2013年01月01日

『大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』

監督:金子文紀
原作:よしながふみ「大奥」(白泉社「MELODY」連載)
脚本:神山由美子
出演:堺雅人、菅野美穂、尾野真千子、柄本佑、要潤、桐山漣、竜星涼、満島真之介、郭智博、永江祐貴、三浦貴大、市毛良枝、榎木孝明、由紀さおり、堺正章、宮藤官九郎、西田敏行、ほか
2012年

シネコンのポイントが貯まり、1本無料鑑賞ができるようになったので、今年最後の1本として何を観ようか迷った揚げ句、これを観てきた。柴咲コウ・二宮和也主演の前作も、最近まで放送されていたテレビ連続ドラマのバージョンも観ておらず、例のごとく原作漫画も読んでいないが、豊富な広告のせいで、何となくどのような映画かは理解していた。本作は、男女逆転という荒唐無稽な基本設定さえ受け入れれば、あの堺雅人が真面目に演じている作品だし、予告編の菅野美穂が雰囲気があるし、作りも丁寧そうだし、面白いだろうとは想像していた。江戸時代でもっとも華やかな文化が花開いた元禄時代の物語であるがゆえの、画作りの絢爛豪華さも相まって、うまくラブストーリーを展開し、とても楽しめる作品に仕上がっていたと感じた。

時は元禄、将軍綱吉(菅野美穂)の時代。謎の疫病により男の生存率が激減し、大奥も男女の役割が逆転して30年経った頃の話である。大奥では激しい派閥争いが行われており、御台所でありながら綱吉との間に子のできない信平(宮藤官九郎)は、劣勢を挽回しようと、京都から公家の右衛門佐(堺雅人)を呼び寄せる。右衛門佐はその出世欲と才覚とで綱吉の歓心を得、大奥総取締という地位を手に入れる。ひとり娘の松姫を亡くした綱吉に、父の桂昌院(西田敏行)は世継ぎを作らねばと焦り、綱吉が気に入りそうな男子を次々に大奥に入れ、綱吉を子作りに専念させたにもかかわらず、いっこうに懐妊の気配は見えない。生類憐れみの令で世間から恨みを買った綱吉は、次第に孤独感を強めてゆく。もはや中年になり、生きる意味を見いだせなくなった綱吉に右衛門佐は長きにわたる思いの丈を伝えるが…

何よりも目を惹いたのが衣装の豪華さ。綱吉は衣装も髪も簪類もすばらしく豪華だ。また桂昌院の身につける袈裟もすごい。ほんのわずかなシーンのために、いったい何枚の袈裟が登場したかわからないほどだ。衣装に負けない菅野美穂の存在感はさすがである。将軍としての凛としたたたずまい、人生を諦めたときの投げやりな表情、真に愛する存在を見つけたときの満ち足りた表情、いずれも際だっていた。右衛門佐は野心家であるが、堺雅人が演じると嫌みが全然なく、少し物足りない気もする。それでも、ラブストーリーという観点からすれば、お似合いの美しい二人だ。

ストーリーは、右衛門佐の片腕である秋元(柄本佑)の回想という形でつづられていくが、語り手が誰なのかがしばらくわからなかった。もう少し秋元と右衛門佐との関係にスポットを当てる工夫が必要だったのではないかと思う。綱吉の幼い頃から片時もそばを離れずに忠誠を誓った側用人・柳沢吉保(尾野真千子)の存在は、物語のスパイスとなっていて面白かった。

設定が設定だけに突っ込みどころはいくらでもあるが、フィクションとして十分楽しめた。これをハッピーエンドと見るか、そうでないかは解釈によるだろうが、華やかさと儚さは表裏一体ということは言えるだろう。主題歌のギターソロがやたら格好いいなと思ったら、布袋寅泰だった。

(2012.12.30 ユナイテッド・シネマとしまえん にて)

映画公式サイト

-----以下はネタバレあり-----


ツッコミ点をいくつか。
誰でも疑問に思うことだろうが、女性が将軍の場合、生まれた子供の父親が誰なのか、どうして確定できるのだろう? 一回の排卵日前後はひとりの男性としか閨をともにしないのならわかるかも知れないが、映画の設定では夜な夜な男性が変わるように描かれていたから不思議だ。
右衛門佐が、綱吉を襲った男の腕を切り落とすシーンがあるが、公家の出身でそんなに刀さばきが上手いということが腑に落ちない。
吉保は綱吉を熱烈に愛していたから、綱吉が子作りのために男と寝るのは構わないが、本気で誰かを愛することを容認できなかったのだろうか。綱吉に忠誠を誓いながら結局桂昌院とは関係を続けていたわけで、それは綱吉を裏切ることにはならないのだろうか。
綱吉が、髪に白髪が混じる年齢になっても、耄碌した桂昌院がまだ綱吉が子供を産めると思い込んでいたというエピソードは、ちょっとゾッとした。わが母親も、未だに「いくつになっても子供は産めるんだから産みなさい」などとバカなことを私に言う。桂昌院も認知症だったということか。
posted by すいっち at 00:56| Comment(2) | TrackBack(1) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは、水沢です。

ラストのツッコミについていくつか原作を読んだ者からの補足を。
原作で、八代将軍吉宗がこんな意味のことを言ってるんです。
「男系であれば、いくら女性を囲い込んでもその血統には常に疑念が浮かぶ。女系であれば、その母親が生んだ子が後を継ぐのだから疑いようがない」
つまり、跡継ぎは将軍が産んだ子だというのが重要で、父親は種さえ付けられればぶっちゃけ誰でもいい、というのがあの世界のありようらしいです。
ついでに、原作で男の腕を斬ったのは秋本でした。映画では右衛門佐が常に綱吉の添い寝役として侍っているように見えるので、そのために変更されたのかも知れません。
Posted by 水沢ながる at 2013年01月02日 00:32
なるほど〜。解説ありがとうございました!
原作での吉宗の言葉は真実をついていますね。源氏物語が良い例ですものね。
秋本なのですか、それなら納得できます。
でも原作をうまく脚本化してあると水沢さんが書いていらしたので、楽しんだ私も嬉しくなりました。
Posted by すいっち at 2013年01月02日 01:08
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[映画感想]「大奥 〜永遠〜 [右衛門佐・綱吉編]」(金子文紀監督)
Excerpt:  若い男だけがかかる疫病・赤面疱瘡の蔓延により、男子の数が激減した江戸時代。男女逆転の世となった三代将軍・家光の御代から30年が経ち、時代は五代将軍・綱吉(菅野美穂)が治める元禄の世となっていた。 ..
Weblog: 流れるままに徒然に。
Tracked: 2013-01-02 00:18
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