2009年11月21日

「水曜シネマ塾〜映画の冒険〜第10回東京フィルメックスを愉しもう!」西川美和監督トーク(2)

東京フィルメックスの話に移り、西川さんは、過去の東京フィルメックスで印象に残った作品として、ソン・ガンホ主演の『シークレット・サンシャイン』を挙げ、ひとしきり韓国映画の話に花が咲く。

西川:お隣の国にはすごい人たちがいますね。挑戦するああいう映画を作る人がいて、受け入れる環境がある、それはいいことですね。今まで持っていた解釈が打ちのめされて、新しい発見があるような作品でした。今回は、ソン・ガンホしか見ていないと言われそうですが、『サースト〜渇き』は観たいですね。『ヴィザージュ』も注目作です。『フローズン・リバー』や『グリーン・デイズ』もいいですね。映画って予算じゃないんですね。(日本映画名作の特集上映について)日本の古い映画というのは、小さいところでこそできる人間ドラマで、男も女もきちんと書けているんですね。

最後は客席とのQ & Aがあったので、質問者が市山さんだったか、お客さんだったか、記憶がごっちゃになってよく覚えていない。

Q:ご自分の脚本を誰かが監督するとしたら、誰がよいですか?誰かの原作を監督するというこについてはいかがですか?
西川:監督していただきたい方は結構います。『サイドウェイ』を撮ったアレクサンダー・ペインさんとか。(差しさわりがあってはと思われたのだろうか、日本人の監督の名は挙げなかった)すばらしい文章作品はたくさんありますが、映像化したら台無しになっちゃうんじゃないかと思ってしまうんですね。文章でのみできることを見せられたときに感動するわけですから。すぐれた原作というのは、つかみどころがないんです。『ユメ十夜』で漱石の原作を撮りましたが、漱石は、どこをとっても、美しいナレーションになるような文章です。どう切っても原作を越えられないと思ってしまいます。
Q:誰かが『きのうの神さま』を元にして映画を撮りたいと言ったら?
西川:どうぞどうぞ、お金入るし、やって下さい。
Q:脚本の書き方は?書くときにラストシーンまで決まっているのですか?
西川:まずプロットを作ります。A4で5枚から10枚。これが映画作りの芯になるものなので、一番神経を使います。ストーリーの最後まで書いてしまいます。その段階でプロデューサーと相談します。書くときは広島に帰ります。申し訳ないんですが、食事も親に頼ってしまいます。一日中書いているわけではなく、すぐテレビをつけちゃったり。脚本はカット割りも考えながら書くので、書けても1日3シーンですね。小説のほうは、ラストを考えませんでした。
Q:人間観察が鋭くていらっしゃいますが。
西川:よくそう言われるんですが、道行く人をじっと眺めているわけではないんです。付き合ってみて、ひと言でも言葉を交わすとわかってきます。人と付き合うと、自分のこともわかってきます。だから自分自身のことが映画の中に描かれていると思います。
Q:韓国映画が元気で、日本映画は少し低調だが、何が違うと思いますか?
西川:気合いだと思います。『母なる証明』なんて、冤罪ものはやりたかったんですが、やる気をなくしました(笑)完敗だと思いました。日本は飽和状態で、書くことがないんだと思います。
Q:俳優さんとの距離感については?
西川:いじめないですよ。北風型と太陽型があるとすれば、太陽型です。私は演技指導なんて出来ないので、あなたたちプロですよね、何でもできるんですよね、はいどうぞ、という感じで。サディストだと瑛太に言われましたけれど。ひとつ仕事をすると、仲間意識が生まれます。俳優と演出家は共犯関係にあるんです。昔付き合った人、みたいなことになりますね。スタッフとの付き合いとはちょっと違った関係です。

このほかに、市山さんの「俳優になろうとは思わなかったのですか?」という問いに、「とてもとても!俳優というのは360度どこから撮られても構わないと思っている人たちでしょう?人間が違うと思いましたね」というようなことも話されていたことを思い出した。また、市山さんが西川監督作品のどれかのシーンについて「女優さんの足がきれいだった」と言ったのを受けて、「男目線は得意なんです!」とニヤニヤされていたのが印象的だった。私は『ユメ十夜』での緒川たまきさんの足が本当に色っぽかった覚えがあるので、そのことかと思ったのだが、市山さんのおっしゃった女優さんの名前は緒川さんではなかった。

(2009.11.18 丸の内カフェにて)

* * * * *

理路整然とした西川さんのトークだけに、大変中身の濃い1時間半だったが、すでにあちこちで見聞きしたことのある話題に時間が割かれていたのがもったいない気がした。お話を聞いているうちに、また『ディア・ドクター』が観たくなった。12月26日からは目黒シネマで『ディア・ドクター』と『ゆれる』が2本立てで2週間上映される。観に行きたいな。東京フィルメックスも行きたいのだが、なかなか観たい映画と自分のスケジュールが合わない。

Cinemacafe.netのサイトでもこの日のトークの模様が取り上げられている。
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「水曜シネマ塾〜映画の冒険〜第10回東京フィルメックスを愉しもう!」西川美和監督トーク(1)

東京フィルメックスが11月21日〜29日に開催されるのに先立ち、映画祭や映画をゲストが様々な視点から語るイベント「水曜シネマ塾」に申し込んでみたところ、当選通知をいただいたので出かけてみた。西川美和監督がゲストの11月18日である。すでにWebでもトークの様子が、eiga.comのニュースなどで取り上げられている。

聞き手は東京フィルメックスプログラム・ディレクターの市山尚三さん。30人くらい入ればもう満員という狭い会場にお2人が登場。高いスツールに腰掛け、1時間半に渡って内容の濃い楽しいお話を聞くことができた。西川監督は丈の短いジャケットにパンツというスタイル。変わらずお美しい。まず市山さんが会場に向かって、「西川監督の最新作『ディア・ドクター』をご覧になった方は?」と問いかけると、ほとんどの来場者が手を挙げたよう。やはり西川ファンばかり集まっているようだ。

最初の話題は西川監督と映画との出会いについて。これまで、色々なところで見聞きしたことがほとんどだったが、西川さんという方は、同じことを語るのでも必ず表現を少しずつ変えてくる。だから、いつも話が新鮮に思える。本当に表現力の豊かな方なのだと思う。以下、話の内容をメモと記憶とで再構成してみる。

市山:ご出身は?
西川:広島県広島市内です。
市山:映画に興味を持たれたきっかけと、いつ頃のことだったかを。
西川:初めて観た映画は『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』でした。幼稚園生だったと思います。これは兄が観たいと言って行ったのですが、字幕つき洋画を観た初体験でした。なんでハリソン・フォードが固まって終わるの?と子供心に思いました。(会場爆笑。前作があることや、シリーズがまだ続くことなどを理解していなかったということのようだ)映画というのは、はじめは遊園地感覚でしたね。2時間ちょっと、自分が生きている世界と全く違う体験をする。背伸びをして大人になってゆく体験なのだろうと思いました。小学生の頃というのは、レンタルビデオ店がぽつぽつ出来てきた頃なのですが、お店で(知り合いの店だったのかどうか聞き漏らした)たくさん見せてくれるんです。そうこうしているうちに、小学校高学年頃には自分で観たいと思うようになり、お小遣いを貯めて映画館へ行くようになりました。大人になったような気分だったと思います。大人が笑っているところで自分も笑いたいと思ったんですね。洋画が多かったです。アメリカのメジャー映画、『ゴースト・バスターズ』なんかの時代です。ビル・マーレイが大好きになりました。中学校くらいになって、初めてヨーロッパ映画を観たのかなあ。
市山:大学の時に映画を作ろうとは思わなかった?
西川:遠い世界のことだと思っていたんですね、親戚筋でそういうことをしている人もいませんでしたし。映画は人と組んでやらなくちゃいけないし、お金もかかるので、一人で出来ることと思って写真をやっていました。でも自分は物語性を求めてしまうので、写真では言葉に飢えてしまうところがあって、やっぱり映画なのかなとおぼろげに思いました。
市山:映画関係の仕事を探したんですね?
西川:配給、宣伝という方向でもよかったんです。何らかの映画にかかわる仕事をしたいと思って探しましたが、全然募集していないんです。新卒採用がないんです。北野武、坂本順治、こういった人たちがインディーズというジャンルで、言ってみれば乱暴な作り方で面白いものを作っていたので、大手には行きたくないと思いました。
市山:テレビマンユニオンを受けたんですね?CM製作、TV製作会社としては有名でしたが、映画はまだ…
西川:『幻の光』は作っていたんですね。面接会場が、いわゆるフォーク並びで、いくつも面接のブースがあって、あなたはあっち、次の人はそっちという風に。で、私がたまたま入ったところに是枝監督がいたんです。映画をやりたいと正直に言ったら不採用になりました(笑)
市山:テレビ製作会社ですからねえ。
西川:是枝監督は『ワンダフルライフ』を作っていらっしゃる頃で、「ひとつだけ天国に記憶を持っていけるとしたら、もって行きたい記憶は何ですか」ということをたくさんの人にリサーチする、そのリサーチャーのアルバイトをやらないかと誘ってくださったのです。半年くらいリサーチとか脚本作りのお手伝いをして、「それから何をしたい?」と訊かれたので、「作る現場を見たいです」と言ったら、助監督の一番下につけて下さったんです。
市山:ご両親はそういうお仕事に賛成なさったのですか?
西川:両親はポカンとしていましたね。でも、本人がやりたいならやってみればいいんじゃないかと言ってくれました。映画の現場って、徒弟制度が残っていて、上の立場の助監督さんたちとの縦の繋がりや、照明さん、カメラマンさんたちとの横の繋がりがあるんです。いつだったか、「二度失敗が続くと先がないよ」と言われ、ヒヤッとしました。是枝監督の映画が出来てしまうと、もう仕事がなくなるわけです。そうしたら、横の繋がりで、諏訪敦彦監督の『M/OTHER』に呼んでいただけたんです。
市山:それは恵まれていましたね!
西川:そうなんです。実際は、是枝に対応できてるんなら、諏訪にもいけるんじゃないか、ということだったらしいんですが(笑)

