2015年09月19日

『天空の蜂』

監督:堤幸彦
原作:東野圭吾「天空の蜂」講談社文庫
脚本:楠野一郎
出演:江口洋介、本木雅弘、仲間由紀恵、綾野剛、國村隼、柄本明、光石研、佐藤二郎、やべきょうすけ、手塚とおる、松島花、石橋けい、前川泰之、松田悟志、森岡豊、カゴシマジロー、竹中直人、落合モトキ、向井理、永瀬匡、石橋蓮司、ほか
2015年

話題作を初日に観に行って来た。原作は読んでいないが、東野圭吾のこと、ストーリーは面白いはずだし、豪華キャストだし、事前宣伝によればスケールが大きく迫力満点ということで、ある程度期待していたのは事実だ。

見終わってまず映画のことより、原作のことを考えた。この小説が15年前に書かれたものとは、本当に驚きだ。原発の危機、今の日本にこれほど説得力のある脅威はないだろう。もちろん、現実には大震災により原発が破壊され、物語は重量ヘリが原発に落とされるかどうかだから、事情は違うが、危機が迫ったときの政府・行政・原発管理者・警察・自衛隊・一般人、それぞれの思惑が複雑に絡み合う様は、3.11のことをありありと思い出さずにはいられない。まさに未来を見通している小説だと思えた。観た今は、これから原作を読むつもりでいる。東日本大震災直後だったら、この映画は作れなかっただろうし、今でも原発に危機が迫るという設定の映画など観たくない方もおられるだろう。それでも、エンターテインメントとして大変面白く出来ていたし、絵空事と思えなかったためだろうか、俳優陣もとりわけ熱を入れて演じていたように思う。

1995年のこと、自衛隊に納入する直前の最新鋭の大型ヘリコプター、通称「ビッグB」が、お披露目の日に何者かの遠隔操作によって、製作会社錦重工業の格納庫から飛び立ってしまう。ビッグBはパイロットなしで飛行が出来るという特性を備えたヘリだ。だが無人のはずのビッグBには、設計者である湯原(江口洋介)の息子がひょんなことから忍び込んでおり、ヘリはこの子供とともに飛び立ち、福井県の高速増殖炉「新陽」の真上でホバリングする。大騒ぎになった頃に、ヘリを盗んだ容疑者からコンタクトがあり、交換条件が提示される。それは日本にあるすべての原発を使用不能にしろというものだ。条件を飲まない場合は、ヘリをホバリングさせたままで動かさない。そうすればやがて燃料が尽きてヘリは新陽に落下する。ヘリには大量の爆薬が積まれているという。ひとりヘリの中にいる子供はどうなるのか、ヘリの燃料の尽きる8時間後までに、湯原や原子炉設計者の三島(本木雅弘)・発電所を管理する炉燃・警察・消防・自衛隊・政府が、各自の立場で策を練る。もし新陽が爆破されれば、日本の大部分が壊滅的放射能被害を受け、今後数百年人の住めない地域になってしまう。犯人の究極の目的は何か、政府は条件を飲むのか、子供と日本の運命はいかに?

冒頭の音楽から惹き込まれた。蜂だ。ブンブンという羽音を思わせるうねりのようなメロディーが、気持ちをザワッとさせる。テンポ良く話がどんどん展開してゆくが、目まぐるしくはない。あまりシーンの余韻を感じさせないところが、映画的というよりテレビ的でもあるのだが、浅い感じはしない。巨大ヘリに代表されるメカ面の迫力も十分で、宣伝通りのスケール感だ。それでも真の主役はやはりストーリーだろう。原発、自衛隊、政府、あまりにもタイムリーなその道具立てには注目せざるを得ないし、今だからこその理解度が見る側にはある。

登場人物も魅力いっぱいだった。特に本木雅弘。大人の不気味な迫力が出てきて、失礼ながら予想を遥かに超える好演だった。役柄が違うと言ってしまえばそれまでだが、『おくりびと』の時より何十倍もよかった。これだけ多くの組織が絡みあう話だと、どこかが突出して優れた組織で、他はやや無能に描かれることも多いのだが、この映画ではそうではなかった。警察が舞台の物語でない限り、揶揄される対象になりがちな警察が、一番印象に残った。参考人聴取をおこなう刑事・高坂を演じる手塚とおるが非常に気に入った。癖のある役(たいていは悪役に近い)の多い俳優さんだが、今回の役では癖はあるが有能な刑事だ。その部下役の落合モトキと松島花もよい味を出していて、この3人だけで面白いドラマが作れそうだと思うほどだった。

最後の最後まで手に汗握る展開でエンディングを迎えるが、結末がわかっても爽快感とはほど遠いズシンと重い何かが残った。あまりにも色々考えさせられるストーリーである。

(2015.9.12 ユナイテッド・シネマとしまえん にて)

映画公式サイト
posted by すいっち at 23:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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