2013年06月16日

舞台『断色−danjiki−』

作/青木豪
演出/いのうえひでのり
出演/堤真一、麻生久美子、田中哲司

ヴィレッヂ・プロデュース2013

danjiki.jpgたまたま2週連続で舞台鑑賞。数年に一度しか舞台を見ない者としては異例のことであるが、出演者の顔ぶれを知って、ほぼ麻生久美子目当てであるが、これは見なくちゃとチケットを取った。演劇鑑賞経験のきわめて少ない私は、青山円形劇場も初めてだ。公演内容によって、どこの座席まで客を入れるかは異なるそうだが、今回の舞台は円形の舞台の周囲360度ぐるっと座席があるレイアウトだった。座席は数列しかないので、どこの席からでもよく舞台が見える。私は前から2列目で、目の高さがちょうど舞台のレベルだったろうか。

出演者は3人の名前しかクレジットされていなかったが、本当にたった3人の芝居。堪能できた。狭い空間だし、残響が抑えられているので、台詞は非常に明瞭に聞き取れる。演者は主にカーテンからランウェイを通って舞台に登場するが、捌けるときは客席内の通路を使ったり、円形を効果的に利用している。また周囲の壁には背景や、シーンによって様々な画像が映し出され、とても新鮮に思えた。

時は近い未来。無農薬農法で作物を作っている小杉保(堤真一)のもとに、クローン保険の営業マン・刈谷(田中哲司)がやってくる。小杉の母・朝子(麻生久美子)はクローン保険をかけており、乳ガンにかかったときに、クローンの乳房を移植したのだが、その後腎臓ガンを患い、先日亡くなったのだ。被保険者が亡くなった場合、保険で作られたクローンは、保険会社が“処分”するか“解放”して社会生活を送らせるかになる。遺された家族として小杉はこの二者択一に頭を悩ませることになる。

前半はよいテンポでコミカルなシーンが続く。中盤からシリアスな側面が色濃くなり、登場人物それぞれの本性があらわになって行き、夢と現実が錯綜し、近い未来の日本の姿が示唆されるようになる。3人しかいないために、台詞の量たるや凄まじいものがある。麻生は涼しい顔で、様々なトーンの台詞を使い分け、かなりの下ネタを畳みかけるシーンでもよどみがない。無表情から一転してこぼれるような笑顔を見せたり、可愛さ満開である。衣装もこれまたとても素敵だ。クローンである夕子の衣装は、カントリーテイストを取り入れたシルエットだが、素材が柔らかい生地を使っており、身体の動きに合わせて綺麗に揺れる。両袖のデザインが異なっていたり、別生地をスカートに挟み込んであったり、色合いもお洒落。最も注目したのは麻生が履いていたベージュ色の靴。足にぴったり合った柔らかい革製のように見えるヒールなしの靴。私の席の角度のせいで、靴の裏がよく見えたのだが、底が普通のタウンシューズなどと異なる素材のようだ。きっとジャズダンス用のシューズなのではないかと思う。

堤真一は演劇畑出身だとは知っていたが、テレビで見る彼とはずいぶん違って、溌剌として若く見える。身のこなしも軽い。田中哲司はさすがにカメレオン俳優と異名を取るだけのことはある。おそらく一番台詞も多く、2度ばかり噛んでいたが、声がよく通り、身体の大きさを活かした迫力満点の演技だ。

暗転のときに舞台装置を替えに来るスタッフは、全員防毒マスクをつけ、揃いの作業ウェアを着ている。これも目を惹き、装置転換の間のダレを払拭してくれる。

ストーリーも面白く、本当に手の届きそうな距離で3人を見られる舞台に大満足だった。

(2013.6.15 青山円形劇場にて)

公式サイト
posted by すいっち at 22:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月09日

舞台「不道徳教室」

作・演出:岩松了
出演:大森南朋、二階堂ふみ、趣里、大西礼芳、黒川芽以、岩松了
2013年

舞台を観るのは、やはり岩松了作2009年の「マレーヒルの幻影」以来だ。大森南朋と二階堂ふみが出演ということで、100%俳優さん見たさに行ってきた。東京公演の初日である。シアタートラムは初めて行く劇場なので、座席番号を見てもよくわからなかったが、何と取れたチケットは最前列の席だった。舞台と客席最前列の間の細い通路を、大森や黒川が歩く演出があったので、大森との距離が数十センチという一瞬があり、ファンとしては緊張してしまった!

とあるリラクゼーションルーム。マッサージ嬢リカコ(黒川芽依)と客。客は女子高の現代国語の教師・山城(大森南朋)。リカコと噛み合わない会話をしてゆくにつれて、山城は、生徒のあかね(二階堂ふみ)のことを思い出してゆく。山城はあかねに心を惹かれ、ストーカーまがいの行為をしていた。あかねと、久子(趣里)、弥生(大西礼芳)とは親友同士で、秘密の基地を作ったりしている。やがてあかねは山城と道ならぬ関係に陥るが、二人のことは学校の知るところとなり、山城の将来に暗雲がたちこめ、さらに、理事長の娘・久子が山城に恋心を抱いていることから、親友三人の関係も微妙なものになってゆく。川端康成の『みずうみ』からインスピレーションを得た作品と聞き、なるほどと思う。

時間軸が錯綜したり、本筋に関係あるのかないのかよくわからないエピソードがあちこちに挟まったり、岩松流の不可思議さはあるものの、比較的明快で面白い舞台だった。躍動感をみせる3人の若い高校生役の女の子たちと、大森南朋の大人だけれども不安定な役柄、そしていわばナレーションをしているかのような背景となる存在の黒川芽依、この登場人物たちのバランスがよかった。とりわけ二階堂ふみは、堂々たる存在感があっぱれとしか言いようがない。声がよく通り、伸ばした指先にまで魂が宿っているかのような力強い身のこなし、視線の強さ、輝いていると言って間違いないと思えた。大森南朋は、映画やテレビとほとんど変わらないのに、つまり舞台用に声を張り上げたり、身振りを大げさにしているわけではないのに、とても舞台にしっくり合っているように感じた。

舞台装置が素敵だ。リラクゼーションルーム、通学路、教室内、緑に囲まれた秘密の基地、花屋の店先、スナック、マジックのように場面転換がスムーズだ。リラクゼーションルームだけが照明が明るく、それ以外は暗い。現在と過去の違いだろうか。

女子高生の制服がとても可愛かった。どこかの記事に書かれていたが、このデザインは二階堂の意見が取り入れられているそうだ。ストーカーの話にセーラー服はあまり露骨すぎるし、ブレザーは平凡すぎるしということで、ジャンパースカートになったとのこと。ウエストがボタン留めになっているのがアクセントとなって、こんな制服だったら、そういう高校は人気が出るだろうと思われる。こちらに写真があるが、本物はもっとずっと可愛い。白いブレザーは季節が異なる設定のときのものだ。


(2013.6.9 シアタートラムにて)
以下ネタバレあり
posted by すいっち at 10:22| Comment(2) | TrackBack(0) | 舞台鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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