西川:仕事があくと企画書書いたりしていました。周りが、監督になりたいなら脚本書けと言うんです。自分としてはまだ何をしたいか決まっていないんですが、是枝監督には書くべきだと言われました。『蛇イチゴ』の前に、実はその下敷きになるものを書いているんです。24歳のときでした。もう夢が詰まってる、激しい、巨大な予算が必要となるものを書いてしまったんで、先輩にこき下ろされました。私は助監督には向かなかったんです。順応性が必要とされる仕事ですが、私は合う監督はよいのだけれど、合わない監督となると、監督のやりたいことも理解できず、ボロボロの使えない助監督になっちゃうんです。身の置き場を助監督以外に見つけなきゃと思って、自分が得意なのは文章を書くことなので、現場を休んでシナリオを書いて、膨大な夢の詰まった作品をブラッシュアップしたものが『蛇イチゴ』でした。
市山:『蛇イチゴ』を観て、ついに脚本のしっかりした新人監督が出てきたなと思ったんです。シナリオの学校にきちんと通った方なのかなと思っていました。
西川:通うお金がなかったんです。シナリオが面白ければ、自分が監督しなくても、ある程度品質保証されるので、しなくてもよかったんですが、20代の人間にしか撮れないものがあるから撮らせようとしてくれたみたいです。予算2500万です。
市山:そんなに低かったんですか!
西川:実際には文化庁の助成金が1000万ありましたけれど。2500万で何が撮れるかと考えると、家族の話、ワンセットなら行けるかも知れないと思いました。シナリオ作家デビューのつもりが、是枝さんとの出会いの運がよかったんですね。

ここで、用意されてあったスクリーンに『ディア・ドクター』のメイキング映像が流れる。これはおそらくDVD発売時に収録されるのだろう。西川監督の凛々しい姿が映り、とても興味深いものだった。

市山:てきぱきとしてますね!
西川:いいところを編集しているんですよ(笑)35日間、去年の夏撮影しました。ちなみに一作目の『蛇イチゴ』は14日間。二作目の『ゆれる』は○○日間(聞き漏らした)。
市山:出世してますね。

市山:小説『きのうの神さま』は、クランクイン前に書かれたんですか?『ディア・ドクター』の原作かと思っていたら、そうではないんですね。
西川:最初の2篇はクランクイン前。あとの3篇はクランクアップ後です。映画っていうのは、"この脚本でGO!"とならないと予算が出ないんですね。でもGOと言える脚本を書くためには、リサーチなどお金がかかります。まあ自分で出してもいいんですが、そんなことを愚痴っていたら、ポプラ社が取材費を出すから、映画にからめてもいいし、からめなくてもいいから小説を書いてくれませんかと言ってくれたんです。取材費は大変ありがたかったですね。『ディア・ドクター』の村人たちの家での話しなんか、9割方取材で見たまんまです。映画の脚本が出来てから、ポプラ社さんとの約束を果たさなくちゃと思って『きのうの神さま』を書きました。
市山:最初から偽医者を書こうと思ったのですか?
西川:最初からです。『ゆれる』が国内興行成績がよかったし、評価されて、こんないい加減な人間がずっとやっていけるはずがない、もう何のアイディアもない、でも偽者の話なら書けるわ、と思ったんです。ちょうど入院したこともあって、医者の話にしようと思いました。自分で物語を作って、監督自身が悩んで作っていく、そのプロセスが映画作りだと思っています。書くことが好きなので。
市山:鶴瓶さんが主演ですね。
西川:最初はソン・ガンホさんでいきたいなと思ったんです。(客席から、な〜るほどという納得のざわめき)主演は悩んで悩んで悩んだ末に是枝さんのところに遊びに行ったら、深く考えずにおっしゃったのだと思うけれど、鶴瓶さんどうなの?と言われたんです。お笑いの世界の方がサイドビジネス的な気持ちでやるというのならちょっと…と思っていたんですが、鶴瓶さんはすごく興味を持ってくださって、きちんと向き合ってくださいました。
市山:スケジュールが大変でしょう?
西川:撮影現場の外にテントを張って、ラジオ番組の収録やるんですよ。で、鶴瓶さん出番ですって呼びにくると、また撮影現場に戻る、というような。ほかの俳優さんならふざけんなと思いますが、鶴瓶さんだとそう思わないんです。現場の町での鶴瓶師匠のカリスマぶりは、映画以上ですよ。サインなんか間違いなく1000枚以上。映画のDVDとは別の『もうひとつの、ディア・ドクター』というドキュメンタリーDVDが1月8日に出るんですが、鶴瓶さんと伊野にいかに人格の一致があるかわかります。こんなにギャップのない人はいませんね。

笑福亭鶴瓶が生まれた理由(わけ) “もうひとつの、ディア・ドクター” [DVD]

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市山:『ディア・ドクター』は北米での反応はいかがでしたか?
西川:反応、いいんです。何とか配給がついてくれないかと思っているんです。観客の感想も日本と同じですね。
市山:今までで印象に残っている映画祭はありますか?
西川:『蛇イチゴ』のとき、2007年にサラエボ映画祭に行きましたが、あそこは直前まで内戦状態だったんですね。町中のビルが銃弾で蜂の巣状態。人は優しいし、穏やかで、知的だし、民族が混じっているので見目麗しい人々が多いんです。なのに、なぜあんな悲惨なことが起こったのかと不思議でならなかったですね。すごくいい映画祭でした。人口800万人のうち、日本語が喋れる人が2人だけ。そのうちのひとりが通訳で、ボスニア語⇔日本語を通訳しようとしてくれるんですが、まったく通じない。途中から大使館員の方が来てくださって、英語⇔日本語に切り替えたのでなんとかなりましたが。そういう映画祭に行けるのは幸せですね。

* * * * *

あまりに長くなりすぎたので、一旦ここで区切ろうと思う。近々続きを書くつもりである。
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2009年06月17日

『ディア・ドクター』試写会2回目トークショーつき

月曜日に完成披露試写会があったばかりの『ディア・ドクター』、2日続きで、昨日はトークショーつきの試写会。幸運なことに当選したため2度目の映画鑑賞となった。試写会にはいつも、大体同じような時間に行くのだが、昨日はお客さんの出足がとても早く、私が入場した頃には、客席は前方のほうからもう半分くらいは埋まってしまっている。招待状には「当日はキャストによる舞台挨拶を予定しています」と書かれていたので、いわゆる舞台挨拶かと思っていたら、壇上には左右にポスターが置かれ、中央に椅子が4脚並んでいる。

開始時間になると、笑福亭鶴瓶さんが突然ひとりで登場し、万雷の拍手と歓声に迎えられる。軽く挨拶をしたあと、さすがお喋りが専門の方だけあって、どんどん話が進んでゆく。とても全部は覚えきれなかったので、繋がりが悪いのだが、メモしたことで出来るだけ再構成してみよう。

