2013年07月06日

『ベルリンファイル』

監督・脚本:リュ・スンアン
武術監督:チョン・ドゥホン
出演:ハ・ジョンウ、ハン・ソッキュ、チョン・ジヒョン、リュ・スンボム、イ・ギョンヨン、ほか
原題:베를린(ベルリン)
英題:The Berlin File
2013年韓国

ハ・ジョンウ見たさに試写会に行って来た。今年の初めに韓国で公開され、大ヒットとなった作品である。偶然か必然か、韓国映画は宣伝文句や前評判に惹かれて観に行って、期待を裏切られることがほとんどない。俳優の知名度が高い日本映画と異なり、いくら韓国で実力派俳優と評価が確定している人たちが出演していても、一部ファンを除いて、俳優で客が呼べるとは限らないために、本当に面白い映画を紹介しなくてはという配給会社の必死さの賜物ではないかという気もする。もちろん、日本映画の配給会社がぬくぬくとしていると言うつもりはないが、日本映画の場合は宣伝文句や口コミなどを信じて観に行くと、自分にとって当たり外れが五分五分といったところなのも事実なのだ。

ベルリンを舞台に、韓国・北朝鮮・ロシア・アラブ・CIAが入り乱れてのスパイアクションということで、人物関係の複雑さについていけるかどうかやや心配があったため、公式サイトの人物相関図だけ頭にたたき込んで試写に臨んだ。けれども、心配は杞憂に終わった。確かに複雑ではあるものの、人物関係は無理なくほどよく整理され、誰が敵か味方かわからない波瀾万丈の物語にもかかわらず、核がぶれることはなかった。

北朝鮮秘密諜報員ジョンソン(ハ・ジョンウ)は、その経歴の不明さから韓国側からは“ゴースト”と呼ばれている男。ジョンソンはベルリンでアラブ組織との武器取引をおこなうが、その情報が南側に漏れ、取引成立寸前に韓国国家情報員ジンス(ハン・ソッキュ)に捕らえられそうになり、すんでのところで逃げおおせる。しかしなぜトップシークレットであるこの取引情報が南に漏れたのか。新たにベルリンに送り込まれてきた北朝鮮保安観察員ミョンス(リュ・スンボム)の証言によれば、なんとジョンソンの妻、ジョンヒ(チョン・ジヒョン)に二重スパイの容疑がかけられているという。国家への忠誠心と妻への愛情と疑念の間で苦悩するジョンソン。だが、彼自身も実は大きな陰謀の渦に巻き込まれているのだった。

東西冷戦の象徴であるベルリンでロケが行われたということが、この作品に与えたものは大きかっただろう。ベルリンの町並みをバックにしたストーリー展開は、オープニングの洒落た映像処理とともに、韓国映画という範疇に収まりきれないスケール感とスタイリッシュ感を生み出している。人物にしても、ジョンソンの上司であるベルリン駐在北朝鮮大使のリ・ハクス(イ・ギョンヨン)のコート姿はイギリスのスパイ映画に出てもおかしくないような渋い格好良さだ。

実力派キャストが集まっただけのことはある。ハ・ジョンウは予想通り役になりきっていて、北の諜報員でありながら一匹狼のテイストを併せ持つジョンソンという男を的確に演じている。彼のアクションの生々しさは独特だ。型にはまった決めポーズの綺麗なアクションというのではなく、本当に戦っていると錯覚させる迫力がある。韓国映画はいつもアクションシーンが素晴らしい。印象に残ったのは、ちょっと得体の知れない存在のミョンスを演じるリュ・スンボム。例えばフランスのヴァンサン・カッセルや、日本の香川照之が醸し出すような、癖のある嫌らしさを表現できる俳優さんだと思った。そして、チョン・ジヒョンの清楚な色気にも感激。韓国の女優さんはほとんど知らないので、あとで調べたところ、アジエンスのCMに出ていた方だとか。そのCMは記憶にあるが、今作ではガラッとイメージが異なる。

韓国映画でありながら、単純に北を悪者にして南が正義であるという描き方をしていないところが非常に面白かった。誰が騙しているのか、裏切ったのは誰か、最後まで手に汗握る展開で飽きさせないが、個人的には格闘のアクションはもっと少なくてもよかったのではないかと思う。アクションに頼らなくても十分見応えのある脚本だと思えるからである。スパイアクション面ばかり強調されているが、切ない人間模様もきちんと配し、そのバランスが優れていたように思う。

(2013.7.4 なかのZERO大ホールにて)

映画公式サイト
posted by すいっち at 02:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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