2014年08月24日

『るろうに剣心 京都大火編』

監督・脚本:大友啓史
脚本:藤井清美
原作:和月伸宏「るろうに献身 - 明治剣客浪漫譚-」(集英社 週刊少年ジャンプ)
出演:佐藤健、武井咲、青木崇高、蒼井優、大八木凱斗、江口洋介、伊勢谷友介、土屋太凰、田中泯、宮沢和史、小澤征悦、藤原竜也、神木隆之介、滝藤賢一、三浦涼介、丸山智己、高橋メアリージュン、ほか
2014年

前作を凌ぐ迫力と評判が高いので、観に行って来た。印象は前作と変わらないが、個人的には前作のほうが好みだ。今回は、剣心(佐藤健)の敵として3人がクローズアップされる。抜刀斎(剣心の前身)の後継者として明治維新まで人斬りを務めた志々雄真実(ししお まこと=藤原竜也)、志々雄が率いる強力部隊「十本刀」のトップである瀬田宗次郎(神木隆之介)、そしてお庭番の元頭領である四乃森蒼紫(しのもり あおし=伊勢谷友介)だ。この3人を前面に押し出すあまり、剣心の影が薄くなってしまった印象があるのだ。完結編である「伝説の最期編」を控えているので、とりあえずこの「京都大火編」では、敵の強さを印象づけておこうということなのだろう。事実、「京都大火編」では、3人の敵は誰も死なないし、何かが大きく動いたというストーリー展開ではない。

コミックが原作だし、時代が時代だけに、服装が様々なのはもちろんわかるが、さすがにあまり現代的すぎるビジュアルだとシラけてしまうのも確かだ。気になったのは、十本刀のひとり沢下条張(さわげじょう ちょう=三浦涼介)。出で立ちと物腰暴走族、ヘアスタイルに至っては金髪を逆立て、まるで往年のX JAPAN。これはちょっと迫力というより滑稽さが先に立ってしまって、ストーリーに集中できない。剣心、相楽佐之助(青木崇高)、神谷薫(武井咲)、高荷恵(蒼井優)らがいつもながらの服装なので、それとの差別化ということだろうが、どうも衣装ばかり気になって仕方がない。

藤原竜也という俳優は、あの童顔がどうもピンと来ないのだが、今回はまったく顔が見えない役どころだったので、失礼ながらとても良かった。さすが舞台で鍛えた発声は、童顔を忘れさせるに十分迫力があり、抜きんでているなと思えた。

一番見どころだと思ったのは、田中泯演じる元お庭番・柏崎念至と四乃森蒼紫との戦いだ。田中の踊りで鍛えた身体と美しい身のこなしは、別格で、本当なら柏崎のほうが勝つだろうにと思えるほどだった。やはり、戦いのアクションが最大のポイントとなるこの映画。ストーリーや設定をどうのこうの言っても始まらないわけで、アクションだけを楽しむのなら、十分のエンターテインメント性を備えているけれども、やっぱりそれだけではつまらないなと思えてきた。「伝説の最期編」では、再び剣心に光が当たるだろうか。

(2014.8.13 ユナイテッド・シネマとしまえん にて)

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2014年08月12日

『超高速!参勤交代』

監督:本木克英
脚本:土橋章宏(講談社「超高速!参勤交代」)
出演:佐々木蔵之介、深田恭子、伊原剛志、寺脇康文、上地雄輔、知念侑李(Hey! Say! JUMP)、柄本時生、六角精児、市川猿乃助、石橋蓮司、陣内孝則(特別出演)、西村雅彦、ほか
2014年

ロングランのおかげで、公開から8週間目に入っても観に行くことができた。他愛なさそうに見えて、うまく勘所を押さえた本当に楽しい映画だったので、人気の理由もわかろうというものだ。

八代将軍吉宗の時代、磐城の国。弱小藩である湯長谷藩(ゆながやはん/現在の福島県いわき市)の藩主・内藤政醇(まさあつ/佐々木蔵之介)以下藩士たちは、1年におよぶ江戸への参勤から故郷へ戻ってきたばかりであった。やれやれとくつろいでいた政醇の元に、江戸からとんでもない命令が届く。湯長谷藩の金の産出に関して虚偽の報告がなされているふしがあるため、5日のうちに江戸に参勤して釈明せよというお上からのお達しだ。もちろん偽りの報告などしていない。もともと財政が逼迫しているなか、金のかかる参勤交代を済ませたばかりで、すぐに再び参勤を行う蓄えなどあるはずもない。しかも通常10日はかかる江戸までの道のりを5日でという無理難題。これは、無理矢理湯長谷藩を取り潰して私腹を肥やそうと目論見む幕府の老中・松平信祝(のぶとき/陣内孝則)の陰謀によるものであった。参勤交代に必要な大名行列を仕立てる金もなく、人もなく、何より時間がない。重臣会議でも誰も打開策を見いだせないまま、むなしい議論が続く。そこに藩主・政醇の一声「5日のうぢに江戸へ行ぐ!」小藩と侮られることに磐城魂が爆発したのだ。彼らはどのような方法で江戸まで駆けつけるのか、湯長谷藩の命運はどうなる?