鶴瓶:早く着き過ぎまして、そこの韓国料理屋でコーヒー飲んでたんです。そしたら(ここに来るお客さんに)「瑛太くるんですか?」って言われて(笑)来ません!(客席から、ええ〜…という残念そうな声)何ですか!主役が来てるっていうのに!(笑)
こういうの望んでたんですよ。お客さん、ぎょうさん入って、キャーッ!っていうの。いうてくれて嬉しかったわー。1万6千か7千(応募件数が)集まったらしいですよ、それの千百ですから。(千百というのは客席数だから、実際に当選したのは550組。30倍くらいの倍率だったということか!ひゃー、狭き門だったんだなあ、本当に当選してラッキー♪)

それから、まるで瑛太さんが舞台袖にいるかのように(本当はいない)、「そうやで、瑛太。主役がここにいてんで。帰れ、お前!」と袖に向かって喋ったり、「今、瑛太帰しましたので」などと笑わせてくれる。あとの3人は誰かと思っていたら、鶴瓶さんの紹介で、ニッポン放送のアナウンサー上柳昌彦さん、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」のアシスタント佐田玲子さん(さだまさしさんの実妹)、そして東京FM「よんぱち」の木夏リオさんがここで登場。そういえば、この試写会はこのラジオ局3社が企画したものだから、このようなクロスオーバーなトークショーとなったわけだ。

上柳:これを師匠にお召しいただきたいと。(医師の白衣を鶴瓶さんに渡そうとする)
佐田:(鶴瓶さんに着せかけながら)ほんと、お痩せになりましたね。(確かに鶴瓶さんは、テレビで見ると丸顔のため恰幅がよく見えるが、実際にはかなり細い。それから聴診器もあり、それをどう首にかけるかで、しばし談笑)
上柳:じゃ師匠、進行よろしくお願いします。
鶴瓶:え?僕がやるの?主役やのに?(笑)
上柳:さっき、西川監督にお会いしたんですけれど、綺麗な方ですよねー!
鶴瓶:そうでしょう?綺麗も綺麗やけど、みんながあの人にために何かしようという現場だったんですよ。女性なんか憧れると思うよ。
木夏:憧れてます!私と同い年で、こんなにすごい映画を撮られて、憧れの塊ですよ。
鶴瓶:静かな現場です。女の子が多くて。監督は、撮影のときは「オーケー!」とびしっと言うことはあるけれど、トゲトゲしたところがないんです。

鶴瓶:瑛太なんか、出てきたら喋らへんで。こんなに主役がマイク持ってベラベラなんて喋んない(笑)これから瑛太の真似するからね。間(ま)がすごーく長いの。
(上柳さんがここで何か質問をする。鶴瓶さん、すご〜〜〜〜く長い間をとってから何か一言。全員が「長いわ!」とずっこける)

上柳:師匠は、こちらが映画の感想を言う前に「どやった?ええやろ?!」って(笑)プラス思考の方なんですよ。
鶴瓶:『ゆれる』のオダギリジョーさんが監督とさっき対談したんやけど、本当は出たかったんやて。オダギリジョーさんが言ってた言葉、そのまんま言うよ。「めっちゃ良かった」と、俺が(笑)

ここで、監督は今日は出る予定がなかったのだが、せっかく来ているからということで、鶴瓶さんが監督を呼び出す。椅子も1脚増やして、西川監督は鶴瓶さんの隣に座ってトークに参加。よかった!西川監督に会いたくて応募したのだから。

上柳:映画って、男っぽい職場だし、大変な世界ですが、そういう所で仕切っているように見えませんね。
西川:仕切ってないんですよ。
鶴瓶:皆がそうやってくれるんです。皆、いっぺんも怒られたことないって。キーッとなる人、現場にはいないんです。

上柳:映画に出てくる茨城の棚田は、ロケハンの成果ですか?
西川:はい、関東近郊で探して。師匠は忙しいですから、東京にすぐ帰れるような場所ということで。
鶴瓶:「家族に乾杯」をやって帰ってきたり、「いいとも」もやって現場に帰って来たりしてたよ。

上柳:鶴瓶さん主演ということですと、鶴瓶さんが前に出て、ストーリーが引っ込んでしまうというような心配はありませんでしたか?
西川:そこがまさにこのキャスティングの一番のネックでした。日本人の大多数から顔を知られていて、好感度も高くて…"鶴瓶の映画"になってしまってはと。まあ"鶴瓶の映画"ではあるんですけど。でも撮ってみて、師匠じゃないとダメだったんです。これからご覧になって、これは鶴瓶さんでないとダメだなとお分かりになると思います。
鶴瓶:好感度高くないですよ。気軽に相談できそうなタレント20位!中途半端や!(笑)

上柳:師匠の困惑の表情をうまくとらえてましたねー。
西川:小学校のときに鶴瓶さんの番組を見たときに、面白いなと思ったと同時に、この人危なそうだなと思ったんです。
鶴瓶:それが小学校4年かなんかですよ!この人危なそうだと思うって…
上柳:さすが、人間をぐいぐいえぐる監督の性格が出ていますね。
木夏:私は小学生の頃、鶴瓶さんを見て、お父さんだといいのにと思いました。ずいぶん違いますよね。

佐田:ほんとに個性ある人ばかり出演していらして。師匠、この人だけは気を遣った方、いらっしゃいますか?
鶴瓶:そりゃ、八千草さんですよ。香川照之は楽しみやったんです。会った時が可笑しかった。あの人、昆虫が好きなんやろな。「オニヤンマが飛んでるよー!網持ってこい!わー!首折れた!」なんて。余さんは、棚田の奥で「プルプルプル!」って言ってるので、「何してんの?」って聞いたら「落ち着くんです」って。この映画は1ヶ月ちょっと撮影があって、起きたことを全部台本に書いてあるんで、1時間半くらい喋れますよ(笑)(鶴瓶さんは自分の経験を自分の言葉にして、話を作ってゆき、最後にはそれを落語に取り入れるという話題があって)「ディア・ドクター」って落語そのうちできますよ。

鶴瓶:試写会でのトークって、上映前が多いの?上映後が多いの?
上柳:上映前ですね。
鶴瓶:上映後だといいのに。(ネタバレを心配しなくてすむからというニュアンスで)
上柳:それじゃ師匠、話が終わらないでしょ!

鶴瓶:救急車の話(完成披露試写でも話題になった、鶴瓶さんが入院した話)ね?本当ですよね?
西川:はい、あーやっちゃった!と思いました。(あるスタッフさんの年齢を訊くと、その人は入院してしまうというジンクスがあるのに、鶴瓶さんがやってしまい、本当に入院したということ)

西川:オダギリさんと今日対談して「すっごい面白かった」と言ってくださったんです。前作については、ご自分が出演しているので、いいとは思うけどよくわかんないとおっしゃってて、カンヌ頃にようやく落ち着いて、いいと思えるようになったと言っていらしたんです。だから、前回溜めていたものを含めたような褒め方でした。「鶴瓶さんで本当によかった」とも言ってました。

ここで突然時間切れになり、あとはフォトセッションでトークショーはお開き。思いがけずオダギリの話も聞けて楽しかった。

Oricon Styleにトークショーの様子のニュースが載っている。

* * * * *

映画は2度目の鑑賞でますます好きになった。観れば観るほど、素晴らしく感じる。前回も思ったが、今回は特に、松重豊さんの台詞が印象的だった。

(2009.6.16 よみうりホールにて)
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2009年02月19日

キネマ旬報ベスト・テン表彰式

昨日、「2008年 第82回 キネマ旬報ベスト・テン 第1位映画鑑賞会と表彰式」が行われ、今年も当選葉書が届き、楽しんできた。俳優の方々では、主演女優賞の小泉今日子さん、主演男優賞の本木雅弘さん、助演女優賞の樹木希林さん、助演男優賞の堺雅人さんをはじめ、受賞者全員が勢揃いして、これだけでも凄い!と思っていたら、サプライズで香川照之さんが花束を持っていらしたり、キネマ旬報創刊90周年を記念して、プレゼンターとして原田美枝子さん、原田義男さんが登場し、思いがけず本当に華やかなステージとなり、すっかり堪能して帰ってきた。

夕方から始まった表彰式。まず例年通り、司会はフジテレビの笠井信輔アナ。最初の挨拶で2年連続同じギャグを聞いているので、今年はやめて!と思っていたら、今回は違った(笑)「司会のオファーを受けたとき、軽部アナに盗られなくてよかったと思いました。映画人として軽部さんはライバルなので」と笑わせてくれた。

