶をされていたので、スタッフさんの了承を得て、お二人にサインをしていただくことが出来た。下側が監督のサインである。

* * * * *

渓谷のある静かな町で、幼児殺害という事件が突然起こる。容疑者である母親は、俊介(大西信満)とかなこ(真木よう子)夫婦の隣に住む人だった。ところが事件は意外な方向へ展開し、俊介が容疑者と不倫関係にあり、共犯者だという疑いが出てきたのだ。しかも、そのことを通報したのは妻のかなこだ。事件を取材する週刊誌記者の渡辺(大森南朋)は、俊介とかなこ夫婦に違和感を感じ、彼らの過去をさぐってゆく。そして渡辺は15年前のある事件に行き着く。その事件の加害者が俊介、被害者がかなこだったのだ。なぜ二人は夫婦になったのか、そこにあるのは、憎しみか、償いか、それとも愛なのか。

原作は読んでいないが、ストーリーは面白く、脚本もうまく出来ていて、息詰まるようなサスペンス感がある。俊介とかなこの二人の関係設定は現実世界ではありえないだろうし、おそらくこれは男性目線の願望に近いものだと思う(原作者が男性であることだし)。しかし、女性が観ても、ありえるかも知れないと思える作品になっていたと感じた(自分がかなこの感情に寄り添えるかどうかは別として)。全編をつらぬくサスペンスタッチ、果たして“愛”と呼べるかどうかぎりぎりのところにある男女の関係性、観客の感性に解釈をゆだねられたエンディング、ストーリーや人物設定は異なるが、西川美和監督の『ゆれる』に近いイメージの映画だと思った。鑑賞後に登場人物の感情や、エンディングについて、観た人同士で様々に語り合える作品だ。

助演陣が豪華だ。大森南朋が出演していることは知っていたが、これほど登場シーンが多いとは想像していなかった。彼がストーリーを繋ぐ重要な役目を負っている。密かに期待していた鈴木杏は今回も期待通り。渡辺の同僚記者を演じていて、彼女も大森南朋とともにストーリーの一端を担っている。かなこの元夫を演じる井浦新、俊介の昔の仲間を演じる新井浩文は、登場シーンがほんのわずかだが、彼らならではの存在感が貴重だ。渡辺の妻を演じる鶴田真由は、映画ではほとんど見たことがなかったが、意外性のある役柄で印象的。刑事役の木下ほうかと三浦誠己もよい。とりわけ三浦誠己は「まほろ駅前」シリーズでも刑事役なので、はまり役と言っていいだろう。好きな役者さんだ。

さて肝心の主演の二人についてはどうかと言うと、私は首をひねってしまった。真木よう子は好きな女優さんで、だからこそ試写会に応募したのでもあるが、どうもかなこ役には向かないような気がする。真木はどうしても強さが滲み出てしまい、台詞回しもきつい傾向がある。かなこという人間は内に秘めた情念を持つ女性だと思うが、表面上はもっと穏やかに見える人のほうが適していると感じる。そして、大西信満にはさらに違和感があった。俊介は元アマチュアの野球選手という設定だが、背も高くないし、スポーツマンらしき雰囲気がまったくない。俊介が持っているはずの不器用さも見えない。台詞の多くない役どころだから、なおさら微妙な感情表現が必要だと思うが、大西それを実現しているとは残念ながら思えなかった。大森監督とは旧知の間柄だそうだから、大西ありきの映画化だったのだろうが、むしろ渡辺役を大西が演じたほうが向いていたのではと思った。大森南朋とキャスティングが逆のほうがよかったようにも思うが、大森監督が南朋主演の映画を撮るのはまずいのだろうか。

(2013.5.30 シネマート六本木 スクリーン2にて)

映画公式サイト
以下ネタバレあり
posted by すいっち at 01:11| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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