2014年04月10日

『LIFE!』

監督:ベン・スティラー
脚本・製作:スティーヴン・コンラッド
出演:ベン・スティラー、ショーン・ペン、クリステン・ウィグ、シャーリー・マクレーン、アダム・スコット、パットン・オズワルト、キャスリン・ハーン、ほか
原題:The Secret Life of Walter Mitty
2013年アメリカ

雑誌「LIFE」を題材にした映画だというので、ベン・スティラーにはまったく興味がなかったのだが観に行ってみた。事前情報を見ないで行ったので、こんなにコメディータッチの作品だとは予想しておらず、思ったより楽しい映画だった。

ウォルター・ミティ(ベン・スティラー)は、雑誌LIFE社で写真管理の仕事をしているサエない男。経理課のシェリル(クリステン・ウィグ)に密かに思いを寄せているが、人付き合いの下手なウォルターはまともに話しかけることもできないでいる。そんな彼は、ときおり空想の世界に羽ばたく癖があった。そこでは彼は強きヒーローであり、果敢にアドベンチャーに挑戦する男となる。LIFEは時代のデジタル化の波に逆らうことができず、販売部数も減少、ついには完全デジタルへ移行することが決まり、雑誌として刊行するのはあと1号だけということになる。当然大規模リストラも予定され、人員削減のために送り込まれた新しいボスは、ウォルターをリストラ対象にしようと、あの手この手でプレッシャーをかけてくる。運悪く、最終号の表紙を飾るはずの写真が行方不明になってしまう。長年付き合ってきた(実際に顔を合わせたことはない)写真家のショーン(ショーン・ペン)を何とか探しだし、行方不明の写真を見つけ出そうとするウォルター。気ままに世界中を撮影のために飛び回っているショーンを探し当てるのは容易なことではない。グリーンランドやアイスランドまで足を運ぶが、あと一歩のところでショーンとすれ違いの繰り返し。しかしこの旅が、その後の彼の生き方を決定づけるものになってゆく。

映像がたいへんユーモアにあふれた凝った作りになっている。冒頭から、オープニングクレジットの文字が景色のあちことにちりばめられ、うまいなあと感心する。見どころのひとつは、ウォルターの空想の世界だろう。明らかに、いくつもの映画のパロディーというか、オマージュというか、知っている人なら、あ!あれをパロっているなと気づくシーンがたくさん出てくる。私はアメリカ映画をあまり数多く観ないので、出典がわからないものも多かったが、少なくとも『スパイダーマン』と『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』は間違いないと思う。とくに、本物の『ベンジャミン・バトン』は特殊メイクが話題となった作品だが、『LIFE!』では、見事にそれが再現されている。シェリルもウォルターの空想の中では年老いて登場するのだが、クリステン・ウィグの老けメイクは素晴らしかった。

ウォルター・ミティのような人物像に好感が持てないので、感激するには至らなかったが、後味の爽やかな映画である。せっかくLIFEが舞台となるのだから、もう少し雑誌編集の話や写真そのものの話も描いてもらいたかった気がする。終盤に行くに従ってウォルターの顔に精悍さが増し、男性としての魅力が増してくるところは、さすがベン・スティラーだと思えた。ショーン・ペンは気まぐれ屋の初老のカメラマンという意外な役柄で、しばらくぶりに見たので誰だか最初はわからなかったほどだが、非常によいシーンが彼のために用意されていた。

(2014.4.6 ユナイテッド・シネマとしまえん にて)

映画公式サイト
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2014年04月02日

『アデル、ブルーは熱い色』試写会

監督・脚本:アブデラティフ・ケシシュ
共同脚本:ガリア・ラクロワ
原作:ジュリー・マロ「ブルーは熱い色」(DU BOOKS発行)
出演:アデル・エグザルコプロス、レア・セドゥ、サリム・ケシゥシュ、モナ・ヴァルラヴェン、ジェレミー・ラユルト、アルマ・ホドロフスキー、バンジャマン・シクスー、ほか
原題:La Vie d'Adèle CHAPITRES 1 ET 2
2013年フランス