そしてキネマ旬報の代表取締役・小林光さんが挨拶をなさったあと、ただちに受賞者たちが、笠井アナの紹介によって登場し、壇上に並べられた椅子に次々座ってゆく。キネ旬表彰式のよいところは、最初に受賞者全員が登場するため、長い間顔を見られることだ。キョンキョンは黒のミニスカートに黒のタイツ。さらにほっそりされたようで、相変わらず可愛いしカッコいい。先日のブルーリボン賞には北海道ロケのため欠席された堺雅人さん、今回もまだ撮影中かしらと思っていたが、出席してくださり、嬉しくなる。ブルーリボン賞でご夫婦2ショットを見せてくれた本木雅弘さんは、今回は樹木希林さんと並んで、母子2ショットということになった。希林さんはグレーの素敵な和服だ。最後に、キネマ旬報読者賞の片桐はいりさん、奇妙な衣装を着ていらっしゃるが、後にこの謎が明らかになる。受賞者のコメントでメモしたことを書いておこう(受賞順)。

外国映画作品賞「ノーカントリー」
配給会社ショーゲートの中村あけみさんが受賞者として登場。「パラマウント・ジャパンさんとの共同配給です。アカデミー賞でも最多部門ノミネートということでプレッシャーがありましたが、大ヒットした成功の一番の要因は、ハビエル・バルデムの来日だったのではないかと思います。バルデムはアカデミー賞のあと疲れてしまい、なかなか来日のOKが出ず、向こうまで飛んで必死に要請した結果、来日OKが出たのは、なんと予定の4日前というぎりぎりのタイミングでした。情熱を持って宣伝側が頑張ったので、出来ないことを成し遂げるという結果に繋がりました」と、宣伝側の苦労話を披露された。

外国映画監督賞 シドニー・ルメット(「その土曜日、7時58分」により)
ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントの佐野哲章(のりあき)さんが監督に代わって受賞。「監督の言葉はすでにキネマ旬報誌に載っています。一昔前なら拡大ロードショーとなる作品ですが、今回は単館ではないけれど、恵比寿ガーデンシネマから始まってロングランヒットとなりました。本当にありがとうございます」と述べた。

外国映画監督賞 ショーン・ペン(「イントゥ・ザ・ワイルド」により)
配給会社スタイルジャムの馴染み深い汐巻裕子さんが監督に代わって受賞。「脚本の段階で買い付けた作品。世界で唯一インディーズでの公開となり、世界で一番遅いスタートでプレッシャーがありました。けれども台本を読んで心が震え、本人が全身全霊で書いた作品だと感じました。ショーン・ペン監督は現在『ミルク』で忙しく、コメントをいただけなかったので、プロデューサーのアート・リンソンさんからのコメントをご紹介します」ということで紹介。「プロデューサーが作ろうと思って作れる作品ではありません。監督の魂の叫びから生まれた作品です」という言葉が印象に残った。

読者選出外国映画監督賞 ジョエル・コーエン&イーサー・コーエン(「ノーカントリー」により)
パラマウントピクチャーズジャパンの高谷清人さんが代わりに受賞。「パラマウントピクチャーズの日本ブランチを去年の1月1日に立ち上げました。その第一弾の作品が「ノーカントリー」で、素晴らしい興行成績を上げることができ、社員一同喜んでいます」と述べ、コーエン兄弟からのメッセージ「日本の観客の皆さんに、これほどポジティブに受け入れられて大変嬉しく感謝しています」を紹介。

文化映画作品賞「嗚呼 満蒙開拓団」
監督の羽田澄子監督が登場。「昨年の秋に仕上げた映画で思いがけなく受賞できて大変嬉しく思います。このようなテーマで映画を作ったことがないので、どのように作っていったらよいかとても悩みました。中国残留孤児のことなどに関心を持つうちに様々なことを知りました。私も満州から引き揚げてきましたが、満州の奥地で何が起きていたかはまったく知らなかったので、取材してゆくうちに本当に驚きました」と述べた。この映画の感想については、別に書こうと思う。

監督賞、および読者選出日本映画監督賞 滝田洋二郎(「おくりびと」により)
ダブル受賞となった滝田監督が登場。「映画をやっている人間はどこかでキネ旬を意識しているものです。憧れがありましたが、自分には縁がないと思っていたので信じられませんでした。素晴らしい企画者の本木さんはじめ、素晴らしいスタッフのおかげでここに立つことができました」と感激の言葉を述べた。

新人女優賞 甘利はるな(「コドモのコドモ」により)
現在小学6年生の甘利さん、「本当に幸せな気持ちです。皆さんに支えていただいたおかげです。これからも感謝の気持ちを忘れずにやっていきたいと思います」と、大変優等生的なコメントをしっかり述べた。

新人男優賞 井乃脇海(「トウキョウソナタ」により)
こちらも「皆さまの支えのおかげです。スタッフ、共演者の方々、お父さん、お母さんに感謝したいと思います」と述べたところで、笠井アナが映画で母親役だった小泉今日子さんに前に出てくださいとお願い。そこに何と客席後方から父親役の香川照之さんが花束を持ってサプライズ登場。香川さんはコメントを求められて、「井乃脇くんは、現場で頑張ってたので、お母さんに、きっと何か賞があるよと言っていたんですが、それが実現しました」とお祝いの言葉を述べ、小泉さんは、「香川さんが引っ張っていってくださったので、素直についていけばちゃんと作品になるという、頼もしい夫でした」と香川さんを称え、井乃脇さんは香川さんについて、「現場では優しく、自分の演技を褒めてくれたりしました」と感謝の言葉を述べた。

ここで、キネマ旬報創刊90周年を記念してゲストをお迎えしますと笠井アナが紹介するので、どなたが?と思っていると、なんと原田美枝子さんと原田義男さんが登場。美枝子さんの美しさ、義男さんのカッコよさに感嘆。美枝子さんは、「映画の製作自体はチームワークですが、演技することに関して俳優自身はひとりなので、孤独な仕事です。コツコツを努力をしていれば、どこかで誰かが見ていてくれるというワダエミさんの言葉が印象に残っています」「去年、小泉さんが『グーグー』を撮影されているときに吉祥寺で、急いでいたのに通行ストップに引っかかりました。今まで自分が撮影で通行ストップを散々させていたのに、初めて自分がストップされる立場になりました」と逸話も披露した。義男さんは、「長年やっていますが、いいのか悪いのか未だにさっぱりわからない。未だに映画についても何もわかっていない。褒められたことはすぐ忘れるが、辛口批評はいつまでも覚えている。キネ旬にはいつまでも続いてもらいたい」と述べた。ここからお二人はプレゼンターを務められる。

主演女優賞 小泉今日子(「トウキョウソナタ」「グーグーだって猫である」により)
先ほど原田美枝子さんが仰った言葉に引っ掛けて、「そんなこととは露知らず、吉祥寺でロケをしていました。『トウキョウソナタ』の黒沢清監督、『グーグー』の犬童一心監督、お二人の監督に出会えましたし、うちの息子(井乃脇さんのこと)が立派に挨拶できましたし、本木くんとは同期なので、一緒に受賞できて、いろいろ嬉しく思います。先日キネマ旬報の表紙の撮影をしましたが、本木くんとはアイドル誌以来の2ショット(笑)で、楽しくて嬉しく思いました。これからも、そんな思いができるように、頑張りたいと思います」と、とても楽しいコメントを披露した。

主演男優賞 本木雅弘(「おくりびと」により)
「トロフィーは重いとは聞いていましたが、想像以上に重たいものでした。考えていた挨拶の内容が小泉さんとほとんど同じ内容だったので、今頭が真っ白になっています。作品を背負っていくということの重たさを感じています。スタッフ、キャストそれぞれの背負い方があるので、それをまとめられた監督の力に感謝したい気持ちになりました。何かの評に、やっと本木がいい作品に巡り合えたというのがありましたが、本当に不器用で自分をうまく解放できない人間です。小泉さんとは同じ時代を生きてきて一緒に受賞できて、言葉にならない充実感と新しい思いがあります。いつか機会が巡ってくるようであれば、その時は原田義男さんのように、独自の味を携えて、ここに立てるようになりたいと思います」と言う。

