2013年12月31日

2013年独断と偏見による日本映画・外国映画ベスト3

2013年に映画館および試写会場で観た映画は合計ちょうど60本。日本映画29本、外国映画31本と、私としては極めて珍しく、外国映画のほうが鑑賞数が勝った。そのために、外国映画はベスト3を決めるのにたいへん難儀した。ベスト3候補に入れてもよい映画をピックアップしていたら、8本もあったのである。しかもそれらのどれを1位にしてもおかしくないと思えた作品ばかり。一方、私の印象では日本映画で気に入った作品が少なかった。鑑賞本数が外国映画より少ないのも、これは観たいと思わせるものがそもそも少なかったためだという気がする。

【日本映画】
第1位『舟を編む』(感想はこちら→1, 2, 3
原作より恋愛にシフトした脚本には物足りなさもあったが、興味深い世界を描いてくれたことで満足できた作品である。ポイントはテーマだった。
第2位『凶悪』(感想はこちら
各映画賞で、出演俳優が軒並み授賞したのでもわかる通り、俳優の演技が素晴らしかった作品である。
第3位『地獄でなぜ悪い』(感想はこちら
こんなにハチャメチャな内容の映画をちゃんと作品に仕上げた監督の力量が強く感じられた作品だった。

【外国映画】
第1位『孤独な天使たち』(感想はこちら
2013年のかなり早い時期に観たにもかかわらず、最も深い印象を残してくれた作品である。今年は青春ものに良作が多かったが、これもそのひとつ。
第2位『ベルリンファイル』(感想はこちら
韓国映画では『悪いやつら』が高評価を受けているが、私はこちらのほうがより好きだ。とにかく面白かったの一言。
第3位『ウォールフラワー』(感想はこちら
良い映画だったなと素直に言える作品。普遍的な青春が描かれていて、鑑賞後の後味がもっとも良かった映画かも知れない。
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2013年12月21日

『皇帝と公爵』試写会(トークショーつき)

監督:バレリア・サルミエント
出演:ジョン・マルコヴィッチ、マチュー・アマルリック、メルヴィル・プポー、カトリーヌ・ドヌーヴ、ミシェル・ピコリ、イザベル・ユペール、マリク・ジディ、キアラ・マストロヤンニ、ヌヌ・ロプス、カルロト・コッタ、マリサ・パレデス、フィリプ・ヴァルガシュ、アフンス・ピメンテウ、アドリアヌ・ヌーシュ、ジュアン・アライシュ、ほか
原題:Linhas de Wellington
2012年フランス・ポルトガル映画(ポルトガル語・フランス語・英語)

歴史物だから観てみたいという単純な動機で試写会に応募したが、実際に観ると、『皇帝と公爵』という邦題、「ナポレオンには決して勝つことができない男がいた」というキャッチコピー、「ナポレオン皇帝VSウェリントン公爵 その瞬間、人は愛のために戦った」というチラシの見出し、これらから想像しうるどんなタイプの映画とも異なる極めて異質な戦争映画(?)だった。一番近いだろうと思われる芸術になぞらえるなら、壮大な叙事詩を読んだような印象の作品だ。あるいは叱られるのを承知で言うなら聖書か?

上映前にトークショーがあることは告知されていたが、どなたが登壇するのかは前もって知らされてはいなかった。歴史映画だから、歴史的解説をしてくれるような方だろうかと想像していると、壇上にはMCとしてお馴染みの伊藤さとりが登場した。あれ?これは方向性が少し違うのかな?と思っていると、素敵な方ですよ〜というアナウンスに促されて登場したのは中尾彬氏だった。もうこの作品を観たという中尾氏は、「あんまり好きじゃない、タイトルが。男と男のぶつかり合いみたいに思わせるけれども、どんでもない。これは女性映画。カメラがゆっくりゆっくり動いて、優しい目線なんです」と印象を語る。そして「生と性が見事に描かれている」とも。MCが話題を変えると、どんな質問にもきちんと持論を述べ、自分の経験も引き合いに出し、非常に聞いていて心地よい話術をお持ちの方だ。印象に残ったのは、料理の話から映画の話へ変化していったところ。生まれ変わったら何になりたいかという質問に、料理人かなと答える中尾氏。「(料理がうまくなるために)料理本なんて読んだってダメ。何を何グラムなんてやっているようじゃうまくならない。(塩を適当量つまんで鍋に入れる仕草をしつつ)ビートたけしの演出はそうなんだよ。そこんところをちょっちょっとこうやって、とか、ズバッとやって、とかっていう指示なんだ。そういう指示がわかんない人(役者)は、彼は使わないよ」と、思わぬ方向に話が向かった。「来年またやるけれど」とちょっと言っていたが、北野監督作品に来年また出るという意味か?この映画に関しては、ちょっとネタバレになるかも知れないけれど、「小さい天使が出てくるところが好き、それが主演かも知れない」と謎めいた表現をしていた。見終わって、あれが中尾氏が言っていた天使か、と思う登場人物は確かに存在していた。

