2013年09月06日

『黒いスーツを着た男』

監督・脚本:カトリーヌ・コルシニ
出演:ラファエル・ペルソナ、クロチルド・エム、アルタ・ドブロシ、レダ・カテブ、アルバン・オマール、ほか
原題:TROIS MONDES
2012年フランス=モルドヴァ

「アラン・ドロンの再来」とフランスで絶賛されたラファエル・ペルソナ主演の作品である。彼の画像を見て、本当に若かりし頃のドロンに目元がそっくり!と思い、内容も面白そうなので、観に行って来た。後で情報を見て、女性の監督さんだったんだ!と驚くくらい芯のしっかりした作品で、クライム・サスペンスと言いながら、心理描写が細やかで、とても面白かった。

日本の報道では、Raphaël Personnazの名前は、カタカナでは“ラファエル・ペルソナ”とも“ラファエル・ペルソナーズ”とも表記され、映画公式サイトでも表記が統一されていない。それで、彼のフランスでのインタビュー映像を探してみたところ、インタビュアーが彼を「ラファエル・ペルソナーズ」と紹介し、本人もそれに頷いているものを見つけた。ということは、ペルソナーズが正しいのだろう。
参考:INTERVIEW : Raphael Personnaz et Victoire Belezy MARIUS et FANNY(Youtube)

【追記】
記事を書いたあとに、「ラファエル・ペルソナ」が正しい読み方だとご本人が配給会社に伝えたということをお知らせいただいた。参考記事を教えてくださったので、映画公式サイトの6月のNEWSにその旨記載されていることもわかった。公式サイトは現在「ペルソナ」に訂正されているが、唯一予告篇中の表記だけはさすがに修正できなかったようだ。私の持っている映画チラシ2種は、「ペルソナ」のものと「ペルソナーズ」のものと両方ある。ヨーロッパの人は、自分の名前を間違って発音されてもあまり気にしない人も多いので、インタビューではわざわざ指摘しなかったのかも知れない。


貧しい家庭に生まれながら、長年真面目に働いて実績を積んだアル(ラファエル・ペルソナ)は、社長令嬢との結婚を10日後に控え、将来を約束されている。会社の友人たちとバカ騒ぎをしたある夜、アルが運転する車が、誤って男性を轢いてしまう。友人たちにせき立てられるままに、現場から逃げ出したアルだったが、事故の模様は、現場の通りを隔てたアパルトマンに住むジュリエット(クロチルド・エム)に目撃されていた。手一杯の病院スタッフの代わりにジュリエットは被害者の妻ヴェラ(アルタ・ドブロシ)に連絡を取るが、被害者はモルドヴァからの不法就労者だった。被害者の容態が知りたくていてもたってもいられないアルは、翌日そっと病院を訪れるが、その姿をジュリエットに見られてしまう。暗かったためにひき逃げ犯の顔はわからなかったジュリエットだが、アルを見て直感的に怪しいと思い、彼のあとをつける。

原題の"TROIS MONDES"というのは「3つの世界」という意味だ。この「世界」は「階級」のニュアンスも持つ言葉なので、ジュリエットに代表される中産階級と、アル自身の出身である貧しい階層(父親はいないらしく、母親は掃除婦をしていたと語られる)、そしてモルドヴァ出身の不法労働者というフランスから見た最下層、この3者を表現したタイトルなのかなと思う。邦題の「黒いスーツを着た男」は、ペルソナだけに焦点を絞ったようなタイトルで、映画の本質はとらえていない。フランス版のポスター日本版のポスターを比べてみると、狙いの違いがよくわかる。

フランスメディアが絶賛するキャスティングは確かに素晴らしい。まずラファエル・ペルソナ。まさに『太陽がいっぱい』で、貧しい生まれの野心家の若者を演じたの頃のアラン・ドロンを彷彿させる寂しげで危うい目つきと、スリムな肢体、綺麗な身のこなしで、しかも演技力もあり、文句のつけようがない。ジュリエット役のクロチルド・エムとヴェラ役のアルタ・ドブロシも、繊細な感情をの動きを的確に演じられる実力派だ。

サスペンスにしては、ストーリーはさほどハードではなく、大どんでん返しを期待する向きには不満かもしれないが、主要登場人物それぞれが、自らを偽るか、さらけ出すかの瀬戸際に立ち苦悩する様は心理サスペンスとして十分見応えがあった。

(2013.9.5 ヒューマントラストシネマ渋谷にて)

映画公式サイト


以下ネタバレあり


ストーリーで興味を惹かれたのが、臓器提供の話だ。ヴェラがモルドヴァでは腎臓はいくら、角膜はいくら…という話をする。モルドヴァという国はヨーロッパで最も貧しい国と言われ、臓器売買も行われているという話を読んだことがある。そのあたりを踏まえておかないと、ストーリーの深みが伝わらないのではないだろうか。映画公式サイトはもうちょっと親切に背景などを説明してほしいものだ。
posted by すいっち at 13:23| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。
「フランス映画祭2013」で来日の際、本人が名前について配給会社さんに「ラファエル・ペルソナ」が正しいと伝えたようですよ。
ご参考までにどうぞ。

https://twitter.com/ceteramovie/statuses/348499450433523712

http://kurosuits.tumblr.com/post/53726287667
Posted by 通りすがり at 2013年09月10日 19:17
>通りすがりさん

そうだったんですね!お知らせいただき、本当にありがとうございました。予告篇まで直すことは出来なかったようで、こちらも迷いました。
日本のみならず、あちこちで読み方が間違われているのですね。
Posted by すいっち at 2013年09月10日 20:26
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