助演女優賞 樹木希林(「歩いても歩いても」により)
こちらは、映画で夫役だった原田義男さんがプレゼンター。「お前、キネ旬受賞式欠席するなよ―しないわよ―お前、ついてるな」などと、裕也さんの言葉なのだろうか、寸劇調のコメント。本木さんと並んで受賞したことを意識したかと問われ、それはぜんぜん意識せず、むしろ原田義男さんのほうに意識が行ったと答える。誰かに「あなた、夫に対してどういう思いで演じてたの?夫に対する思いってのが見えなかったと言われました。そういえば、私は誰が夫になっても、男でも女でもない"無性(むせい)"だなと思い、これからは"性"のある演技を目指そうかと…」などとも述べた。

助演男優賞 堺雅人(「アフタースクール」「クライマーズ・ハイ」により)
「今日、宣伝担当の方々のコメントを聞いていて、こういう方々によって映画が支えられているのだなと思いました。またこういう方々に観ていただくということが励みになります。現場では、相手の役者さんが、ああこんな風に台詞を言うのかとか、個人的な喜びを混ぜながら毎回楽しませていただきました」と述べた。

日本映画作品賞「おくりびと」
到着が遅れていたエグゼプティブプロデューサーの間瀬泰宏さんが登場。「難産な映画でしたが、着眼された本木さんの信念と、監督はじめスタッフの情熱で実現しました。スタッフ、キャストに賞がいただけて本当に嬉しく思います」と述べた。

脚本賞 小山薫堂(「おくりびと」により)
「初めての映画の脚本でした。本木さんから納棺師という難しい題材をいただき、わけもわからずとにかく書きました。本当に申し訳ないのですが、キネマ旬報は一冊も買ったことがないんです(笑)受賞を聞いて、Amazonで30冊購入しました(笑)読んでみて、これは本当に大層なものをいただいてしまったとわかりました」と軽快なテンポで楽しいお話をされた。

キネマ旬報読者賞 片桐はいり(連載「もぎりよ今夜も有難う」により)
「俳優さんと同じ形のトロフィーをいただけて不思議な気分です。葉書という手段で選んでくださって、本当にありがとうございました。私も俳優なので、皆さん羨ましいなと思っていましたが、映画会社の方々のコメントを聞いているうちに、自分は映画会社の仕事をしたかったんだと思い出しました。今では映画と映画館の両方を楽しんでいます」と述べ、不思議な衣装について尋ねられると「これは"もぎり"の制服なんです」と言う。確かに、グレーのスカート、紺色で襟に白い線のついた上っ張り、まさに制服だったのだ。

最後に、米アカデミー賞ノミネートついて尋ねられると、本木さんは「幻だったのか、そうじゃないのかを確かめに行きます」と言い、滝田監督は「スピーチなどは全然考えていません。華やかなレッドカーペットを歩くのを楽しみにしています」と述べ、小山薫堂さんは「ロスのおいしいハンバーガーを楽しみにしています」、間瀬Pは「戴冠して皆さまにご報告できれば」と述べた。

例年にも増して華やかで楽しい表彰式、特にどんな場でも楽しげで自然体のキョンキョンが印象に残った。受賞者の皆さま本当におめでとう!

(2009.2.18 銀座ブロッサムにて)
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2009年02月04日

第51回ブルーリボン賞授賞式観覧

前年度の主演男優賞・女優賞受賞者が司会を務めるというのが恒例になっているブルーリボン賞授賞式、昨年は麻生久美子さんが主演女優賞だったので、ぜひ司会の姿を見たいと思い、授賞式に応募したら幸い当選し、昨日行ってきた。司会のお相手は、昨年主演男優賞の加瀬亮さん。初夏公開予定の三木聡監督の『インスタント沼』でも共演している二人だ。司会などというものはいかにも苦手そうな加瀬さんを、麻生さんがどうフォローするかが最大の関心事だった。ほとんど暗闇の中でのメモ書きなので、かなりあやふやだが、式の流れを書いておこうと思う。

会場は銀座ブロッサム。客席900のホールだが、かなりの座席数をメディアが占めている。ブルーリボン賞は、在京7社のスポーツ紙映画担当記者による東京映画記者会が主催しているものだけに、派手さや特別な演出をいっさい排したとても庶民的な授賞式で、気楽に観覧することができた。時間通りに開会し、まずサンケイスポーツの石山記者が開会の挨拶を述べる。そして、司会の加瀬亮さん、麻生久美子さんが登場。加瀬さんは、タキシードっぽいブラックスーツにネクタイなしのシャツ、麻生さんは、レトロっぽい白い襟のついたダークグレーのワンピースという清楚な装いだ。加瀬さんは「まさか、麻生さんと司会をやることになるとは…たどたどしいですが、よろしくお願いします」という挨拶からもう、カミまくりで笑いを誘う。麻生さんは「早速ですが、それでは始めます」と、元気よく張りのある声だ。受賞者は客席の最前列に座っていて、司会に名前を呼ばれると壇上に上がってくる。受賞対象作品はビデオで15秒ほど紹介される。

作品賞:『クライマーズ・ハイ』
若杉プロデューサーと、原田眞人監督が登壇。賞状授与者も各紙の記者さんたちで、こういう場に慣れていないのか、「クライマーズ・ハイ」というのが言いにくそうで、カンでしまい、ここでも笑いが起こる。若杉プロデューサーは受賞してすぐ帰ろうとするところを、麻生さんにコメントをお願いしますと言われて、慌てて引き返し、「ヒットする映画を作るのと、賞を獲れる映画を作るのは、どっちが難しいかといつも考えていましたが、この作品は大ヒットし、賞もいただき感激しています」と述べた。原田監督は、「獲るべき賞をいただいたということで、すごく嬉しい。撮影中、地方新聞のいろんな記者さんたちが取材に来てくれた。今では新聞社もパソコン全盛で、社内で記者同士が大声でやりとりするようなことがないため、映画に描かれている80年代の記者たちの様子を羨ましいと言う若手記者さんもいらしたし、年輩の記者さんたちは、現状を危うい状態と憂えている。時間の不規則な社会部希望者が極端に少なく、ゼロという社もあるそうだ。たぶんこの映画がそういう風潮を変えてくれるんじゃないかという期待をこめての取材だったと思う。日本の報道に新しい時代が生まれることを願っています」と、大変興味深いコメントを残された。

監督賞:是枝裕和(『歩いても歩いても』)
濃紺のパーカーの形のセーターをラフにはおった監督。「とても個人的な理由でスタートした映画なので、他の映画も進んでいたのに、作らせてもらえたということが嬉しい。作り手の気持ちがそのまま作品になるということは感慨深い」と静かに述べた。

外国映画賞:『ダークナイト』
配給会社の方が、クリストファー・ノーラン監督の「伝統ある賞をいただき感無量で、心からお礼を申し上げます」というメッセージを代読する。

新人賞:吉高由里子(『蛇にピアス』)
「大胆なヌードも披露され…」と麻生さんが紹介。楽しみにしていた吉高さんなので嬉しい。実物の吉高さんを見るのはもう3度目くらいになるが、変わったプリント模様のウエストあたりがふわっと膨らんだワンピース、髪は細かいウエーブのロングヘアで、今日はひときわ可愛い。コメントを求められて、「なんか司会のお二方が加瀬亮さんと麻生久美子さんで、すごく嬉しいです」とまず一言。麻生さんとは、「時効警察」で共演したし、加瀬さんとはもうすぐ公開の映画で共演しているから、安心感があるのだろう。「こんな素敵な賞をいただけるとは思っていなかった。これからも前向きに、"前のめりに"頑張っていきます」と結んだ。

吉高さんが壇上の席に戻り、しばし沈黙があったので、麻生さんが加瀬さんに「吉高さんに見とれてません?」と笑いながら言う。きっと加瀬さんが何か言う番だったのだろう。加瀬さん慌てて「ああ…はい、見とれてました!去年一緒に『重力ピエロ』という映画をやらせていただいて、5月23日に公開なので、よろしくお願いします」とやっとフォローする。

新人賞:リリー・フランキー(『ぐるりのこと。』)
この日一番笑いを誘ったのが、リリーさんのコメントだった。加瀬さんに「史上最年長の新人賞だそうですが、ご感想はいかがですか?」と尋ねられ、「なんか場違いなやつとお思いでしょうが、自分が一番場違いだなと感じています。45歳という、膝とか肘とか間違ったところから毛が生える歳になりまして、加瀬さんの、史上最年長の新人賞という言葉を聞いた途端に、余計老け込んだ気分です。どうせ新人賞は吉高由里子だろうと思っていましたが、いざ一緒に新人賞を貰ったら、吉高さんにライバル心が湧いてきたりして…吉高さん、大胆なヌードを披露されと麻生さんがおっしゃったけど、僕も脱いでいるんです!(爆笑)こういう受賞のときに、受賞者の人たちが、皆さんのおかげですと言うのは、ウソだろうと思っていましたが、あれは本当ですね」と、最後は感謝の言葉で締めくくった。

