2014年01月04日

『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』

監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:トム・セドルストン、ティルダ・スウィントン、ミア・ワシコウスカ、ジョン・ハート、ほか
原題:ONLY LOVERS LEFT ALIVE
2013年米・英・独

年末に観に行こうと思っていたのが遅くなり、今日ようやく観に行くことが出来たが、期待通り、知的でユーモアがありロマンティックでエロティックで、孤独感が切なくて、大変面白かった。

アダム(トム・セドルストン)はアメリカのデトロイトに住み、謎のカリスマ・ミュージシャンという顔を持ち、音楽をこよなく愛する吸血鬼。イヴ(ティルダ・スウィントン)はアダムの恋人の吸血鬼だが、遠く離れたモロッコのタンジールに住んでいる。2人は何世紀も前から愛し合ってきた。彼らは決して質の悪い血を飲もうとはせず、特殊なルートで上物の血を手に入れている。アダムが近頃の人間たちの所業に嫌悪感を抱き、鬱々とした日々を送っていることを知り、イヴは久々に彼の元を訪れることに決める。2人だけの穏やかな日々も束の間、突然イヴの妹エヴァがあらわれ、その奔放さで2人の周囲に波風を立てる。中世から延々と生きながらえてきた吸血鬼の彼らにとっても、この21世紀は決して生き易い時代ではなく、彼らの運命は少しずつ変わってゆく。

まず独特のカメラワークに目を奪われる。アナログレコードの回転を真上からとらえ、それと同じアングルで、デトロイトのアダムとタンジールのイヴの姿が描写される。このアングルはその後も通底音のように何度も繰り返される。吸血鬼が活動するのは日暮れからなので、すべてのシーンが暗いが、部屋の中の暗さ、街路の暗さ、街道の暗さ、それらには微妙な違いがあり、照明の技術が素晴らしいと感じた。小道具も非常に楽しい。イヴが旅行の荷造りの際に選ぶ本の数々が興味深い。彼女が本のページを撫でる仕草は、彼女のある能力を端的にあらわしたものだ。一方音楽好きをもうならせるアダム所有の楽器。吸血鬼と関係なさそうなこれらの細かい道具立てが、現代に吸血鬼が生きているという荒唐無稽さを忘れさせてくれるリアリティーを構築している。

ティルダ・スウィントンは、その現実感のない気品と美しさで、素晴らしい吸血鬼を演じている。トム・セドルストンも悩める青年吸血鬼の雰囲気たっぷりだ。彼らのおかげで、吸血鬼がパソコンやスマートフォンを扱ったり、航空機で移動したりしても、何の違和感も感じない。無類に格好良い音楽とともに、すっかりジャームッシュ・ワールドに嵌まってしまうのだ。どのシーンも綿密に計算された美しさがあり、まったく飽きることがなかった。2度観れば、また新たな仕掛けに気づくのではないかと思う。革の手袋とサングラスがとても印象的。

(2014.1.4 TOHOシネマズ シャンテにて)

映画公式サイト

以下ネタバレあり




日本語の本が登場するので目を凝らしたが、タイトルが読み取れなくて残念だ。イヴは手でページを撫でただけで、内容を理解しているようだったから、これがレス・ポールの年代を鑑定したことに繋がるのだろう。目利きならぬ手利きというところか。

アダムが作らせた木製の弾は、自殺用だったのだろうか。おそらく彼は鬱状態で、自殺まで考えていたのではないかという気がした。昔からの伝承で、吸血鬼は心臓に杭を打ち込めば殺せると言われているので、杭代わりに木製の弾なのだろうと推測している。
posted by すいっち at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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