さて、映画の内容に移るが、時は19世紀初頭。強大な力を誇るフランスのナポレオン皇帝は、3度目のポルトガルの侵攻を企てる。過去2度は失敗しているが、今度こその意気込みで、マッセナ元帥(メルヴィル・プポー)を指揮官として大軍を投入する。敵は、ポルトガル軍と知将ウェリントン子爵(のちに公爵、ジョン・マルコヴィッチ)率いるイギリス軍との連合軍である。ポルトガルのブサコで連合軍は勝利したにもかかわらず、ウェリントンは軍をリスボン方面に撤退させる。一時的な敗北を喫したものの、数は勝るフランス軍は体制を立て直し、撤退した連合軍を追ってゆく。しかし、これはウェリントンの策略であり、自軍にも知らせず密かに築いたトレスの要塞までフランス軍を引き入れ、大軍を一網打尽にする狙いだったのだ。映画は、このブサコの戦いからトレス線での連合軍の勝利までを描く。

そう書くと、戦闘場面がたくさん出て来そうに思われるが、まったくそうではなく、戦闘場面はごくわずか、両軍の迫力あるぶつかり合いのシーンなどというものもない。さらには、主人公であるウェリントンが知略をふるう場面がそうあるわけでもないのだ。描かれるのは、各軍の将校や兵士たちの日常、そして軍とともに、故郷を追われて落ち延びて行く市井の人々やそれぞれの立場で生きて行こうと必死な女たちの日常である。そこには、様々な考え方、生き方があり、どれが優れていて、どれが劣っているという判断など撥ねつけてしまう個性がある。19世紀なのに、イメージとしては、ブリューゲルなどルネサンス期の画家たちが描く世界に似ている。

映画のポスターには、ウェリントンを演じるジョン・マルコヴィッチと、仏軍マルボ男爵を演じるマチュー・アマルリックが並んでいるが、最初はアマルリックがナポレオンを演じるのかと思ったら、そうではなかった。アマルリックの登場場面は極めて少ないし、カトリーヌ・ドヌーヴをはじめ名だたる俳優たちのシーンの少なさにも驚いた。タイトルやポスターや、キャストの名前からは、映画の性格を判断してはいけない。

髭が伸びた男たちは誰が誰だかよくわからなくなり、かろうじて、英語・フランス語・ポルトガル語のどれを話しているかによってどの陣営に属する人なのかを判断するのだが、英語を話せるポルトガル人もいたりするので、非常にややこしくとまどった。ナレーションもあって、それは戦いの進捗状況を理解するのには役立つが、各シーンの解説をしているわけではないので、正直言って、これ誰だっけ?と常に考えなければならなかった。

執拗に出てくる孤児のシーンなどは、何かを語っていそうで、象徴的でありそうでいて、結局はよくわからない。そういうシーンが多い。ウェリントンとお抱え絵師との関係もそうだ。意図のよくわからないシーンが縦にも横にも積み重ねられると、いつのまにか非常に奥行きのある世界へと彷徨いこんでしまうといった気分だった。面白いのは確かだが、152分はいかにも長い。

(2013.12.19 なかのZERO大ホールにて)

映画公式サイト
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2013年12月19日

『鑑定士と顔のない依頼人』

監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス、シルヴィア・ホークス、ドナルド・サザーランド、ほか
原題:La migliore offerta (The Best Offer)
2013年イタリア

かなり前評判の高いこの作品を、公開3日目に観て来た。急に思い立ったので、朝オンラインで午後の回上映のチケットを買ったが、ほとんどすでに満席で、前の方がほんのちょっとしか残っていない盛況ぶり。オンラインでチケットを買おうとして、こんなに混んでいたことは一度もないので、いくら日曜でも、こればびっくり。だが、東京では2館でしか公開していないので、混雑するのも当然だろう。評判通り、なかなか面白い作品だった。私はミステリーの筋立てより、これでもかというほど登場してくる美術品の数々や、主人公の伊達な服装や、豪華な邸宅など、ディテールが心地よく、さすがイタリア映画だなと思わせてくれるところに、この映画の魅力を感じた。イタリア映画なのに、台詞がすべて英語だったのが少し残念ではあったが。

ヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)は、超一流のオークション鑑定士。その鑑定眼は折り紙付きだ。そんな彼に、ある依頼が舞い込んでくる。亡くなった親の残した屋敷の家具や美術品を処分したいので査定を頼みたいという若い女性からの、比較的ありふれた内容である。ところが依頼人は、様々な口実を設けては、ヴァージルとの会う約束をことごとく反故にしてしまい、決してヴァージルの前に顔を見せない。腹を立てたヴァージルは何度も依頼を断ろうとするが、屋敷の地下に、大変な価値を持つ可能性のある部品の一部を見つけ、手を引けなくなる。ヴァージルは姿を見せない依頼人を一目見てやろうと、ある日物陰に隠れて彼女を盗み見、その美しさに惚れ込んでしまう。ところが、やがて女は忽然と姿を消す。彼女はなぜ姿を見せようとしないのか、査定の本当の目的は何なのか、地下で見つかった部品は何なのか、すべてが謎のまま、話はクライマックスへと進んでゆく。