特別賞:故・市川崑
ご長男の市川建美氏が登壇され、「ブルーリボン賞を今までに20いただきました。最後が『犬神家の一族』です。最後まで映画を撮っていて天寿を全うしたということになります。80番目の今まで公開されなかった作品『その木戸を通って』が公開中ですので、よろしくお願いいたします」と挨拶された。

特別賞:故・緒方拳
ご長男の俳優、緒方幹太さんが登壇され、「父が50年俳優としてやってこられたのも、支えてくださった皆様のお陰です。父に負けないように私もこれから努力してまいります」と挨拶された。

助演男優賞:堺雅人(『クライマーズ・ハイ』『アフタースクール』)
現在北海道で映画の撮影中とのことで、この日は残念ながら出席されなかった。堺さん目当てでいらした観客の方も多く、溜息がもれた。『クライマーズ・ハイ』の原田監督が代わりに賞を受け取り、「堺雅人は本当に素晴らしい俳優で、『アフタースクール』も最近観ましたが、もっと見ていたくなる役者で、もっと一緒に仕事したくなる役者です。タバコをやめたらもっと、なのですが、これから徐々にそう勧めていこうと思います」とコメント。そして、網走で撮影中の堺さんからのビデオメッセージが流れる。「『クライマーズ・ハイ』も『アフタースクール』も、どちらも思い出深い作品です。予期せぬボーナスをいただいたという気分です。新聞記者さんたちが選んでくださったということで、プロの眼鏡に適ったことを嬉しく思っています。『クライマーズ・ハイ』の役作りで、実際に新聞記者さんたちに取材して、その結果を監督に報告するのが楽しかったですね。新人記者が原稿を書いてデスクに渡すような気分でした」とにこやかに話されていた。

助演女優賞:樹木希林(『歩いても歩いても』)
スケジュールの都合でご欠席。代わりにお嬢さんの内田也哉子さんが登壇。事務所の代表として参りましたとおっしゃる。そして「樹木希林からミニメッセージを預かっております」と樹木さんのコメントを紹介。「どこで失くしたのかなあ、あのモンブラン。と、物欲のない夫が悔しがっておりました。それがこの度、手に入るということになり、見つけてくださった記者の皆様に心の底からお礼を申します」と、副賞のモンブランにことよせた希林さんらしい言葉だった。

主演男優賞:本木雅弘(『おくりびと』)
加瀬さんに「親子受賞ということになり、照れくさいでしょうが」と水を向けられると、「非常に照れくさいです。映画は個人的なものなので、様々な感想がある中、『おくりびと』を多くの方が観てくださり、ありがとうございます。『おくりびと』の中で自分の演技はよいとは思っていません。深みのある山崎努さんの上にちょこんと乗っかった感じで、自分ごときが…と恥ずかしい気持ちです。正直、キャリアがあるわりには不器用な自分ですが、この作品によって"納棺"という世界を知り、初めて見た納棺のときに、この時間にしかない特別な美しさを自分の目と心でしっかり感じ取ったという小さな自負を持って、カメラの前にいました。親を亡くされたばかりの記者さんの取材も受けたりして、人の心にちょっとでも安らぎを与えられるような映画であればと思いました。妻が同席していたので、樹木さんとの親子受賞というより、そのことのほうが緊張しました」と述べる。
加瀬さんがさらに米アカデミー賞ノミネートの感想を尋ねると、「追い風に乗って、いろんなところに飛んでゆくという気分ですね。個人的には十二分に満足しています」と答えた。

主演女優賞:木村多江(『ぐるりのこと。』)
これが最後の受賞者。上品な薄茶色の柔らかい生地のワンピース。主演女優賞というには意外なほどの慎ましいたたずまいの方だ。「皆さんが登壇され、ひとりになってしまい、今そこの席で心細く思っておりました。実際にここへ上がらせていただいて、賞をいただいて、本当に私でいいのかと現実感がない気がしています。『ぐるりのこと。』の翔子は自分だと橋口監督がおっしゃり、監督の人生を生き、自分の人生を生き直したいと思って、この作品に取り組みましたが、毎日ダメだダメだと言われ続けて、どうしてこんなにダメなんだろうと悩みましたが、何より監督が一番身を削って、自分を追い込んで導いてくださいました。現実の私は、現場でいつも自己嫌悪ばかりのダメ人間ですが、この賞に似合う俳優を目指して精進したいと思っております」と、終始控えめなコメント。
リリーさんとのダブル受賞の感想を聞かれると、「リリーさんにも導いていただきました。素晴らしいヌードも披露され(笑)、リリーさんについていく感じでした。夫婦役が出来て幸せでした。リリーさんの受賞は自分のことのように嬉しく思っています」と答えた。

締めの挨拶でも加瀬さんは「最後までたどたどしくて…最後までお付き合いくださってありがとうございました」と、やっぱりカミながら必死だった。この方は台詞を喋るのでなければ、本当にトークが苦手なのだなあといささか苦笑したくなった。麻生さんは、そんな加瀬さんの様子に時々笑い声をたてながら、愛嬌たっぷりに「本日は…あれ?…受賞者の皆様、本当におめでとうございました」と締めくくった。この後、壇上中央に椅子を並べ、フォトセッションへと移る。授賞式後は『クライマーズ・ハイ』の上映があったのだが、スクリーンが小さそうだし、もう観た作品だったので、ここで会場を後にした。

初めて見たブルーリボン賞授賞式だったが、肩の凝らない温かい場だった。いくら加瀬さんと麻生さんが司会をなさるとはいえ、進行役に誰かつくのかなと思っていたらそれもなく、本当に手作りということが伝わってくる。ただ、パンフレットもなく、招待葉書も受付で渡してしまうから、記念になるようなものがいっさいないのが残念。今回の受賞者たちの勢揃いした様子を見ると、地味だなあという印象。映画担当記者たちの目で選ぶということで、一味違う賞なのだと実感した。

授賞式の様子など。→サンスポ

(2009.2.3 銀座ブロッサムにて)
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2008年04月13日

『剱岳 点の記』スペシャル映像上映会

注目している作品の、昨年4月から10月にかけて行われた第一次ロケの模様をメイキング映像にしたものの上映会が催されるというので、出かけてみた。入場時に、横に広げると剱岳の全貌が見渡せるようになっている四つ折の素敵なプレスをいただく。

通常この手の映像は、マスコミ関係者以外には事前に見せないものだが、今回は新たな試みとして、一般観客に観てもらい、感想をうかがいたいという説明が上映前にあった。正味約13分と短いものであったが、恐るべき迫力がしっかりと伝わってきた。撮影に臨む浅野忠信さんや香川照之さんの言葉や、木村大作監督の「これは撮影ではなく、苦行だ」という言葉も紹介される。

この作品ではいっさいCGも空撮も使わず、人間の目で見たままの山の表情をとらえる方針だそうだが、スタッフもキャストもまず成すべきことは山登りなのだ。ひたすらひたすら登る。彼らの顔はもはや映画人というより、山男たちだ。まだ全体の四分の一ほどしか撮影は済んでいないそうだが、これからも苦難の撮影が続くことは想像に難くない。

木村監督だから、映像は当然もう素晴らしいの一言。あとは脚本次第というところか。原作者の新田次郎が描こうとした人間模様をどう映像化するかに興味が湧く。仕上がりが本当に楽しみだ。名だたる名優たちが出演していることだし、フジテレビが製作に加わっているから、これからの宣伝量も相当なものになるだろう。ともかく、勝負は出来上がった作品なのだから、あまり「過酷な撮影」とか「総製作費○○円」とか、大作であることをことさらに強調する宣伝の仕方はしないでもらいたいものだ。あれだけのスケールの映像を見せられれば、おのずから本質は見えてくるものだから。

(2008.4.13 T・ジョイ大泉にて)

