2015年05月30日

『海街diary』試写会

監督・脚本:是枝裕和
原作:吉田秋生『海街diary』(小学館「月刊フラワーズ」連載中)
出演:綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、加瀬亮、鈴木亮平、池田貴史、坂口健太郎、前田旺志郎、キムラ緑子、樹木希林、リリー・フランキー、風吹ジュン、堤真一、大竹しのぶ、ほか
英題:Our Little Sister
2015年

久しぶりに試写会が当たったので、見たかった映画だし、喜んで先週行ってきた。

是枝作品としては珍しく、人気女優を4人も集め、舞台は鎌倉、原作は漫画ということで、いったいどんな作品に仕上がっているのだろうと、非常に興味があった。私たちはキャストをよく知っているけれど、知名度のない外国で彼女たちの存在は、巨匠コレエダの作品中でどのように評価されるのだろうと、それも知りたかった。

幸田幸(綾瀬はるか)、佳乃(長澤まさみ)、千佳(夏帆)は、15年前父が他の女性と暮らすために家族を捨て、母(大竹しのぶ)も再婚のため家を出て以来、3人だけで鎌倉の一軒家に暮らしている。ある日、山形から父の訃報がもたらされた。父の再々婚相手からだ。悲しむには、合わずに長い時間がたちすぎていたが、3姉妹は父の葬儀に出るために山形を訪れる。父には再婚のときの娘、中学生のすず(広瀬すず)がいる。血の繋がらない母親と兄弟との今後のすずの生活に不安を覚えた幸は、すずに鎌倉で一緒に暮らさないかと声をかける。

4姉妹はいずれもくっきりとした性格設定がなされており、どのキャストも見事にはまっている。しっかり者で融通のきかない長女、都会風な装いと風貌で男性との付き合いも密な二女、天然で甘ったれな三女、そして複雑な家庭環境のゆえに思慮深く気配りをしすぎる四女。あまりにもイメージとぴったりなキャスティングであるため、意外性には乏しい。この人の新たな面を見たかったな、という希望があったとしても、それは残念ながらかなえられない。しかし、どの女優も十分よかったと思う。

優しい優しい映画である。些細な感情の行き違いや、登場人物の内面の葛藤はあるにせよ、それらが顕著な形で表出したりはしない。日常の中にほんのちょっと立った波風を物語に仕立てたに過ぎない。だからこそ、ディテイルが大切になってくると思うが、そこは名手是枝監督のこと、人の自然な描写、ことさらに愛情を強調しない節度、鎌倉という舞台を大げさに取り上げない抑制された画面は好ましい。人生の中で誰もが何かを決断しなければならないことがあるが、映画の登場人物たちは、家族の愛情に支えられて、自ら決めた人生を歩んで行く。そういうところが清々しい。

『奇跡』でよい演技を見せていた前田旺志郎が出演していた。大きくなったものだという感慨とともに、ちゃんとした俳優に育ったなと感じた。

ただ私は是枝作品にある優しさの中の毒が好きでもあったので、そういう見方からすれば、物足りない映画だ。試写日は、カンヌのパルムドールが決まる前日だったが、見終わって、この映画はパルムドールには届かないだろうなと思った。

(2015.5.24 よみうりホールにて)

映画公式サイト
posted by すいっち at 16:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月05日

『セッション』

監督/脚本:デイミアン・チャゼル
出演:マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、メリッサ・ブノワ、ポール・ライザー、オースティン・ストウェル、ネイト・ラング、ほか
原題:WHIPLASH
2013年アメリカ


DFA_4072.JPGこのところ、ちっとも映画館に足を運ばないので、連休くらいは何か観に行かなくてはと、オープンしたばかりのTOHOシネマズ新宿へ出かけた。この劇場で観たいものは、3本程度あったのだが、良い席の残っていた『セッション』を観ることにした。歌舞伎町にシネコンが出来たことで、確かに人の流れが変わったようだ。新しいシネコンに人気が集まったのか、地の利の良さか、連休まっただ中のせいか、最近ないほどの盛況で、どのスクリーンも満席のようだった。

オスカーを3部門で獲得し、前評判が非常に高かっただけあって、大変スリリングで面白い作品だった。これを選んで良かったと思える。原題の"WHIPLASH"は劇中で何度も演奏されるジャズ・ナンバーのタイトルである。わかりやすくしたかったのだろうが、邦題を『セッション』にする積極的理由はないような気がする。『ウィップラッシュ』でもよかったのでは?

アンドリュー・ニーマン(マイルズ・テラー)は、名門の音楽大学に入学したばかりの1年生。ジャズドラマーとして超一流になるのが夢だ。その彼が伝説の鬼教師と言われるフレッチャー(J・K・シモンズ)の目にとまる。フレッチャーのバンドで成功すれば、各方面からのスカウトが殺到し、偉大な音楽家としての道が開かれる。有頂天になったニーマンだったが、フレッチャーの完璧を求める過酷なレッスンは、ニーマンの想像の域を遥かに超えていた。人格を全否定するほどの罵声を浴びせる、平手打ちをする、スティックを握る手から血が出ても容赦はしない、罠を仕掛ける。常識を越えた狂気のレッスンに、ニーマンの精神は徐々に追い詰められて行く。師弟という人間関係だけでは理解し得ない二人の対決の結末は?

フレッチャー鬼教師ぶりがまず見ものだ。台詞の激しさ、表情もさることながら、J・K・シモンズの身のこなしが素晴らしい。とりわけ腕と手の動き。これをカメラが実に効果的に捉えている。アカデミー賞でシモンズは助演男優賞に輝いたのだから、彼の演技の素晴らしさは私などが指摘するまでもないことだが、のほほんとしていたニーマンの表情が徐々に変貌していくところも注視に値する。名門大学に入学して、家族からはちやほやされ、ニーマンはやや高慢ちきなところがあった。それが、フレッチャーに徹底的に痛めつけられることによって、プライドに揺らぎが生じ、彼の人格は根底から揺さぶられることになるのだが、その少しずつの変化をマイルズ・テラーはうまく演じていたと思う。

脚本も映像も俳優もみな良かったし、レッスンやコンサートのシーンは満足だが、それ以外のシーン、例えばニーマンと父親とか、ニーマンと女の子のデートシーンなどで、印象があまり変わらないように思えたのだ。これはわざとそうしたのかも知れないが、もうちょっとメリハリがあってもよかったかなと感じる。ジャズ以外のシーンでの、おまけ的な印象が拭えなかったからである。

(2015.5.4 TOHOシネマズ新宿にて)

映画公式サイト
posted by すいっち at 14:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。