2013年のカンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いた作品。パルムドールは監督のみに贈られる通例を破って、主演の二人アデル・エグザルコプロスとレア・セドゥを含めた三人に贈られたことでも話題になった映画だ。漫画が原作の作品がパルムドールを授賞したのも初めてのことだそうだ。事前情報をなるべく入れずに、同性愛を描いた作品だという程度の知識で試写会に行く。会場で、これがR18指定であることがわかる。そういえば、性描写がどうのこうのとどこかに書かれていたっけと思いだす。そして、これも当日わかったことだが、この映画は179分という長尺だったのだ。

鑑賞の翌日になってもその世界から抜け出せない映画は本当に久しぶりだ。男女の愛を描いた映画なら、その作品がとてもよいと思っても、自分の年齢からして、まるで自分がその当事者になったような気持にはもはやなれない。ところが本作は、本当に当事者になった気分で、私もブルーの髪のエマに一目惚れしてしまった。

アデル(アデル・エグザルコプロス)は極めて普通の高校生。文学と語学と料理の好きな女の子。将来は幼児教育の教師になりたいという夢を持っている。美女というわけでも、スタイル抜群というわけでもなく、髪の毛はいつもボサボサで、無造作にゴムで束ねている。身のこなしも優雅からはほど遠く、食べ方は行儀悪く、寝るときはいつもだらしなく口を半開きにしている。そんな飾らない女の子だが、なぜか男子からは結構モテる。ある日アデルは町で髪をブルーに染めた女性とすれ違い、その一瞬の視線に射貫かれる。それからというものアデルの脳裏からは彼女が離れなくなる。夜のゲイバーで運良く再会できたその女は、エマ(レア・セドゥ)といい、美大生だった。エマもアデルに興味を持ち、数日後に下校時にアデルを待っていた。二人は親しく話し、アデルは知的なエマにすっかり心を奪われてしまい、やがて二人は激しく肉体を求め合うようになる。数年後アデルは教師になり、エマと同棲を始め、働きながらエマのヌードモデルも務めていた。しかし幸せな日々に少しずつ影がさしてゆく。

これは主演二人の熱演を絶賛するよりほかはないだろう。アデル・エグザルコプロスは、高校生から大人になってゆくアデルの感情の動きを実に的確に繊細に演じ、とても演技には見えないほどリアリティーがあった。エマに対するアデルの一途な思いが確実に伝わってきて、こちらを同化させてくれた。一方レア・セドゥは、まずこれほどブルーの髪が似合う人はいないだろうと溜息が出てしまうほど魅力的だ。男の子っぽいサバサバ感を醸し出しながら、その視線と笑顔で人の心を絡め取る。現実の人間というより、漫画の世界を具現化したようなエマと言えるかも知れない。アデルの心情を中心に描いているために、エマはやや客観的な立ち位置にあり、ミステリアスでつかみ所がないからこそ惹かれる。

確かに、話題となった7分間のラブシーンは、ちょっと長すぎるかなとも思うし、最後には『ラスト、コーション』を思わせるような技巧的なシーンがあって、これはいらないような気もしたが、どんなに撮影が大変だったろうと心配になるほどの迫真のラブシーンであることは間違いない。

アデルの思いと呼応するかのように、高校の授業風景、幼稚園の教育風景がたびたび登場し、こちらも非常に興味深い。とくに、高校の文学の授業では、こういうメソッドのもとで教育を受けているから、フランス人(だけではないだろうが)は自分の意見をしっかり表明できる人に育つのだろうなと感慨深かった。日本ではああいう授業はできないだろう。また、エマが美大生なので絵画の話も出て来て面白かった。クリムトが好きだというエマ、エゴン・シーレがよいというエマの仲間。それで彼女たちの性格もわかるような気がする。二人の両親の描き方など、脚本も実にうまいと思う。

フランス語の原題は「アデルの人生 第1章、第2章」という意味である。どこから「ブルーは熱い色」が出て来たのかと思っていたら、原作漫画のタイトルが「Le bleu est une couleur chaude」(ブルーは熱い色)であり、映画の方も英題は「Blue Is the Warmest Colour」なのだった。

アデルがエンディングのほうで着るブルーのワンピースがいじらしい。

(2014.4.1 なかのZERO小ホールにて)

映画公式サイト以下ネタバレあり
posted by すいっち at 11:06| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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