藩随一の知恵者・家老の相馬兼嗣(西村雅彦)を筆頭に、江戸を目指して走る藩士たちはいずれも個性豊かな人物で、彼ら一人一人の活躍がストーリーを肉付けしている。もっとも腕の立つ荒木源八郎(寺脇康文)は藩士のリーダー的存在。秋山平吾(上地雄輔)は、沈着冷静で判断力に長けた男。鈴木吉之丞(よしのすけ/知念侑李)はもっとも若い弓の名手だが高所恐怖症。増田弘忠(柄本時生)は二刀流を操る身体能力の高い男で、動物好き。今村清右衛門(六角精児)は槍の名手だが太めのため走るのが苦手。彼らのトップに君臨するのが、お人好しで領民思いだが、自身も居合の名手の政醇である。言ってみれば、小規模群像劇のような構成なのだが、彼らひとりひとりの特徴が過不足なく描かれている。各人の長所・短所が両方とも描かれるため、誰かが突出してスーパーマン役を果たすわけではない。私は相馬兼嗣の人物像がもっとも気に入った。追い詰められると渋い顔をしながらも必ずアイディアを絞り出してくれる頼れる存在。しかも、理論だけでなく実践することも厭わない。お茶目なところもある。私の見たことのある西村雅彦の役の中でもトップクラスの魅力的な人物だ。個性的な他の藩士たちも、戦いの場面では実に勇猛で格好良い。コメディーだからといって、アクションも全然手を抜いていない。

コメディーだけれども、笑わせようとするあざとい仕掛けがなく、みんなが真面目に行動しているからこその可笑しさがあって、それが気持ちよいのだ。そして、江戸を目指してひたすら走る行為に象徴されるように、展開にスピード感がある。鍵を握る抜け忍・霧隠段蔵(伊原剛志)や偶然政醇と知り合う遊女・お咲(深田恭子)の存在や、松平信祝の悪辣ぶりなどはかなりベタだと思うが、話に花を添えるという程度の抑え方がなされているので、そう気にならない。やはり脚本が相当優れている証拠だろう。土橋章宏はこの「超高速!参勤交代」の脚本で、2011年に第37回城戸賞を審査員オール満点で授賞した人なのだ。つまり脚本が先にあって映画化は後から決定したということらしい。やはりしっかりした脚本があると、映画は面白くなると言う当たり前のことを再認識させられた映画でもあった。

(2014.8.11 池袋シネマ・ロサにて)

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2014年08月07日

『私の男』

監督:熊切和嘉
原作:桜庭一樹「私の男」(文藝春秋刊)
脚本:宇治田隆史
出演:浅野忠信、二階堂ふみ、高良健吾、藤竜也、モロ師岡、河井青葉、山田望叶、三浦誠己、三浦貴大、広岡由里子、安藤玉恵、吉村実子、ほか
2013年

早く観に行かないと終わってしまいそうなので、先日慌てて観に行って来た。原作は読んでおらず、浅野忠信と二階堂ふみが出演する禁断の愛の物語らしいという程度の知識しか入れないでいたが、第36回モスクワ国際映画祭コンペティション部門で、最優秀作品賞と最優秀男優賞を受賞するなど、評価も高いので楽しみにしていた。

北海道を襲った津波で孤児となった10歳の少女・花。家族を持たない遠縁の男・淳悟(浅野忠信)が彼女を引き取ることになる。車の中で淳悟は花に言う「俺はおまえのものだ」と。花(二階堂ふみ)は16歳になり、紋別で普通の高校生として淳悟と暮らしていた。ある日、流氷の海で殺人が起こる。誰が何のために?花と淳悟の隠された秘密とは?

とりわけメインキャストに台詞が少なく、生き物がたてるような、流氷のきしむ音の印象的な映画だ。この音がざわざわと不穏なものを観ている者に投げかけてくる。雪の北海道が舞台で、孤独な2人の生き方がストーリーとなれば、静謐な映画のように聞こえるが、実際はそうではない。常に奥底に濃密な人と人との繋がりの熱を感じさせて、むしろ息苦しいような気分にさせる。

淳悟と花との関係は、客観的描写によるのではなく、それぞれのふとした仕草から感じ取れるものが多い。浅野と二階堂という実力ある者同士が演じているからこそ実現した空気だと思う。原作を読んでいないので、本当のところはわからないが、この2人の間にあるのは、愛というより、繋がった絆を何が何でも切るまいとする執念のように思える。そういう作り方が、この映画を単なるラブストーリーにしないことに成功しているのだろう。官能とはまだ縁遠いような若い二階堂をして、大いなる「女・性」を醸し出させているのは、彼女の資質によるものが大きいだろうが、演出の仕方にももちろん関わっているはずだ。

