2014年10月10日

『ジャージー・ボーイズ』

監督:クリント・イーストウッド
脚本/ミュージカル版台本:マーシャル・ブリックマン、リック・エリス
出演:ジョン・ロイド・ヤング、エリック・バーゲン、マイケル・ロメンダ、ビンセント・ピアッツァ、クリストファー・ウォーケン、マイク・ドイル、レネー・マリーノ、エリカ・ピッチニーニ、ほか
原題:JERSEY BOYS
2014年アメリカ

クリント・イーストウッド監督作品はいつだって魅力的だし、フォー・シーズンズの楽曲も好きだが、ミュージカルを好まない私は、観に行こうかどうしようか迷っていた。それでも、かなり評判がよいので思い切って(というほどのことはないが)観に行ってみたところ、これが大正解だった。ミュージカル臭さ(ミュージカル愛好者の方には失礼な言い方だが)は微塵もなく、しっかりとこれは映画だと思わせてくれる良い作品になっていたのだ。

「シェリー」に代表されるフォー・シーズンズの曲はだいたい知っているし、このヴォーカル・グループがどれほど人気があったかもわかっている。けれども、彼らの背景については何も知らなかった。それどころか、スターの顔がそうメディアに出ない時代だったから、フォー・シーズンズが白人のグループであることさえ長いこと知らなかった。それほどメインヴォーカルのフランキー・ヴァリの声は巧みで見事だった。

トミー役のビンセント・ピアッツァ以外の3人は、ミュージカルでも同役を演じた俳優だそうだ。監督はわざと映画界では知られていない俳優たちを選んだという。これは新鮮で良かった。大ヒットしたミュージカルはもちろん観ていないが、メンバーひとりひとりの視点からグループの歴史を物語るというストーリー展開はミュージカルと同じだそうである。この試みはなかなか面白かったし、4人のうちの誰かが突然物語を語り始めても、わざとらしさを感じさせず、すんなり受け入れることができた。

ジャージー・ボーイズというタイトルが示すとおり、ニュージャージー州の貧しい町の若者たちが、田舎くさい町から何とか成功を収めて飛び出したいと熱望する。成功が本物となっても、結局染みついたこの町の臭いは決して取れない。けれども、それが彼らの良さでもある。歌への情熱と、地域への愛着、それが物語の中心だ。そして、フィクションでもなかなかこうは行かないだろうと思えるような4人の個性の違いが楽しい。愚直なフランキー・ヴァリ(ジョン・ロイド・ヤング)、3人より出自が良く作曲の才に溢れているが実利主義者でもあるボブ・ゴーディオ(エリック・バーゲン)、メンバー同士の調整役でもある目立たないニック・マッシ(マイケル・ロメンダ)、そして金や女にだらしがなく悪事にも荷担するが、グループのフロントとして魅力のあるトミー・デヴィート(ビンセント・ピアッツァ)。若者たちを支える大人も個性的。ゲイのプロデューサー、ボブ・クルー(マイク・ドイル)やギャングのボス、ジップ・デカルロ(クリストファー・ウォーケン)がとても印象的だ。

音楽にも造詣の深い監督だけあって、音楽にまつわるシーンは実に的確な演出をしている。良い楽曲に初めて接して、知らず知らずセッションに発展してしまうところなど、深く頷けるシーンがたくさんあった。彼らの曲を知らないで映画を観る人がどう感じるかはまったく想像できない。懐古趣味は嫌だなと天の邪鬼なことを考えながら観ていても、昔好きだった歌を聴くと、やっぱり幸福感を感じてしまうのだが、過去の体験という裏打ちのない年代の人はどういう視点で観るのかなと興味深くもある。

映画の中で最初にフランキー・ヴァリ役の声を聴いたときには、正直がっかりした。アニメの変な声のような、滑稽な声に聞こえたからである。本物のフランキー・ヴァリはこんな声じゃなかったと思ってしまった。だから、その声を聴いて多くの人が驚愕するという設定なのが、なんだか嘘くさかった。それでもストーリーが進んでゆくと、さほど気にならなくなったのは確かである。50年代60年代の風が気持ちよく吹いてくる作品だったと思う。

(2014.10.3 ユナイテッド・シネマとしまえん にて)

映画公式サイト
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2014年10月03日

『イヴ・サンローラン』

監督:ジャリル・レスペール
脚本・脚色:マリー=ピエール・ユステ、ジャック・フィエスキ
出演:ピエール・ニネ、ギョーム・ガリエンヌ、シャルロット・ルボン、ローラ・スメット、マリー・ドビルパン、ニコライ・キンスキー、マリアンヌ・バスラー、ほか
原題:Yves Saint Laurent
2014年フランス

このところ日本映画ばかり観ていたので、フランス映画を観たくなり、時間と場所が都合の良いこれを選んだ。フランスのファッション界のカリスマ的デザイナー、イヴ・サンローランの伝記映画である。主演のピエール・ニネが若き日のサンローランにそっくりという評判だけは知っていたが、何も事前情報を仕入れずに行った。

サン・ローランは、デザイナーとして、またブランド名としてはもちろん良く知ってはいるものの、彼のプライバシーについては何も知らなかったので、伝記といってもフィクションを観るように、新鮮な気持ちで観ることができた。見終わったときは、彼のデザイナーとしての才能や、作品の美しさではなく、彼の個人的な愛憎の物語ばかりが記憶に残ったが、それはむしろ制作側の意図するところだったのだろう。

クレジットには、ロランス・ベナイム(本当にベナイムと読むのかどうかわからず、ブナイムかも知れないが、多くの映画情報サイトではベナイムと書かれている)著の『YVES SAINT LAURENT』という伝記を自由に翻案したものであるとしてある。ただ、原作扱いではないようだ。この映画は、サン・ローランの恋人であり仕事上のパートナーでもあるピエール・ベルジェの視線から描かれており、それがおそらく上記の著作とは大きく異なっている点なのだろう。この描き方は悪くない。

ストーリーはイヴとピエールとの運命的な出会いから、破局を迎えるまでを綴ったものだ。観る前は、題材から考えてPG12なのが不思議だったが、サンローランの男性とのラブシーンが結構あるので、なるほどと納得。イヴとピエール二人の愛が物語の中心になっていることは間違いない。そして、ディオールのミューズであったモデルのヴィクトワール(シャルロット・ルボン)とピエールとを交えた奇妙な三角関係や、カール・ラガーフェルトらとの交流などが、事情を良く知っている人には面白いところなのだろうが、いくら著名なデザイナーといっても、そのプライバシーには興味を持っていなかっただけに、よく関係がわからず、こういうことなのかなと、想像を巡らしながら観ているほかはなかった。

私としては、ピエール・ベルジェ本人が全面協力をして、サンローランの本物のコレクションを映画で使用しているということだったから、もっとそのモード面に期待していたのだが、意外に訴えかけて来なかった。女性たちにしても、なぜディオールに気に入られていたのか、なぜサンローランに気に入られていたのか、その理由が頷けるほどには描かれていなかったと思う。おそらく、最も注目すべきは、主演のピエール・ニネによるサンローランの再現性なのだろう。その面では、実際には知らなくても、こういう人だったのだろうと思わせる説得性は十分だったと思えた。


(2014.9.27 シネリーブル池袋にて)

映画公式サイト
posted by すいっち at 23:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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