2014年01月02日

『永遠の0』

監督・VFX:山崎貴
原作:百田尚樹『永遠の0』(太田出版)
脚本:山崎貴/林民夫
出演:岡田准一、三浦春馬、井上真央、濱田岳、新井浩文、染谷将太、三浦貴大、上田竜也、吹石一恵、田中泯、山本學、風吹ジュン、平幹二朗、橋爪功、夏八木勲、ほか
2013年

元日に映画を観に行くのは初めてのことだ。最近はテレビはどこもお笑いばかりなので、あまり見る気がしない。暮れに観ようと思っていて観そびれた映画が何本かあったので、それなら出かけてみようかと近場のシネコンへ行った。原作は読んでいないが、映画はとても評判がよく、今日も客席は満席に近い。戦争ものだけれども、若手人気俳優を多く起用したことで、若い層の観客がかなり多かった。

とても良い映画だったと思う。私の中でのいつもの基準に照らせば、やはり非常にバランスの取れた作品だったと言える。脚本に無理がないし、現代と戦争中の時間の行き来も自然。多くの人物設定もわかりやすい(これは、実力のある有名な俳優さんたちが多かったからかも知れないが)。そして、全編を貫くテーマが「愛」なので、どんな年代の人にも共感を呼び起こすことのできる作品だということが一番のヒットの原因かも知れない。

佐伯健太郎(三浦春馬)は司法試験浪人中で、ブラブラと日々を送っていたが、祖母・松乃の葬儀の際に、意外な事実を知ることになる。祖父の賢一郎(夏八木勲)と自分は実は血の繋がりがなく、血縁上の祖父は、祖母の最初の結婚相手、宮部久蔵(岡田准一)だったのだ。宮部は太平洋戦争時の零戦パイロットであり、終戦直前に特攻出撃により散った人だった。健太郎は姉の慶子(吹石一恵)とともに祖父のことを調べ始めたが、宮部と繋がりがあった生存者に話を聞きに行くと、彼らは口を揃えて「宮部は海軍一の臆病者」と評するのだった。零戦パイロットとして抜群の腕を持ちながら、宮部は乱戦になると一番に離脱し、生還することにこだわったと言う。生きて妻と娘の元へ帰るというのが、宮部の最大の関心事だったのだ。調べを進めてゆくうちに、健太郎たちは鍵を握る人物に出会う。本当に宮部は臆病者だったのか、それならなぜ彼は特攻に志願したのか、徐々に驚くべき事実が明らかになってゆく。

特攻の話は今までにたくさん聞いてきたが、死地に赴く人々の心理を本作ではうまい処理の仕方で描いていたと思う。実際に散った人と生還した人の間には、とてつもない隔たりがあるという台詞があったが、確かに亡くなった人の最期の思いは知りようもない。けれども、それを踏まえた上で、変に美化したりせずに、わからないことはわからない、彼らの思いはいかなるものだったかを、現代の我々が考えることこそが重要なのだと伝えているスタンスのように思えた。

現代の若者が、特攻を自爆テロと同じものだと考えているとシーンは印象的だった。一瞬驚いたが、確かにそういう認識しかなくても仕方ないのだろうと納得は出来た。現代人と60年前に若者だった人とが、国・天皇・戦争といったものに対して共通認識を持てるはずもない。それでも幸い人間は想像力というものを持っている。健太郎が実祖父の思いにだんだん近づいていけたように、我々も想像力を働かせれば、わずかなりとも昔の人の考え方に触れることができるだろう。肯定せよというのではない。歴史が積み重なって今があるという単純なことを忘れないでいたいと思うのだ。

夏八木勲の演技を万感の思いで見た。彼がスクリーン上で生きている、それだけで涙が出そうだった。元特攻隊員・景浦を演じた田中泯の迫力も凄かった。若き日の景浦を演じた新井浩文、井崎隊員を演じた濱田岳もよかった。大石隊員を演じた染谷将太が童顔なので、後半になってからのシーンでやや違和感があったが、演技には文句はない。ひとりの特攻隊員の話でさえ、これだけのドラマが生まれるのだから、実際の戦争時にはどれだけの数のドラマがあったのだろうと思うと気が遠くなるほどだ。ただ、物語を「愛」に昇華させなければ、もはや現代人には戦争は語れないのかなと、複雑な思いも残った。

(2014.1.1 ユナイテッド・シネマとしまえん にて)

映画公式サイト


以下ネタバレあり





誰が健太郎の戸籍上の祖父であるという種明かしは最後になされるが、そういえば賢一郎の姓が伏せられているのはこのためだったかと、後で気づいた。宮部の教え子たちは、それぞれの立場で宮部の最後の願いを受け継いだのだ。松乃が危ない目にあったときに誰が助けてくれたか…そうだったのかと、じーんと来る。健太郎たちにもわかったのではないかと思うが、それは語られない。原作でもその辺は曖昧にされているのだろうか。原作を読んでみたくなった。
posted by すいっち at 09:23| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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映画「永遠の0」特攻隊と自爆テロの違いなんて、どーでも良い
Excerpt: 映画「永遠の0」★★★★ 岡田准一、三浦春馬、井上真央、 濱田岳、新井浩文、染谷将太 、 三浦貴大、上田竜也、吹石一恵、 田中泯、山本學、風吹ジュン、 平幹二朗、橋爪功、夏八木勲出演 山崎貴 監督 ..
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