2009年07月24日

『未来の食卓』試写会

監督・プロデューサー:ジャン・ポール・ジョー
プロデューサー:ベアトリス・カムラ・ジョー
音楽:ガブリエル・ヤレド
出演:ペリコ・ルガッス、ほか
原題:NOS ENFANTS NOUS ACCUSERONT(子供たちは私たちを責めるだろう)

映画の冒頭では、ユネスコ会議で研究者が出席者に向かってこう訊ねる。「ご家族や近しい人がガンにかかったという方は?」「糖尿病にかかった知り合いのいる方は?」この質問に、出席者のほとんどが手を挙げる。

ヨーロッパでは毎年10万人の子供たちが環境が引き起こす病で亡くなる。ガンの70%は環境と密接に結びついており、そのうちの30%は公害によるもの、そして40%が食べ物によるものだ。フランスでは年々子供のガン患者が増えている。これらの数字を踏まえて、南フランスの小さな村が子供たちの給食と高齢者の宅配給食を全面オーガニック(en bio アン ビオ)にすることに決定した。この映画は、子供たちの未来を守らなくてはならないと考えた村の取り組みを追ったドキュメンタリーである。

小さな村だからといって、いやむしろ、小さな村だからこそ、財政的に余裕があるわけではない。けれども実際に、現在あらゆる食品に添加物が含まれ、農産物生育には農薬がふんだんに使われ、まっさらな食材などほとんどないという現状をつきつけられれば、財政難と子供たちの未来を秤にかけることはできない。しかも今すぐ始めなければ遅いと、村長を始めとして大人たちが立ち上がる。

しかし、この映画はドキュメンタリーといっても、声高に危機感を煽り立てるような作りになっているわけではない。恐ろしい数字は、冒頭に数字で示されるだけで、映像は南仏の緑豊かな美しい自然の中での子供たちの日常をさりげなく追ってゆく。村長の決心に反対する意見ももちろん取り上げられるが、論争を紹介することが目的ではない。

村の取り組みには学校も協力する。小学校では野菜栽培の実地授業を通して、オーガニックに対する子供たちの理解を深めてゆく。育ってきたレタスの葉のサイズを定規で測ったり、葉の写生をしたり、葉を食い荒らす虫を丹念に除いたり。そして給食にオーガニック野菜を使ったサラダが出たときの子供たちの感想。誰もがその美味しさに感動するわけではない。子供らしく、ニンジンにはどうしても手をつけない子、ポテトフライのほうがいいと抵抗する子、そんな正直な子供たちのありのままを映し出してゆく。

この取り組みの成果があらわれるのは、まだ先のことだ。けれども、こういう試みが始まった→こういう紆余曲折があった→こういう結果になった、という起承転結のある物語ではないのだ。この南仏の大地の美しさと、子供たちの健康、子供を体内に育む母親となるべき女性たちの健康を保つためには、やらなくてはいけないことがあると、自然に納得させてくれるドキュメンタリーだ。

いわゆるドキュメンタリーのように、ナレーションで構成されているわけではないので、多少散漫な印象もあり、どこに焦点を絞っているのかわかりにくい面もあったが、映像が美しく、素敵な映画だった。

この映画のフランスの公式サイトで見られるポスターは、日本のポスター、チラシより遥かに明確なデザインだ。これを見ると「食物が危ない」ということが如実に伝わってくる。日本のポスターや公式サイトの作りは、少し「今はやりのオーガニック」という情緒に偏りすぎてはいないか?

映画の内容からは逸れるが、日本語の映画タイトル書体はとても趣がある。裏返しにしたような不思議な書体だ。

まったくの余談になるが、私がこれ以外のブイヨンは食べたくないと思うほど気に入っているフランスの固形ブイヨンがある。Jardin BiOというシリーズのものだ。日本で輸入しているところがないかと随分探したが、どうもないようで、知り合いがフランスに行くと聞くと、買ってきてと頼んでいる。これが奇しくも、映画の中で紹介されていた「ABマーク」(オーガニック食品認定マーク)つきのものだった。本当に美味しいので、どこか輸入してくれないものか。

映画『未来の食卓』

(2009.7.22 九段会館にて)

映画公式サイト(日本)
映画公式サイト(フランス)
posted by すいっち at 23:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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