映画公式サイト
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2008年02月14日

毎日映画コンクール表彰式&レセプション

去年に引き続き、今年も春はどうやらツキがあるらしい。毎日映画コンクールの表彰式とレセプションの招待に応募したら、信じられないことだが当たってしまい、本日(13日)連れ合いと行ってきた。いつも、テレビ報道で表彰式のステージの模様を見るだけなので、これほど豪華なイベントとは思わなかった。ともかく俳優さんたちが、ごく間近で見られて、大満足。会場は大きなホールで、ステージのすぐ前には丸テーブルが5つくらい並んでいる。そこは受賞者たちの席だ。私たち当選者は、椅子席の真ん中より後ろあたりだったが、会場は横幅が広く奥行きが狭いので、私たちの席でも十分ステージがよく見えるし、ステージの左右には大きなスクリーンがあり、受賞者たちの顔をアップで映し出してくれるので、どこにいても見えないなどということはない。さりげなく受賞者たちが会場後方から入場してくる。一番のお目当てだった麻生久美子さん、男優主演賞副賞のニッサンSkylineの前でちょっと足をとめ、技術賞の北村道子さんと何やら話しながら、席につく。ウエストから下がバルーン風に膨らんだ可愛い黒のドレス。黒のストッキングにピンクのハイヒールが素敵。

司会の男女が登場し、まず主催者側の挨拶、祝辞などが述べられる。いよいよ賞の授与に移る。最初はスタッフに与えられる賞から。受賞の対象となった映画のシーンがスクリーンに映し出される。『スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ』で技術賞の北村道子さんだ。「美術賞の佐々木さんと一緒に、この作品で受賞できたのが嬉しい」と短く語った。
『しゃべれどもしゃべれども』で録音賞の小松将人さん。「こんな素敵な賞をいただけて、国分さん、松重さんとともに受賞できて本当に嬉しい」と、やはり同じ作品にかかわった人々との同時受賞が何よりもスタッフの方々には嬉しいことなのだなと感じる。
『天然コケッコー』で音楽賞のレイ・ハラカミさん。ご本人は欠席だったが、代理の方が、「レイ・ハラカミさんは映画音楽を手がけるのは初めてだったので苦労され、通常より2〜3倍の時間をかけた」と、その苦労が賞に結びついたことを嬉しく思っていると話した。
『殯の森』で撮影賞の中野英世さん。「テレビドキュメンタリーをずっと撮っているが、初めて撮らせていただいた映画で賞をいただけるとは」と感激の言葉を述べた。
『天然コケッコー』で脚本賞の渡辺あやさん。「原作が何より素晴らしく、原作のままに書いたので、私は何もしていないようなもの。今後は自分で何かしたと実感できるように精進したい」と述べた。
『それでもボクはやってない』で監督賞の周防正行さん。「初めて映画の監督をしたときは、よーいスタート!と毎日声を出すだけで嬉しい、監督をするだけで嬉しいと思ったが、最近は、ただ映画を作るという喜びは少なくなってきて、辛いことが多くなっている。だんだん賞も、その重みに責任を感じて、手放しで喜べなくなっている。この重みをしっかりと受け止めて、これからも作りたい映画をしっかり作って行こうと思う」と述べた。これを訴えなければという作品のテーマがいかに監督の中で重かったか、そのためにどれだけの苦労があったかがしのばれるコメントで、何だかホロリとしてしまった。
ドキュメンタリー映画賞の『バックドロップ クルディスタン』は、野本大監督が出席。「この映画を作って、自分の未熟さがわかった。今後も未熟なりによい作品を作りたい」と述べた。
アニメーション映画賞の『河童のクゥと夏休み』は、原恵一監督が出席。「ひとつだけ自信があるとすれば、作りたいと思ってから完成するまでの長さにかけては負けない自信がある。20年くらいかかってしまったけれども、やっと作ることが出来た」と述べた。
大藤伸郎賞の『カフカ 田舎医者』は、山村浩二監督が出席。「短編を作っている者にとっては、この賞は憧れの賞」と喜びを述べた。
外国映画ベストワン賞の『長江哀歌』は、オフィス北野の森氏が出席。「ジャ・ジャンクー監督を応援して10年くらいになるが感無量」と述べ、「山峡地区を代表して賞を受けている気持ち」という監督からのメッセージを代読した。
TSUTAYA映画ファン賞の日本映画部門『恋空』は、今井夏木監督、外国映画部門『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』は、宣伝プロデューサーの方が出席された。

さて、いよいよキャストの表彰に移る。
スポニチグランプリ新人賞の成海璃子さん。相当緊張の面持ちで、言葉少なに感謝の念を述べた。
同じく、スポニチグランプリ新人賞の松田翔太さん。片側だけ長く伸ばしたヘアスタイルで、すらりとしてカッコいい。『ワルボロ』について、「後悔しないように、台本をボロボロになるくらい読み込んで、とことん不良をやろうと思って臨んだ。賞をいただいたことで、どこか自信を刻めるようになった」と述べた。
女優助演賞の高橋惠子さん。さすがに着物姿が板についていて、立ち居振る舞いの美しいこと。「夢にも思っていなかった素晴らしい賞をいただいた」と、女優になって30年にもなるのに、自分は賞には縁がないと思っていたことを感激とともに述べた。
男優助演賞の松重豊さん。スクリーンで見るコミカルさや、悪役風のたたずまいはなく、素敵な方だと再認識。『しゃべれどもしゃべれども』では、しゃべるのが苦手な野球解説者の役だが、「あれは演技じゃない、というくらい今日は緊張している。45年生きてきて、初めてもらう賞が、こんな素晴らしい賞なんて」と嬉しそうにおっしゃるので、心からの拍手を送った。
女優主演賞の麻生久美子さん。「佐々部組のスタッフから、毎日映画コンクールはスタッフにも賞をくださる暖かい賞なのだと聞いた。この作品での受賞だということが何よりも嬉しい。スタッフ、キャストの支えなしには実現しなかったので、みんなを代表して賞をいただきに参りました」と、やっぱり瞳をうるませて語った。
男優主演賞の国分太一さん。「TOKIOには長瀬という素晴らしい俳優がいるので、受賞の知らせがきたときも、事務所も長瀬じゃないんですか?奇跡だ、と言ったほど。どこかで大きなドッキリをされているんじゃないかと思っている」と、これからも俳優をやっていきたいと述べた。
田中絹代賞の中村玉緒さん。「映画が大好きで大好きでやってきたが、14年前からぷっつり出演の話がなくなった。それが今回『椿三十郎』で役をいただき、夢のようで、それで満足していたのに、こんな賞がいただけて幸せ」と述べた。
特別賞の故・熊井啓監督。夫人が出席され、「プロダクションを作らなかったので、事実上二人でやってきて、亡くなる数日前まで、これはどこへ持っていこうかなどと、映画の話をしていた。どんなにか喜んでいることでしょう」と語った。
同じく特別賞の故・犬塚稔監督。代理の方が「106歳で亡くなるまでシナリオを書き続けていた」と夫人からのメッセージを伝えた。
日本映画優秀賞の『天然コケッコー』は、山下敦弘監督が出席。「こんなすごい表彰式だとは思っていなかったので、頭が真っ白になった。原作が素晴らしいので、なるべくいじらないようにしようと、脚本の渡辺あやさんとも話した。賞は原作にあげるべきと思っている。僕も今後はオリジナル脚本でここに立てるように頑張りたい」と述べた。
そして最後の受賞。日本映画大賞の『それでもボクはやってない』は、アルタミラピクチャーズの方が出席。「いまだに"それでもボクはやっていない"とタイトルを間違えられる」という話が記憶に残っている。

さて、滞りなく表彰式が済み、レセプションとはいったいどんなものかと思っていたら、会場を隣に移して、関係者の挨拶や、受賞者の大部分がふたたび勢ぞろいしての乾杯などで始まり、あとは思い思いに歓談というスタイル。とにかく大勢の業界人で、会場は埋め尽くされている。しばらくビュッフェの食べ物をつまんでいたら、もう帰られたと思った麻生さんが、会場にいらっしゃるではないか。いろいろな人とにこやかに挨拶を交わし、写真撮影にもいやな顔ひとつ見せない。私たちは、写真は禁止されていたが、ありったけの勇気を振り絞って近づいて、サインをお願いしてみた。もしや機会があるかと思って、『ハーフェズ ペルシャの詩』の映画パンフレットを持参していたのだ。この場では、『夕凪の街 桜の国』のパンフのほうを持ってくるべきだったかも知れないが、麻生さんは、パンフを見るなり「あ、ハーフェズ!ご覧になったのですか?」とニコニコ顔になり、快くサインをしてくださった。「とっても良い映画でした」と話しかけると、「ちょっと難しい映画でどうかな…と思っていたんですけれど」とおっしゃる。「1回で気に入って、絶対もう一度観に行きます!」と言うと、とっても嬉しそうにしてくださった。「『たみおのしあわせ』や『ボクたちと駐在さんの700日戦争』も楽しみにしています」と言うと、「たみおはいいですよ」とか「ボク駐は面白いですよ」とか、ちゃんと答えてくださるのだ。一般人の私などにも、実に気さくににこやかに応じてくださり、大感激で、ますますファン度が増してしまった。とにかく、一番お会いしたかった麻生さんに会え、お話もでき、夢のようなひとときだった。最初から最後まで、当選者の面倒を見てくださった映画賞事務局のスタッフの方、ありがとうございました。