見応えはあったが、好きな作品ではなかった。最近、普通の人ならここで言葉を発するだろうに、と思うような場面で、ことさらに俳優の表情や行動だけに語らせてしまう映像が多いのだが、私はこれが段々嫌になってきている。言葉で語れないものがあるのは、当たり前のことだが、脚本の書き手はあまりにそれを俳優に丸投げしていないか?説明的な台詞が欲しいというのではない。言いたいことを言わず、いや、言いたいことを言う言葉を持たず、フィーリング重視だったり、貧困な語彙しか持てなかったりするタイプの人間に嫌気がさしている私には、話さなくてもわかるとか、沈黙は言葉より雄弁だという考え方は胡散臭いと思えるのだ。この映画では、寡黙な2人に相対する存在として、ぐちぐちと喋る大塩(藤竜也)という男を配してバランスを取っているので、まだよいのだが、台詞があるとシリアスさを削いでしまうという考え方が見透かせるような日本映画が多いのも事実だ。

花の幼少期を演じる子役(山田望叶)はどこかで見た顔だと思ったら、NHK朝ドラ「花子とアン」で、吉高由里子の子供時代を演じた子だった。この子はかなりよかった。そして、大人になって綺麗にメイクもした花の美しいこと!二階堂の真骨頂ここにありと思える変貌ぶりだった。

(2014.8.3 新宿ピカデリーにて)

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以下ネタバレあり
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2014年08月05日

『ノア 約束の舟』

監督:ダーレン・アロノフスキー
脚本:ダーレン・アロノフスキー、アリ・ハンデル
出演:ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、レイ・ウィンストン、エマ・ワトソン、アンソニー・ホプキンス、ローガン・ラーマン、ほか
原題:NOAH
2014年アメリカ

観てから1か月半も経ち、かなり印象が薄れてしまったが、やっぱり良くも悪くもハリウッド映画(アメリカ映画と言うべきか)だなという感想だ。この映画の情報に初めて接したとき、創世記に書かれたノアの方舟の物語という映画のテーマに惹かれたのはもちろんだが、『ハリー・ポッター』シリーズ以外でのエマ・ワトソも、観ようと思うきっかけになった。

映画化するに当たって、どの程度聖書の記述を脚色するかにも興味があったが、ノアの養女イラ(エマ・ワトソン)を登場させたのは、男子ばかりでは映画として華やかさに欠けるということからだったのだろうか。それともイラのお腹に宿った子が男子か女子かに関して、ノアが神との約束とヒューマニティーの間で苦悩する様を描きたかったからだろうか。いずれにせよ、確かにノラの存在がなければ、映画化するに足るエンターテインメント性は実現できなかっただろうとは思う。

映画としての見どころは、何と言っても壮大な方舟と、集まってくる無数の動物たちのCGで、これは見事と言うしかない。方舟はおそらく聖書の記述にかなり忠実に作られているように思う。木材の種類から、組み立て方、内部構造、タールでの塗装など、ひとつひとつが目を惹き、これをもっとゆっくり見たいものだと思わせてくれた。そして、つがいで方舟にやってくる動物たちや鳥。この数たるや凄まじいもので、全編通してもっとも迫力を感じたシーンだ。動物たちはすべてCGで、本物は使っていないという。それでも実写との親和性は大したものだ。方舟の中で、動物たちを眠らせるために、イラが催眠効果のある薫香(?)を振って歩くシーンはとてもよかった。

一方、わざとらしさを感じさせる作画のために興味が削がれてしまった点も多い。ひとつは、ノアの方舟作りに協力し、外敵とも戦うウォッチャー(番人)の存在だ。こういった存在を現出させることに関しては、そう否定する気もないが、問題はそのビジュアルと動きなのだ。どう見てもロボット。トランスフォーマーじゃないんだからと思ってしまったし、岩と同化する様は、小栗旬が桃太郎を演じるペプシNEX ZEROのCMに出てくる鬼ヶ島の鬼とそっくり。いや、正直なところCMのほうが作り物っぽくないし、ずっと格好良い。ノアの方舟の話で重要なポイントとなるオリーブの枝をくわえた鳩だが、鳥のCGはよほど難しいのか、これが絶望的にデコイのよう。ここまで格好悪いのなら、無理に鳥を大きく写さなくてもよいのにと思う。

さて、主演のラッセル・クロウは、どう思えば良いのか…私の感覚では、まるでノアに不似合いな役者だと感じるのだが、アメリカでは「ノアはこうもあり得ただろう」と納得されるキャスティングなのだろうか。勝手な思い込みに過ぎないが、ノアはもっと素朴でバイタリティーを感じさせない人物のほうが良かったのではないか?ほかに気になったのは、衣装がスタイリッシュすぎるということだ。いったいいつの時代を描いたものなのかとわからなくなりそうだ。衣装は凝れば良いというものではないと思うが、ハリウッド大作ともなると、衣裳デザイナーは必要以上に張り切ってしまうのだろうか。

お目当てのエマ・ワトソンは変わらず可憐で悪くはなかったが、こういう役だと彼女の良さが発揮されないように思えて、もどかしかった。

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(2014.6.22 ユナイテッド・シネマとしまえん にて)
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