とにかく道具立てが贅沢で、これが本当に楽しめる。壁を埋め尽くす名画の数々、美術品の鑑定の面白さ、オークションの息詰まる攻防。それとはまったく別に、ポイントポイントで登場する周囲の人々の配し具合も絶妙だ。依頼人の屋敷の向かいにあるカフェの常連客のひとり、数字の記憶に驚異的な才能を見せる女性(キルナ・スタメル)が印象に残る。彼女が機関銃のように数字を並べ立てるその声が、不可思議な音楽のように聞こえてくる。オークションの影の相棒ビリー(ドナルド・サザーランド)や、ヴァージルの若き知人である美術品修復家ロバート(ジム・スタージェス)、ヴァージルの秘書役の男性も忘れがたい。けれども、何と言ってもジェフリー・ラッシュだ。ほとんどすべてのシーンに登場し、人嫌いで頑固な美術品愛好家としてのヴァージル像を存分に見せてくれたかと思うと、クライマックスではがらっと変貌した姿であらわれる。トルナトーレ監督は、オファー前からジェフリー・ラッシュに当て書きしたそうで、役との見事なまでの一体化ぶりには感銘を受けた。モリコーネの音楽も素晴らしい。ただ、ミステリーとしては、伏線がはっきりしすぎていて、ちょっと物足りない気もした。

(2013.12.15 TOHOシネマズシャンテにて)

映画公式サイト


以下ネタバレあり
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2013年12月08日

『愛しのフリーダ』

製作/監督:ライアン・ホワイト
原題:Good Ol' Freda
2013年アメリカ、イギリス

副題には「ザ・ビートルズと過ごした11年間」とある。17歳のときに、ザ・ビートルズのマネージャー、ブラインアン・エプスタインに雇われ、一ファンからバンドの秘書的存在になり、彼らや彼らの家族から、身内同然に可愛がられたフリーダ・ケリーの11年間と今を追ったドキュメンタリー映画である。

ザ・ビートルズをリアルタイムで知る人々にはもちろん、そうでない世代の人にも十分に共感を持ってもらえるはずの、一人の誠実な魅力的な女性が描かれた作品だ。私はかなりのザ・ビートルズフリークであったにもかかわらず、フリーダという人の存在は知らなかった。彼女は、決して表に出ることはなく、度重なるバンドについてのインタビューや、執筆要請もすべて断り続けてきた。さらに所有していた膨大な量のバンドに関する資料や貴重な品を、一つたりともお金に換えようとはしなかったのである。バンドのプライバシーを守るということを本当の意味で実践した人なのだ。だからこの映画でも、少しはバンドの知られざる過去を明かしてはいるものの、暴露というような内容はいっさいなく、メンバーの個人生活にかかわることには口を閉ざしている。どれだけザ・ビートルズを愛し、尊敬していたかが彼女のこの姿勢にはっきりとあらわれている。

フリーダは、最初はキャバーン・クラブに入り浸ってザ・ビートルズにのめり込む一人のファンの少女だった。当時のことを語るフリーダは、掛け値なしに本当に楽しそうで、よい青春時代を過ごしたことがスクリーンから直に伝わってくる。彼女は、自分にもそういう楽しい人生があったことを孫に知ってもらいたくて、この映画でのインタビューをOKしたのだそうだ。あれほど世界的に有名になり、世界各国のファンに愛されたバンドの秘書だったにもかかわらず、彼女は終始奢ることも威張ることもなく、謙虚に忠実に誠実に、そして明るく朗らかに、バンドの支えであり続けた。このフリーダという人の存在そのものが感動である。エプスタインも、ジョンもジョージも亡くなったし…と語るフリーダに、こちらも思わず涙が出そうになった。

構成はフリーダのインタビューと、当時の映像、写真、ポール・マッカートニーの叔母の証言(フリーダ評)ザ・ビートルズと親交のあったバンドのメンバーたちの証言(フリーダ評)などを組み合わせたものだ。60年代のリヴァプールの音楽シーンを知る上でも貴重な内容のものだと感じる。エンディングのほうには、元メンバーからのメッセージもある。オープニングからエンディングまで、各要素の配分がよく、まったく興味を削がせないすぐれた構成のドキュメンタリーだった。ザ・ビートルズの楽曲は数曲使われていたが、彼らがカヴァーした曲のオリジナルが多く流れた。

懐かしすぎて辛い。

(2013.12.7 角川シネマ有楽町にて)

映画公式サイト
posted by すいっち at 15:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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