2013年12月19日

『鑑定士と顔のない依頼人』

監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス、シルヴィア・ホークス、ドナルド・サザーランド、ほか
原題:La migliore offerta (The Best Offer)
2013年イタリア

かなり前評判の高いこの作品を、公開3日目に観て来た。急に思い立ったので、朝オンラインで午後の回上映のチケットを買ったが、ほとんどすでに満席で、前の方がほんのちょっとしか残っていない盛況ぶり。オンラインでチケットを買おうとして、こんなに混んでいたことは一度もないので、いくら日曜でも、こればびっくり。だが、東京では2館でしか公開していないので、混雑するのも当然だろう。評判通り、なかなか面白い作品だった。私はミステリーの筋立てより、これでもかというほど登場してくる美術品の数々や、主人公の伊達な服装や、豪華な邸宅など、ディテールが心地よく、さすがイタリア映画だなと思わせてくれるところに、この映画の魅力を感じた。イタリア映画なのに、台詞がすべて英語だったのが少し残念ではあったが。

ヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)は、超一流のオークション鑑定士。その鑑定眼は折り紙付きだ。そんな彼に、ある依頼が舞い込んでくる。亡くなった親の残した屋敷の家具や美術品を処分したいので査定を頼みたいという若い女性からの、比較的ありふれた内容である。ところが依頼人は、様々な口実を設けては、ヴァージルとの会う約束をことごとく反故にしてしまい、決してヴァージルの前に顔を見せない。腹を立てたヴァージルは何度も依頼を断ろうとするが、屋敷の地下に、大変な価値を持つ可能性のある部品の一部を見つけ、手を引けなくなる。ヴァージルは姿を見せない依頼人を一目見てやろうと、ある日物陰に隠れて彼女を盗み見、その美しさに惚れ込んでしまう。ところが、やがて女は忽然と姿を消す。彼女はなぜ姿を見せようとしないのか、査定の本当の目的は何なのか、地下で見つかった部品は何なのか、すべてが謎のまま、話はクライマックスへと進んでゆく。

とにかく道具立てが贅沢で、これが本当に楽しめる。壁を埋め尽くす名画の数々、美術品の鑑定の面白さ、オークションの息詰まる攻防。それとはまったく別に、ポイントポイントで登場する周囲の人々の配し具合も絶妙だ。依頼人の屋敷の向かいにあるカフェの常連客のひとり、数字の記憶に驚異的な才能を見せる女性(キルナ・スタメル)が印象に残る。彼女が機関銃のように数字を並べ立てるその声が、不可思議な音楽のように聞こえてくる。オークションの影の相棒ビリー(ドナルド・サザーランド)や、ヴァージルの若き知人である美術品修復家ロバート(ジム・スタージェス)、ヴァージルの秘書役の男性も忘れがたい。けれども、何と言ってもジェフリー・ラッシュだ。ほとんどすべてのシーンに登場し、人嫌いで頑固な美術品愛好家としてのヴァージル像を存分に見せてくれたかと思うと、クライマックスではがらっと変貌した姿であらわれる。トルナトーレ監督は、オファー前からジェフリー・ラッシュに当て書きしたそうで、役との見事なまでの一体化ぶりには感銘を受けた。モリコーネの音楽も素晴らしい。ただ、ミステリーとしては、伏線がはっきりしすぎていて、ちょっと物足りない気もした。

(2013.12.15 TOHOシネマズシャンテにて)

映画公式サイト



以下ネタバレあり




依頼人クレア(シルヴィア・ホークス)が登場した時点で、これは変だと思った。何年間も外に出たことがなく、人とも一切会わないという設定の女にしては、健康的に見えるし、ヘアスタイルだって、美容師に切ってもらうのでなければ、あのような状態にはならないと思えるし、膝から下の足は案外筋肉質だし、ヴァージルは彼女の美しさに目が眩んだかも知れないが、私はこれはまやかしではないかと思ったのだ。それが監督の意図なのか、そうでなかったのかはわからない。ロバートにしても、かなり歳のいったヴァージルを、あんな風に焚きつけるだろうかと、こちらも眉唾かも知れないと思えた。従って、ストーリーのどんでん返しは、さほど意外には思えなかった。ただし、何が目的でヴァージルを騙したのかまでは想像がつかなかったので、そこは面白かったと言える。
posted by すいっち at 00:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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