2014年03月08日

『ダラス・バイヤーズクラブ』

監督:ジャン=マルク・ヴァレ
脚本:クレイグ・ボーテン、ミリッサ・ウォーラック
出演:マシュー・マコノヒー、ジャレッド・レト、ジェニファー・ガーナー、ほか
原題:Dallas Buyers Club
2013年アメリカ

観なくちゃと思っているうちに、アカデミー賞で主演男優賞、助演男優賞、メイク・ヘアスタイリング賞3部門授賞というニュースが飛び込んできた。そのせいもあっただろう、平日用事を済ませてから行ったときは、もう数席しか残っておらず、一番前列しか選べなかった。ところが、初めての劇場シネマカリテは最前列でも極めて観やすく、むしろ足が伸ばせて快適だった。

見終わって、これは文句なくオスカーに値する作品だという思いを強くした。役柄に備えて過酷なダイエットをしたことが話題になったマシュー・マコノヒーとジャレッド・レトは、そんなニュースを知らなかったとしても賞賛されるべき演技だったと思う。脚本も素晴らしかった。

80年代のダラス。ロン・ウッドルーフ(マシュー・マコノヒー)は、女と酒そしてロデオに明け暮れる男。しばらく前から気になる咳をしていたが、ある日突然倒れてしまう。運ばれた病院で告げられたのは、ロンがHIV陽性でエイズを発症しており、余命は30日という驚愕の医師の言葉。エイズといえば同性愛者だけがかかる病気と思われていた当時、ロンはゲイでもないのにあり得ないと、医者の言葉をすぐには信じない。それでも、勉強とは縁遠かったロンだが、図書館に通ってエイズに関する論文や新聞記事などを読みあさり、世界中で開発されている新薬の情報などを仕入れる。そして主治医イブ(ジェニファー・ガーナー)に未承認のAZTという新薬を処方してほしいと告げる。だが医師はそんなことはできない。ロンは国外から未承認薬を仕入れ、それを自分が服用するだけでなく、金儲けのために売りさばこうと考えるが、ゲイに嫌悪感を持つロンは、需要の多いゲイたちに販路を広げることができず、病院で知り合った美しいトランスジェンダーのレイヨンを仲間に引き入れることにする。一方、AZTには大きな副作用があるのに、製薬会社と医師との癒着により国内で使用が推奨され始める。AZTの危険性を知らされたロンは、安全な代替薬を世界中から仕入れ、それをさばくシステムを考え出した。それがダラス・バイヤーズクラブである。このクラブは会費制で、会員には無料で必要な薬を配るというものだ。しかしそこに司法の壁が立ちはだかる。安全な薬を自由に飲める権利を獲得するために、やがてロンは国とも闘うことになる。

教養もなく直情径行で、ちゃらんぽらんの生活を送っていたロンだが、エイズだと知らされても、心を入れ替えるどころか、そのノリのまま突っ走る。その彼の生き方は爽快以外の何ものでもない。点滴の袋をぶら下げながら車で走り回ったり、クラブの仕事をしたり、滑稽さは漂っても、悲壮感はまったくない。その奔放さ、(ある意味での)正直さゆえに、言いようのない温かさが奇跡のように訪れる。本当に不思議な魅力のある映画だ。ジャレッド・レトの美しさも特筆に値する。とりわけ念入りなメイクを施した目元の横からの映像はほれぼれする。いかにもやぼったい女性医師を演ずるジェニファー・ガーナーもよかったし、キャスティングは大満足である。

国を相手に闘うと言っても、本来の自分を失わず、やんちゃなままのロン像は本当に魅力的だった。正義を振りかざす嫌らしさと紙一重とところに巧みにキャラクターをおさめている脚本にも賞賛を送りたい。

(2014.3.5 新宿シネマカリテにて)

映画公式サイト
posted by すいっち at 12:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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