2014年08月12日

『超高速!参勤交代』

監督:本木克英
脚本:土橋章宏(講談社「超高速!参勤交代」)
出演:佐々木蔵之介、深田恭子、伊原剛志、寺脇康文、上地雄輔、知念侑李(Hey! Say! JUMP)、柄本時生、六角精児、市川猿乃助、石橋蓮司、陣内孝則(特別出演)、西村雅彦、ほか
2014年

ロングランのおかげで、公開から8週間目に入っても観に行くことができた。他愛なさそうに見えて、うまく勘所を押さえた本当に楽しい映画だったので、人気の理由もわかろうというものだ。

八代将軍吉宗の時代、磐城の国。弱小藩である湯長谷藩(ゆながやはん/現在の福島県いわき市)の藩主・内藤政醇(まさあつ/佐々木蔵之介)以下藩士たちは、1年におよぶ江戸への参勤から故郷へ戻ってきたばかりであった。やれやれとくつろいでいた政醇の元に、江戸からとんでもない命令が届く。湯長谷藩の金の産出に関して虚偽の報告がなされているふしがあるため、5日のうちに江戸に参勤して釈明せよというお上からのお達しだ。もちろん偽りの報告などしていない。もともと財政が逼迫しているなか、金のかかる参勤交代を済ませたばかりで、すぐに再び参勤を行う蓄えなどあるはずもない。しかも通常10日はかかる江戸までの道のりを5日でという無理難題。これは、無理矢理湯長谷藩を取り潰して私腹を肥やそうと目論見む幕府の老中・松平信祝(のぶとき/陣内孝則)の陰謀によるものであった。参勤交代に必要な大名行列を仕立てる金もなく、人もなく、何より時間がない。重臣会議でも誰も打開策を見いだせないまま、むなしい議論が続く。そこに藩主・政醇の一声「5日のうぢに江戸へ行ぐ!」小藩と侮られることに磐城魂が爆発したのだ。彼らはどのような方法で江戸まで駆けつけるのか、湯長谷藩の命運はどうなる?

藩随一の知恵者・家老の相馬兼嗣(西村雅彦)を筆頭に、江戸を目指して走る藩士たちはいずれも個性豊かな人物で、彼ら一人一人の活躍がストーリーを肉付けしている。もっとも腕の立つ荒木源八郎(寺脇康文)は藩士のリーダー的存在。秋山平吾(上地雄輔)は、沈着冷静で判断力に長けた男。鈴木吉之丞(よしのすけ/知念侑李)はもっとも若い弓の名手だが高所恐怖症。増田弘忠(柄本時生)は二刀流を操る身体能力の高い男で、動物好き。今村清右衛門(六角精児)は槍の名手だが太めのため走るのが苦手。彼らのトップに君臨するのが、お人好しで領民思いだが、自身も居合の名手の政醇である。言ってみれば、小規模群像劇のような構成なのだが、彼らひとりひとりの特徴が過不足なく描かれている。各人の長所・短所が両方とも描かれるため、誰かが突出してスーパーマン役を果たすわけではない。私は相馬兼嗣の人物像がもっとも気に入った。追い詰められると渋い顔をしながらも必ずアイディアを絞り出してくれる頼れる存在。しかも、理論だけでなく実践することも厭わない。お茶目なところもある。私の見たことのある西村雅彦の役の中でもトップクラスの魅力的な人物だ。個性的な他の藩士たちも、戦いの場面では実に勇猛で格好良い。コメディーだからといって、アクションも全然手を抜いていない。

コメディーだけれども、笑わせようとするあざとい仕掛けがなく、みんなが真面目に行動しているからこその可笑しさがあって、それが気持ちよいのだ。そして、江戸を目指してひたすら走る行為に象徴されるように、展開にスピード感がある。鍵を握る抜け忍・霧隠段蔵(伊原剛志)や偶然政醇と知り合う遊女・お咲(深田恭子)の存在や、松平信祝の悪辣ぶりなどはかなりベタだと思うが、話に花を添えるという程度の抑え方がなされているので、そう気にならない。やはり脚本が相当優れている証拠だろう。土橋章宏はこの「超高速!参勤交代」の脚本で、2011年に第37回城戸賞を審査員オール満点で授賞した人なのだ。つまり脚本が先にあって映画化は後から決定したということらしい。やはりしっかりした脚本があると、映画は面白くなると言う当たり前のことを再認識させられた映画でもあった。

(2014.8.11 池袋シネマ・ロサにて)

映画公式サイト
posted by すいっち at 11:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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