2013年10月04日

『危険なプロット』試写会

監督・脚本:フランソワ・オゾン
原作:フアン・マヨルガ「The Boy in the Last Row」
出演:ファブリス・ルキーニ、クリスティン・スコット・トーマス、エマニュエル・セニエ、ドゥニ・メノーシュ、エルンスト・ウンハウワー、ほか
原題:Dans la maison
2012年フランス

あらすじを読んだだけで、観たい!と思って試写会に応募したところ、幸い当たって観て来た。作品もキャストも高評価を受けていて期待が持てたが、実際に素晴らしく面白かったので大満足。「知的サスペンス」という触れ込みだが、ユーモアもたっぷりで、フランス映画としては私の好きなタイプの作品だ。

ジェルマン(ファブリス・ルキーニ)はリセ(高校)の国語教師。若い頃は作家になる夢があったが、今は文章力のない生徒たちの作文添削にうんざりする毎日を送っている。新学期を迎えたばかりのある日、生徒の作文の中に気になるものを見つける。クロード(エルンスト・ウンハウワー)が書いたもので、クラスメイトの家族の話を鋭い観察力と繊細な描写で綴った作文である。文章力も、他の生徒に抜きんでている。クロードの才能を感じ取ったジェルマンは、放課後に彼の個人教授を始め、小説の書き方を指導してゆく。クラスメイトの美しい母親(エマニュエル・セニエ)を作文に登場させ、家の中を覗き見し、毎回「続く…」という但し書きをつけて作文をどんどん提出してくるクロード。いつしか、ジェルマンはその物語に囚われて行き、自身の生活の歯車も狂って行く。

フランスの生徒たちが決まって使う青い細い罫線の用紙を使った洒落たオープニング。教師ジェルマン対生徒クロード、ほとんどストーリーはこの二人の対峙で進んでゆく。青いインクのボールペンで書かれた作文にフランスらしさが感じられる。フランス人はだいたい青いボールペンで書くことが多く、黒いボールペンはあまり見たことがない。ジェルマンは、様々な文学作品(フロベール、ドストエフスキー…)をダニエルに読ませ、文章の書き方を指導してゆく。しかし作文はジェルマンがアドバイスした以上の挑戦的ともいえる展開を見せるようになり、二人の間にあった共犯のような精神的関係が、だんだん熱を帯びた戦いのようなものに変質してゆく。その過程がスリリングだ。ジェルマンも観客も、クロードの小説の続きを読みたくてたまらなくなる。

大注目のエルンスト・ウンハウワーは、端正な顔立ちとその危険をはらんだ眼差しで、クロードを実に魅力的に演じている。底意があるわけではない高校生に自ら翻弄されてゆくジェルマンを演じるファブリス・ルキーニも、当然のことながら素晴らしい。私は『潜水服は蝶の夢を見る』で好演だったエマニュエル・セニエが今回もとても良かったと思う。さりげなさの中に色気のある女性を素敵に演じている。ジェルマンの妻を演じるクリスティン・スコット・トーマスは物語のユーモラスな部分を受け持っていて面白い。

原題の≪Dans la maison≫は「家の中で」という意味で、これは実際に映画を観ると、どういうことなのかがわかる。「危険なプロット」という邦題は、考え抜いた結果なのだろうが、むしろ異なる方向に誘導してしまうのではないかと気になった。

何度も繰り返される≪à suivre≫(「続く」)の台詞が耳に残る。

(2013.10.2 東商ホールにて)

映画公式サイト

以下ネタバレあり




クロードは何回も転校を重ねた経験があると、確か学校の書類に書かれていたが、転校経験と彼の資質は関係あるのだろうか。例えば、どの学校でも同じようなことをしたために(教師の人生を狂わせたか、あるいは覗き見のために友人の家庭と悶着を起こしたか)転校を余儀なくされたのかも知れないと思った。もちろん、この映画でその経緯まで描いて欲しいわけではなく、ミステリアスなままで十分だ。
posted by すいっち at 22:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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