2013年10月15日

『地獄でなぜ悪い』

監督・脚本・音楽:園子温
出演:國村隼、長谷川博己、星野源、二階堂ふみ、友近、堤真一、坂口拓、成海璃子、ミッキー・カーチス、ほか
英題:WHY DON'T YOU PLAY IN HELL?
2012年

散発的にこの作品の情報には接していて、園子温監督作品だし、二階堂ふみが出ているし、長谷川博己が撮影時にテンションを高めるのに苦労したという話をどこかで聞いたし、トロント映画祭ではミッドナイト・マッドネス部門で観客賞に輝いたそうだし、面白そうだとは思っていた。いや、これは本当に面白かった。アクション活劇だそうだが、任侠アクションコメディー+青春映画とでも言おうか、ありきたりのジャンルの枠内に収まらない、とにかく元気いっぱいの疾走感溢れる映画であった。

ヤクザの組長・武藤(國村隼)は、獄中の妻しずえ(友近)の夢が娘のミツコ(二階堂ふみ)を大女優にすることなので、しずえの出所を間近に控え、なんとか主演映画に出させてやりたいと考える。ところが、主演が決まっていた撮影現場から、ミツコは彼氏の元へ逃げ出してしまう。ミツコが見つからないため、監督にも愛想をつかされ、映画は別の女優を主演に立てて撮影されることになった。焦った武藤はミツコとその男・公次(星野源)を捉まえ、こうなったら自分たちで映画を撮り、ミツコを主演に立てて、しずえの出所に間に合わせようとする。だが、公次はたまたまミツコに出くわしただけの、何の関係もない青年。しかし勘違いした武藤に、ミツコも公次は彼氏であり、映画監督だと嘘を言う。一方、高校時代から映画監督の夢を捨てずに30歳近くになってしまった平田(長谷川博己)は、仲間たちと細々と自主製作映画を撮っている男だ。平田はいつか映画の神様が微笑んでくれると信じて疑わない。たまたま公次は平田と出会い、彼に映画を撮ってくれと頼む。夢が叶ったと狂喜する平田は、武藤組が対立する組織の組長・池上(堤真一)のところへ殴り込みをかけるのをそのまま映画に撮る計画を立てる。平田の盟友のカメラマン二人と、ヤクザたちがスタッフを務める撮影がいよいよ始まる。

すべてがオーバーなのだが、究極のハイテンションのまま、ハイスピードで展開する物語は、爽快以外の何物でもない。ヤクザが撮影助手、照明、俳優を務める撮影風景が、圧巻だ。心ならずも巻き込まれた公次はミツコに心惹かれてゆき、池上はミツコが幼いころから思いを寄せているために、人間関係も一筋縄ではいかない複雑さを見せる。対立する2つの組が入り乱れての撮影現場は、これをよく更に撮影したと感心するほどの迫力だ。

最初から最後まで大笑いして観ていたような気がする。スプラッターさえ、なんだか可愛く見えてくる。堤真一のミツコを見つめるとろけそうな表情は特筆ものだ。また、大河ドラマ「八重の桜」での尚之助のイメージで長谷川博己を知っている人は、そのとんでもないテンションにビックリするだろう。機関銃のように映画論をぶちかまし、鬼気迫る雰囲気でカメラを回す役どころが、これまたぴったりなのだ。二階堂ふみは恐ろしいまでの安定感がある。ハチャメチャな大人たちの中にあって、色気さえ感じさせるヤクザの娘をクールに演じている。

平田たちの高校時代と現在とでは、もちろん演じる俳優は異なっているのだが、どの役柄も大人になったときの俳優に違和感がないのに驚く。決して顔が似ているなどということではなく、キャラクターをきちっと作っていて、少年や少女たちの時代も疎かにしていないということだ。個人的には手持ちカメラを得意とする女性カメラマン役の人がたいへん気に入ったのだが、検索してみても名前がわからなかった。残念。

「全力歯ぎしりレッツゴー♪ギリギリ歯ぎしりレッツフライ♪ 」という歌が妙に頭に残り、映画自体も癖になりそうな魅力があった。しかし園監督、走らせるの好きだなあ!

(2013.10.13 池袋HUMAXシネマズにて)

映画公式サイト
posted by すいっち at 20:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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