(2008.2.13 セルリアンタワー東急ホテルにて)
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2008年02月06日

キネ旬ベスト・テン第1位映画鑑賞会と表彰式

昨日、第81回キネマ旬報ベスト・テンの映画鑑賞会と表彰式に行ってきた。映画は3作品が上映され、3つとも観るのは少々負担だったので、文化映画第1位の『ひめゆり』と、日本映画第1位の『それでもボクはやってない』の2本だけを観た。どちらも公開時に観た作品なので、これが2度目の鑑賞だ。

『ひめゆり』は、初めて観たときには、、座っているのに、ただただ呆然とスクリーンの前に立ち尽くすといった気分だったのだが、今回は冷静に観られるかと思っていたら、かえって女学生たち一人ひとりの思いがよりいっそう胸に迫り、とめどなく涙がこぼれ、あやうく号泣しそうになった。これが事実なのだと思い知らされることは、何と重く、何と悲しく、何と彼女たち(犠牲になった方々、生き残った方々ともに)が愛おしく思えることか。

『それでもボクはやってない』は、最初に観てからほぼ1年が経っているのだが、変わらず新鮮で精緻で、素晴らしい作品だとあらためて思う。今回印象に残ったのは、冷徹な裁判官役の小日向文世さんと、穏やかで冷静な人柄でありながら芯の通った弁護士役の役所広司さんだ。主演男優賞を総ナメにする勢いの加瀬亮さんについては、確かにうまいし、役柄そのものなのだが、持ち味に合致しすぎる役柄に思え、とりわけ新鮮さが感じられなかった。つまり、例えば『スクラップ・ヘブン』や、『めがね』での加瀬さんとのギャップがないと私には思えるのだ。

さて、楽しみにしていた表彰式。日本人の個人賞受賞者で欠席者がひとりもいないという豪華メンバーがステージ上に揃った。司会はここ数年通り、笠井信介アナ。去年と同じジョークを発するので少々がっくり。1年前の記憶はそんなに薄れていないものですよ!と言いたくなる。同行の友人とも感慨を述べ合ったのだが、とにかく主演女優賞の竹内結子さんの美しさは特筆ものだ。テレビや映画で見慣れているものの、実際の竹内さんは、その何倍も美しい。受賞者のコメントは、時間の制約もあって、それぞれ短いものだったが、印象に残ったことをつづっておこう。

◇日本映画作品賞『それでもボクはやってない』
アルタミラピクチャーズの桝井省志プロデューサーが出席。歴史ある作品賞を受賞して大変光栄であると述べ、この作品は、周防監督との企画段階から、果たしてメジャー公開していいんだろうかと不安な状態でスタートしたと述懐。それが各方面の協力を得て、全国公開され、評価に結びついたことに感慨もひとしおという面持ちだった。

◇外国映画作品賞『長江哀歌』
配給会社ビターズエンドの定井勇二氏が出席。ジャ・ジャンクー監督の5本目にして、このような賞をいただき、とくに観客の方々、キネ旬の読者の方々に感謝していると述べる。発売になったばかりの「キネマ旬報」2月下旬号にも掲載されているジャ・ジャンクー監督のコメントも読み上げた。

◇文化映画作品賞『ひめゆり』
対象はプロダクション・エイシアだが、柴田昌平監督が出席。出席者の中で、僕だけが危うく欠席かも知れないところだったと説明。テレビ番組の制作でモスクワにいらしていたそうな。いつ欠航するかわからないアエロフロート機でやっと帰国なさったという。他の作品に比べればまだまだ微々たる数の観客動員数だが、これから何十年も上映し続けて行きたいと語った。

◇日本映画監督賞/脚本賞/読者選出日本映画監督賞 周防正行
トリプル受賞とあって、開口一番「どうしよう…という感じ」と苦笑い。面白い映画とかいいものを作ろうという気がまったくなくて始めた作品。このまま黙っていてはいけないという思いで作りたくて作った。テーマからして「社会派」といわれることは仕方ないだろうと覚悟していたが、この「社会派」という言葉の持つ敷居の高さを超えるものにしたいと思っていたところ、途中から「エンターテインメント」だといわれるようになった(笑)これからどうなるかはわからないが、一生映画監督をやっていくだろうとは思う、と述べた。『それボク』が『Shall we danse?』から10年ぶりということもあって、笠井アナが、次回作は10年後ということはありませんよね?と水を向けると、「わかりません」と答えていた。

◇外国映画監督賞 ジャ・ジャンクー
オフィス北野の内山(?)プロデューサーが出席。キネ旬の結果は中国でもかなり大々的に報道されるらしく、ジャ・ジャンクー監督も大変喜んでいたと述べる。

◇主演女優賞 竹内結子
白いドレスがひときわ輝いて美しいが、気負わずサバサバした調子で感想を述べる。今朝のテレビ報道でも竹内さんはしばしば映ったが、5kgの重さのトロフィーによろめきそうになりながら、喜びに重みがあるとすれば、この5kgのトロフィーは格別です、と述べた。

◇主演男優賞 加瀬亮
丈の短いパンツにカットソーのような素材のジャケットで、着くずしたようなお洒落なスタイル。今回の作品は、スタッフなど周りに支えられて賞に結びついたと思うので、今後は自分の力できちんとこういう場に立てるように頑張りたいと、地に足のついたコメントだった。

◇助演女優賞 永作博美
竹内さんと対照的に、黒のウエストを絞ったドレスで、大人っぽい雰囲気。対象作品の『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』は、安定感のない役だったので、賞をいただくのが不思議な気がしている。今後は、見てくださった方が楽しんで下さるような役をやっていきたい、と述べた。

◇助演男優賞 三浦友和
いつもと変わらないオーソドックスなスーツ姿だが、紺色の縁のメガネがお洒落。風邪をひかれているそうで、少し鼻声。対象作は『転々』、『松ヶ根乱射事件』、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』だが、去年は6作が公開されたので、6本の合わせ技で賞をいただけたと思っている。心から感謝している。これからも俳優として精進して行きたい、と述べた。

◇新人女優賞 蓮佛美沙子
登場のときから紅潮し、非常に緊張している様子がうかがえる。それでも、まさか受賞できるとは思っていなかったので、ここに立って重いトロフィーを持って、やっと現実なのだと実感していると述べ、スタッフや観客に対する感謝の念をしっかりと伝えていた。

◇新人男優賞 林遣都
若者らしく、鎖のアクセサリーなどをあしらったお洒落をしている。選ばれたと聞いたとき、まったく実感が湧かず、キネ旬がどんなにすごい賞かも知らなかった。『バッテリー』で、多くの大切な出会いがあり、その方たちが支えてくれたおかげ、と述べた。

◇読者選出外国映画監督賞 フロリアン・フォン・ドナースマルク
出席者のお名前を失念してしまったが、配給会社のアルバトロス・フィルムの方。監督に伝えたら非常に喜んでいた。監督からのコメントを紹介しようと思ったが、非常に長いので、発売中のキネ旬に載っていますので、買って読んでいただければ、と笑わせてくれる。『善き人のためのソナタ』は地味な映画なのにヒットした。何より読者に支持されたことが嬉しく、配給できて本当によかった、と述べた。

◇キネマ旬報読者賞 川本三郎
テレビにもほとんど出ない評論家を選んでいただいてありがとうございます。だいたい雑誌に連載しても、やがてクレームがついて、半年くらいで連載中止になることが多いのだが、キネ旬はずっと連載をやらせてくださり、好きなことを書いて賞までもらえて、レベルの高い読者がいるということが嬉しくもあり、怖くもある、と述べた。

平日開催にもかかわらず、午前中の『ひめゆり』上映からかなりの観客数。私もたまたま時間がとれて参加できたが、ああやっぱり映画が本当に好きな人たちが集まっているのだなと思う。ただ、せっかくの表彰式なのだから、もうちょっとそれぞれのコメントの時間をたくさんとってくれればと毎年思う。でも楽しい1日だった。

(2008.2.5 有楽町朝日ホールにて)

posted by すいっち at 11:24| Comment(0) | TrackBack(0) | イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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